2021/06/05 モータースポーツ

下りではFF最速マシン!?「公道最速のヴィッツ乗り」が語る、GRヤリスRSの魅力


■絶対王者が語る、RSの走り

トヨタがWRC参戦によって得られたノウハウを惜しみなく投入し、ラリー等のモータースポーツへの出場を念頭に置いて開発され、2020年秋に発売されたGRヤリス。モータースポーツ界隈では2021年シーズンが開幕すると、S耐をはじめさまざまなジャンルの競技でGRヤリスはデビューを果たしている。ラリーでも例には漏れず、JRC(全日本ラリー選手権)の初戦からエントリーされている人気車種だ。

【画像ギャラリー】四駆モデルと外見上は判別つかない!? GRヤリス RSのラリーカー&市販車

5月21日~22日に行われたJRC第5戦 ラリー丹後 2021では5台ものエントリーがあった。そのうち4台はトップカテゴリーJN-1クラスに出場する4WDターボモデルだが、1台は通常のヤリスと同じ1500ccのNAエンジンにCVTを組み合わせたFFの「RS」というグレードだ。1500cc以下の車両で競われるJN-5クラスに、このRSでエントリーしたのは天野智之・井上裕紀子 組。2008年よりヴィッツで参戦し、13年間で10度ものシリーズチャンピオンをヴィッツにもたらした2人である。

GRヤリスRS
●ドライバーの天野智之選手(右)とコ・ドライバーの井上裕紀子選手(左)

実直な本人はそういう表現を嫌うかもしれないが、天野選手は名実ともに「公道最速のヴィッツ乗り」だ。2代目となるNCP91型からヤリスに名称変更があるまで、GRMNなどを含むさまざまなヴィッツでJRCを走り続けてきた、このクルマのスペシャリストの1人である。

GRヤリスRS
●天野智之選手は、ターマック、グラベル問わず数多くのラリーでヴィッツに勝利をもたらしてきた、ヴィッツのスペシャリストだ


■重さに勝る特徴とは?

RSはイメージ的には、強心臓でWRCイメージの強い4WDターボモデルに隠れがち。今回は、そんなRSの走りについて天野選手に伺ってみた。

「まずは、このクルマに興味を持っている人のなかで、4WDモデル同様アクセルひと踏みでドカンと加速するイメージを持っている人がいれば、それはちょっと期待はずれになると思います。なにしろ通常のヤリスと同じエンジンパワーでありながら、車重は140kg近く重いんですから。通常のヤリスを4名フル乗車で走らせているようなものです」。

確かにエンジンパワーは両者ともに88kW(120馬力)と同一ながら、車両重量が1トンを切るヤリスに対し、GRヤリスRSは1130kgとその差はあまりに大きい(すべてカタログ値)。

にも関わらず、今回のラリーで天野選手は、デビュー戦ながらLEG2すべてのSSでトップタイムをマークするなど見事な走りを見せ、JN-5クラス2位でラリーを終えている。総合タイムではトップとの差が7.4秒。1名乗車vs4名乗車に近い戦いでこの成績は驚きだ。

「先ほども触れましたけど、RSはこのJN-5のライバルに比べ重いので1.5LのNAだと非力なところは否めません。今回初めてラリー本番を走ってみたのですが、その重量という足かせは想定以上に大きいものでした。そのような状況でもライバル達とタイムが拮抗しているのは、とにかく旋回速度が速く、限界を超えたところの挙動もマイルドだからです」

と、天野選手はコーナリング性能の高さをRSの特徴のひとつとしてあげている。ノーマルヤリスよりも広いトレッド、そしてリヤにダブルウイッシュボーンを採用している足まわりによって「あそこのコーナー、ケツが出て怖かったよね」なんてライバルたちが口にするコーナーでもグリップが破綻する気配すら見せず、全然怖さを感じなかったそうだ。


ドライバーWeb編集部・青山

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