2021/07/06 コラム

日産オーラはなぜ生まれたのか? ニューモデルラッシュは危機感の表れ

日産ノート オーラ

2021年6月15日にデビューしたプレミアムコンパクトカー、日産「ノートオーラ」。日産自動車 商品企画部 チーフ・プロダクト・スペシャリスト 藤沢直樹氏に新型車の商品企画にまつわるお話を伺った。

■オーラを企画したきっかけ

オーラという名前は商品よりも後で決まりましたが、開発の初期段階から、このクルマのコンセプトは、ノートシリーズに組み込まれていました。企画した一番のポイントは、当時のノートで、市場として取りきれていない領域があるということに気が付いたのです。サイズの大きなクルマから下りてくるダウンサイザーの方々が、ノートくらいのサイズのクルマに不満を抱えていました。ダウンサイズしたいのに、なぜガマンをしなければいけないのかと。こうしたニーズがけっこう多くあって、そういう方がともすると輸入車に流れていたりしていました。そういう点を含めて、いろいろもったいないことをしているなと。そこで私たちが技術を結集すれば、お客様のニーズを満たせるのではないかと思いました。そこで、この企画が始まったという感じですね。

■従来のティーダ、ノートメダリストではダウンサイザー層を取り込めていなかった?

そうですね。もちろんティーダのお客様は大事ですが、そのお客様も含めて、満足していただけていなかった反省はあります。そういう意味ではノートメダリストがあったのですが、あくまでもノートの上級グレードにとどまっていたので、今私たちがオーラで考えているお客様のニーズは満たし切れていなかったのです。そこで、ノートメダリストから一段上を目指し、そのニーズをしっかり満たせるところまで磨き上げるために、ノートオーラありきで最初から開発に入りました。

ノートとの作り分けも含めて、どのレベルの目標性能を与えれば、意図するクルマとして成り立つのかを検討するのですが、ベースモデルからの派生車だとなかなかそういう考え方が難しい。ノートとノートオーラを最初から企画のなかで、どうやって作り分けるか、それぞれのターゲットに合わせてどこに目標を置くかということを考えながら、それらを企画してきました。それが差別化のレベルとか、数字にすべて反映しているという感じです。

■新型車の企画はどうやって決まるのですか?

商品企画のほうでターゲットを与え、クルマの作り方の前提条件を決めていくのですが、社内ではこういうふうに新型車を作りたいというのを商品企画としてプレゼンして、それを通していくというプロセスです。もちろん、商品企画は提案者ではありますが、開発側やデザインチームにも最初から一緒に入ってもらっていて、彼らのやりたいこと、それからお客様が求めていること、このあたりのバランスを取っていくのが、最初のころの難しいところです。こういうふうに作りましょうといった構想、(今回でいうとノートに対する)変更規模はデザイナーがスケッチを描き始める前ぐらいにほぼ決まるのです。

その後でこれはやっぱり変えないとダメじゃないかとか、そういう話はいろいろ出てくるのですが、おおむね大きなコンセプト、例えば今回の1735㎜の全幅などは企画の最初の段階で決まっています。

■ノートオーラは国内専用車ですか?

今のところは国内専用車です。けっこう難しいのは台数規模です。クルマは投資が大きい商品ですので、やはり他の国に販路を広げることで台数を積み上げて投資を分散させます。どんなクルマでも通常は考えることなのですが、このクルマの場合はそれができなかったので、相当苦労しました。

そういう意味でも、ノートとオーラをまったく違うクルマとして、それぞれゼロから開発するというのは難しくて、ある程度の親和性を持たせながら作りました。その中でここは効率よく、だけどここは魂だから譲れないと、論議をさまざま行いました。上級・上質を確保しつつも、青天井ではないので、そこはお客様が手の届く範囲に(販売価格を)抑えなければいけないので。バランス取りは頭を悩ませたポイントですね。

■プロパイロット、BOSEパーソナルプラスサウンドシステムなどのセットオプション(40万1500円)は、なぜ個別に選択できないのですか?

今回、オーラに関しては、上質というキーワードでまとめたかったというところもあって、(オプション設定を)シンプルにしたいという思いがありました。BOSEパーソナルサウンドシステムをぜひお客様に体感していただきたいというのと、ナビゲーションシステムとそれと連動したプロパイロットはセットで価値を発揮するため、やはり全部付けたほうがベストパッケージになるという思いがありました。今後、お客様の反応やフィードバックをいただきながら、モデルライフのなかでフレキシブルにやっていきたいと考えております。

■商品企画を担当して苦労した点は?

企画上で一番難しかったのは、やはりその入り口のところで、どこまでやれば上級のクルマとして認識していただけるのかという、その“さじ加減”を見つけるところですね。

例えば、静粛性というキーワード1つをとってみても、どのレベルまで静粛性を高めれば、お客様のニーズレベルを満足できるか、というところを見極める、その論議を1つ1つ全領域について行うので時間がかかって大変でした。加速性能はそれ1つだけがピンと飛び出ていても、それはそれで面白いクルマかもしれない。ですが、特にこのクルマの場合はクルマ全体でオーラを発しないといけないし、上質だと感じていただかなくてはいけない。そういう役割を与えられているので、どこか1つだけピンと立っていてもダメなのです。

その全体のバランス感、そのなかで特にどこを際立たせるかという論議をしていくのが難しい。ただ、ある意味では、一番面白いです。どういうクルマにしたいのか、決められるのがクルマ作りの醍醐味ですから。

■今まで日産はニューモデルが出ていない時期がありました。環境の変化が?

環境の変化というよりは、みんなで危機感を持っているというのはあります。当時からもいわれていたことですし、やはり日産としては日本市場はホームマーケットですので、きちんと守っていかなければいけないという論議はつねにあります。そのなかでも、(今回のノートオーラは)社内のなかでプライオリティを高めてもらったという経緯はあります。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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