2021/07/19 コラム

池袋暴走事故、なぜ求刑は「懲役」ではなく「禁錮」だったのか?

●自動車(原付バイクも含む。自転車は除く)の交通事故は、刑の種類は禁錮刑で決まりだ。事故の態様が悪質だとか、不合理な弁解に終始しているとか、そんなことを理由に懲役刑が選択されることはない

懲役よりも禁錮のほうがワンランク軽い



「池袋暴走、90歳の飯塚幸三被告に禁錮7年求刑…検察側」と7月15日、読売新聞が報じた(https://www.yomiuri.co.jp/national/20210715-OYT1T50222/)。記事の本文はこうだ。

◇◇◇引用始まり◇◇◇
 東京・池袋で2019年4月、乗用車が暴走して母子2人が死亡、通行人ら9人が重軽傷を負った事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)で在宅起訴された旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三被告(90)の公判が15日、東京地裁であり、検察側は禁錮7年を求刑した。弁護側は無罪を求めて結審し、下津健司裁判長は判決を9月2日に指定した。
◇◇◇引用終わり◇◇◇

「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の第5条により、「過失運転致死傷」の法定刑は「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」とされている。飯塚幸三被告人(※)に対する求刑はなぜ「懲役」じゃなく「禁錮」なのか、ということが話題になっているようだ。私が知るところを少し述べたい。

刑法第9条が「刑の種類」としてこう定めている。「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする」。重いほうから順に並んでおり、懲役より禁錮のほうがワンランク軽い。懲役刑は刑務作業が義務づけられる。禁錮刑にその義務はない。しかし退屈に耐えられず希望して刑務作業に就く者が少なくないそうだ。

こういう裁判の傍聴が、なんというか私は得意なのだが、この事件は1度も傍聴していない。理由を語ると長くなるので省く。とにかくね、メディア報道を見る限りでは、飯塚被告人は「ブレーキとアクセルを踏み間違えた記憶はない=車両が勝手に暴走した」と、どうやら無理ムリな弁解にしがみついているようだ。そんな悪質な被告人が、なぜ懲役刑ではなく、刑の種類としてワンランク軽い禁錮刑なのか。

私は、1件を傍聴するたびに事件番号や被告人の年齢、犯行場所、犯行日、求刑や判決等々、数十の要素をエクセルの表に入力している。現在、9200事件ほどになる。巨大な表だ。そのうち交通事故および交通事故がらみの事件は800事件を超える。一部に罰金刑もあるが、それを除くと、懲役刑と禁錮刑の違いについて、はっきりくっきり見えることがある。

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING