2021/07/22 コラム

睡眠不足で根負けしてあわや撮影失敗⁉「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第18回〜オオコノハズク」

ドライバー2020年3月号(2020年1月20日発売号)からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国をSUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第18回は、第8回のアカショウビンの撮影でも訪れた鳥取県のキャンプ場で追いかけた『オオコノハズク』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。
 
ニッポン探訪_Vol.18


 
姿を見かけるのは宝くじに当たるのと同じようなもの!?
 
長い人生 (おおげさかな)、夜の山道をドライブしていれば、なんかの拍子にフクロウが飛んでいく姿を見ることがあるかもしれない。
しかしこのスゴく小さなフクロウ、オオコノハズクを見ることはまずないだろう。とにかく小さくて生息数も少ないから、遭遇するのは宝くじに当たるようなものだ。
 
ニッポン探訪_Vol.18
 
だが、ここ鳥取県のキャンプ場、八東ふるさとの森ではいくつもの番(つがい)が巣箱で子育てをしている。
親鳥でも背丈は20cmぐらいの小ささ。そして、瞳が人間でいう白目の部分がオレンジ色なのが印象的である。見た目はかわいらしいが、れっきとした猛禽(もうきん)類なので、親鳥は次から次へとネズミやカエルなどを捕まえて巣箱に運んでくる。
 
ニッポン探訪_Vol.18
 
夜の森を自由に飛べるだけに、かなり優れたハンターなのだろう。
その巣箱ではモフモフの羽毛にくるまれた雛(ひな)がときおり顔を出す。オイラは雛が巣箱から飛び出す巣立ちの瞬間を、今か今かと夜通しカメラを構えて待っている。
 
しかし、雛にしてみれば外の世界は未知の領域。そう簡単に警戒心を克服して飛び出してはくれない。「出そうだ!」と期待させておいて、巣から出てはくれないのだ。
 
親鳥もだんだんエサをすぐには渡さずに、目の前でじらし、雛を巣箱の外に誘導しようとするが、なかなか言うことを聞いてはくれない。巣箱から出てもすぐにまた戻ってしまうのだ。
ここ数夜でこんなシーンを何度見たことか。
 
昼間はアカショウビンの撮影、夜間はこのオオコノハズクに振り回されて、ここ何日かほとんど寝ていない。だから巣箱の前でウツラウツラしてくる。以前、観察していたときには居眠りをした隙に巣立たれ、悔しい思いをした。
 
そして今回も、こちらが根負けして眠りについたのを見計らったかのように巣立った。
ほとんど飛べない雛だから、巣のまわりを探せば見つかりそうなものだが、このグレーのモフモフが保護色となるうえ、本能的に身の隠し方が絶妙のようでほとんど見つけられないのだ。
そして突然、現れる!
 
ニッポン探訪_Vol.18
 
翌朝、出発の準備をしていると、木の上のほうにいるという情報が。駆けつけると、飛べない雛がどうすればあんなところまで行けるのかというほど高い木の梢で半分居眠りをしていた。
 
もしかすると、見つけられない理由のひとつには、人間の思い込みもあるのかもしれない。飛べない雛が高いところに行くとは思わないので、地面から数mの範囲しかよく見ていなかったのだ。
 
原生林の緑のカーテンをバックに、雛の姿をついに撮影できた。
柔らかな朝の光のなかで見るモフモフは本当にかわいらしい!
 



「撮影裏話&テクニック」
 
ニッポン探訪_Vol.18
 
2本のレンズを使い分けてとっさの事態に対応
 
ボディはSONY α9で、夜間は照明だけで闇に浮かび上がるオオコノハズクを撮影するために少しでも明るい望遠レンズということでFE600mm F4 GM OSSを組み合わせた。すばらしい性能でこのクラスのレンズとしては非常に軽いが、さすがに坂が多いキャンプ場のなかでとっさのときに三脚付きを持って走るのにはつらい。機動性が必要なときはFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSと使い分けをした。
 
[撮影データ]
機材:SONY α9
レンズ:FE 600mm F4 GM OSS/FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
 



若桜(わかさ)という町
 
ニッポン探訪_Vol.18
 
かつて林業で栄えたという鳥取県八頭郡若桜町。蔵通りというエリアにまだ古い街並みが残っている。昭和レトロな趣のある景観だが、それに加えて若桜鉄道の若桜駅にはC12蒸気機関車や転車台と、これまた昔懐かしい風景がそのまま残っている。
 
ニッポン探訪_Vol.18
 
また、動態保存の蒸気機関車を使った体験運転なども開催されている。
 



野鳥撮影にピッタリのキャンプ場
 
ニッポン探訪_Vol.18
 
ブナの原生林のなか、レアな鳥をすばらしいシチュエーションで観察できるキャンプ場。
 
ニッポン探訪_Vol.18
 
毎年6~7月はアカショウビン、7月はオオコノハズク、7~8月はコノハズクが観察しやすい。
夜間はライトアップされるので夜行性の鳥たちの様子を間近に見ることができる。撮影場所には雨天用のテントが張られ、イスまで用意されていて至れり尽くせりである。今年、施設の一部がリニューアルされてより便利になった。
 
八東ふる里の森
住所:鳥取県八頭郡八頭町妻鹿野1572
TEL:0858-84-3799(管理事務所)
https://www.hattofurusato.com
営業期間:4月下旬~11月末
営業(開園)時間:8:30〜17:00
定休日:開園期間中はなし
施設利用料:バンガロー(宿泊1棟/4500円~)、キャンプ場(テントサイト/1000円、テント1張/500円)、バーベキューハウス(1基2時間/1000円)
 
 


「今回のSUV……日産 キックス」
長距離運転もラクで撮影場所にも入っていきやすいコンパクトSUV
 
ニッポン探訪_Vol.18

ニッポン探訪_Vol.18

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1.5Lエンジンで発電した電気でモーター走行するハイブリッドのSUV。ガソリン給油で充電の手間がないのがうれしい。サイズ的にもコンパクトなSUVなので場所を選ばず野山に入っていける。
 
走行中はわずかにエンジン音が聞こえてくる。パワーオンすると発電量を増やすのでエンジン回転も上昇するから、なおさら慣れ親しんだエンジン車のような感覚だ。
 
パワーオンしたときのトルクやレスポンスは、ガソリン車でいえば2.5Lくらいの力強さ。パワーバンドに乗ったような強いトルクが感じられ、キビキビと走る。
 
ニッポン探訪_Vol.18

全車速追従クルーズコントロールやレーンキープ機能付きステアリング支援を装備した日産の「プロパイロット」は、長距離運転での疲労度を大きく軽減してくれた。
 
個人的には、ドライバーズシートの背もたれや腰のあたりがしっくりこなかったので、もうひと工夫してほしいところだ。
 
ニッポン探訪_Vol.18

ニッポン探訪_Vol.18

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■主要諸元
日産 キックス X
(CVT/FF)
全長×全幅×全高:4290mm×1760mm×1610mm
ホイールベース:2620mm
最低地上高:170mm
車両重量:1350kg
発電用エンジン種類:直3DOHC
総排気量:1198cc
エンジン最高出力:60kW(82ps)/6000rpm
エンジン最大トルク:103Nm(10.5kgm)/3600〜5200rpm
モーター種類:交流同期電動機
モーター最高出力:95kW(129ps)/4000〜8992rpm
モーター最大トルク:260Nm(26.5kgm)/500〜3008rpm
燃料/タンク容量:レギュラー/41L
WLTCモード燃費:21.6km/L
タイヤサイズ:205/55R17
価格:275万9900円

 

〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている
YouTube「Maddogチャンネル」

ドライバーWeb編集部

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