2021/07/19 コラム

池袋暴走事故、なぜ求刑は「懲役」ではなく「禁錮」だったのか?

●自動車(原付バイクも含む。自転車は除く)の交通事故は、刑の種類は禁錮刑で決まりだ。事故の態様が悪質だとか、不合理な弁解に終始しているとか、そんなことを理由に懲役刑が選択されることはない


事故が悪質だとかは関係ない



自動車(原付バイクも含む。自転車は除く)の交通事故は、刑の種類は禁錮刑で決まりだ。事故の態様が悪質だとか、不合理な弁解に終始しているとか、そんなことを理由に懲役刑が選択されることはない。

一方、交通事故だけでなく飲酒運転や救護義務違反(道路交通法違反)もいっしょに起訴されると、刑の種類は懲役刑で決まりだ。被害の程度が小さいとか、反省が顕著だとか、そんなことを理由に禁錮刑が選択されることはない。

したがって、「過失運転致死傷」だけで起訴された飯塚幸三被告人の場合、求刑は禁錮刑で決まりなのである。

判決はどうなるか。無理ムリな弁解は、まったく通らないだろう。弁護人だって、通らないと承知だろう。通らないとして、判決は実刑(=執行猶予なし)か執行猶予付きか。執行猶予もあり得るが、被害の大きさからして、実刑の可能性のほうが高いかと私は推測する。

実刑だとして、禁錮何年か。初めての実刑なら、判決は求刑よりだいぶ下げるのが普通だ。飯塚被告人にとってショックが大きいのは禁錮3年だろう。執行猶予は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」に対してつけることができる(刑法第25条)。求刑が禁錮7年で執行猶予をつける場合、主刑を禁錮3年まで落とすことになる。

裁判官「主文。被告人を禁錮3年に処する…」

と裁判官が言えば、被告人は「おおっ、3年まで下げたってことは執行猶予か!」と、ものすごく期待するだろう。パァッと明るい気持ちになるだろう。ところが、

裁判官「…主文は以上です」

と続けば、ショックは大きいはず。最初から「実刑もあり」と覚悟しての実刑と、「執行猶予か!」と期待に胸をふくらませてからの実刑は、だいぶ違うはず、そういうことだ。

私は1度も傍聴してないけども、飯塚被告人がブレーキとアクセルの踏み間違いをあくまで認めず、自分は悪くない、クルマが勝手に暴走したと主張し続けているらしいことについて、私はこんなふうに受け止めている、すなわち、「行政無謬」「国家無答責」は日本の官僚の背骨、飯塚被告人は根っからの官僚なのかなぁ、と。長いセンテンスで申し訳ない。

ドライバーWeb編集部

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