2021/07/19 コラム

池袋暴走事故、なぜ求刑は「懲役」ではなく「禁錮」だったのか?

●自動車(原付バイクも含む。自転車は除く)の交通事故は、刑の種類は禁錮刑で決まりだ。事故の態様が悪質だとか、不合理な弁解に終始しているとか、そんなことを理由に懲役刑が選択されることはない


踏み間違いはけっして珍しいものではない



あと、長年にわたり『ドライバー』本誌などで言い続けてきたことを、ここでも言っておきたい。運転席の足もとの暗がりに、ブレーキとアクセルという正反対のペダルを2つ並べ、目視も指さし確認もせずにひんぱんに正しく踏み換えさせようとする、それ自体に無理があると私は思う。人間に「ついうっかり」はつきもの。かならず踏み間違いが起こる。

すぐに気づけばいい。だが、若者に比べて高齢者は、気づくのに遅れ、正しく踏み換えるのに時間がかかりやすい。私の手元に「自動車運転者(第1当事者)における年齢層別人的要因のブレーキとアクセルの踏み間違い交通事故件数の推移」という長いタイトルの一覧表がある。


●「自動車運転者(第1当事者)における年齢層別人的要因のブレーキとアクセルの踏み間違い交通事故件数の推移」。情報公開制度により開示を受けた

近年の踏み間違い事故は、ご覧の通り16~24歳と65歳以上に多い。そして、たとえば2017年の踏み間違い死亡事故50件を見ると、16~24歳は0件、41件が65歳以上に集中している。踏み間違いに気づかずアクセルをべた踏みし続け、被害が重大になりやすいのだ。

どうすればいいのか。アクセルをベタ踏みしたときだけ、アクセルが効かなくなればいい、誰だってそう思うでしょ。当然に、そのような後付けの装置、踏み間違い事故防止装置がいろいろつくられ、だいたい数万円程度で販売されている。

私が総理大臣、国交省大臣なら、防止装置の信頼性をチェックしたうえでその装着を義務づける、補助金をつける。防止装置を装着しない車両については自賠責保険、任意保険の掛け金を大幅に引き上げる。だが現実には…。

そうして同種の事故が起こり続ける。今回、可愛い盛りのお子さんと、その笑顔のお母さんの命が、一瞬で無残に奪われた。私は本当に悔しくて悔しくてたまらない! 懲役か禁錮か、というところから、つい話を広げすぎてしまった。申し訳ない。

※ 刑事裁判は【検察官vs被告人】、民事裁判は【原告vs被告】だが、メディアは刑事裁判の被告人をあえて「被告」と呼び変える。オービスの可搬式をわざわざ「移動式」と呼び変えるのに似ている。

〈文=今井亮一〉                             
交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を発行。

ドライバーWeb編集部

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