2021/07/25 ニュース

スズキとダイハツが加わった商用車5社協業。いったい何が目的?

2021年7月21日に、スズキとダイハツは、軽商用事業でのCASE(Connected=つながる/Autonomous=自動運転/Shared&services=シェアリング/Electric=電気、といった自動車産業の新潮流のこと)普及に向けて、従来トヨタ、日野、いすゞで構成していた商用事業プロジェクト「Commercial Japan Partnership(以下CJP)」に参画することを発表した。CJPの資本金は1000万円で、資本構成はトヨタ60%、いすゞ10%、日野10%、スズキ10%、ダイハツ10%である。

CJPは、日野といすゞの商用事業基盤に、トヨタのCASEを組み合わせることで、CASEの普及に向けたスピードを加速し、輸送業が抱える課題の解決やカーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目標として、2021年4月にトヨタ、日野、いすゞの3社で設立した。これにスズキとダイハツが合流することで、協業体制を軽自動車まで拡大したのがポイントである。

軽自動車は1949年に誕生したカテゴリーで、独自のボディサイズによる取りまわしのよさなどから、物流のラストワンマイル(顧客にもっとも近い物流拠点から顧客までの物流における最後の行程)を担う重要な存在である。今回の軽商用車を生産する2社(スズキ、ダイハツ)の参画は、トヨタの豊田章男社長によるラブコールがあったというが、以下のようなエピソードがあった。

「CJPの活動を世に出したときに、一番多かった問い合わせというのが、今回、日野、いすゞ、トヨタの3社でやっていたにもかかわらず、軽自動車は枠組みに入っているのかという内容でした。遅ればせながら、私たちも運送各社さんのクルマの使い方を勉強させていただくと、大きなトラックだけではなくて、最終的には軽自動車を非常に有効活用されて、お客様のもとにタイムリーに商品をお届けしているという実態も、あらためて勉強することができました」(Commercial Japan Partnership Technologies株式会社 中嶋裕樹社長)

中嶋社長はスズキとダイハツの2社が加わったメリットについて、以下のように話した。
「軽自動車について、特にお客様の使い方ということに関しましては、トヨタである私たちは接点が少ない状況です。(大中型トラックの)日野さん、いすゞさんのときもそうでした。お客様の接点が多い、この2社に助けられて、私たち技術者がなかに入り込んで、いろいろなお客様の困りごとを肌で感じ、さらにはトヨタ生産方式を使いながら、実際に改善という作業をさせていただくという貴重な経験をさせていただきました。そのなかから、具体的にいろいろなシステムが生まれ、お客様の物流に対して貢献できるのではないかというようなところが見えてきたというのが実態です。
軽自動車をお使いの事業主様というのは個人でやられたり、中小の方が多いとのことで、私たちは接点はございませんが、スズキさん、ダイハツさんの販売店の皆様方は、個別にお客様と接点を深くお持ちだと認識しております。そういうお声を両社の営業の方からお聞きしながら、今あるCASEの技術がどう組み合わせることができるか、もしくはさらに軽自動車に特化させて発展・成長させるものはないかなど、以上のようなコミュニケーションがとれるというのが最大のメリットだと感じております」

具体的なCJPの取り組みについて同氏は、「日野さん、いすゞさんとCJPを立ち上げたときに、福島での水素活用プロジェクトを立ち上げました。これは地場の産業の皆様と、大手のコンビニエンスストア様、さらにはスーパーマーケットの皆様と手を組み合って、福島で作られたクリーンな水素を活用して配送等に使っていくというもので、今まさに開発を進めている最中です。
今回、特にラストワンマイルを担う軽の皆様方と一緒に仕事ができるということで、新たなプロジェクトの例としましては、東京のように地方からモノが集まって来る東京のような大都市を想定しております。これは大きなトラックを利用した幹線物流でしょうし、それぞれの倉庫まで小型トラックを活用したり、さらにはお客様の手元には軽商用車でお届けする。大動脈から毛細血管までをなぐ物流において、コネクティッド技術を活用しながら実際にやってみてはどうかと検討しています。当然、このジャストインタイムの流通が可能になれば、多くの倉庫の在り方も変わってくると思います」と話す。

さらに、CASEの新技術の普及という面に関しても、スズキとダイハツの2社は期待されている。「スズキさん、ダイハツさんは軽という限られたスペースのなかで、いかにいいクルマを作るか、お客様のニーズに応えるかという良品廉価なものづくりに長けていらっしゃいます。私たちもいろいろな新しい技術を提案はしておりますが、やはりこれを安価にしないとなかなか物流の現場ではお使いいただけないと思います。トラックは保有年数が非常に長いということを考えますと、新車だけではなく、既存のトラックにもいかに廉価で使いやすいもの(コネクティッド、先進安全装備)をご提供できるかというのは新たな使命だと認識しております」(中嶋社長)

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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