2021/06/05 モータースポーツ

下りではFF最速マシン!?「公道最速のヴィッツ乗り」が語る、GRヤリスRSの魅力




■CVTであることも強み

天野選手は「走りが好きな人のなかには、高速コーナーリング時の不安定な挙動を制することに楽しさを感じる人もいると思います。でも多少無理しても破綻しないクルマで、気軽に高い旋回速度を楽しめるというのも大事なことだと思います。このRSなら、エンジンパワーがないのですからさらに安全ですし。必ずしも運転の上級者ではなくてもコーナリング性能を引き出しやすいこのクルマは、ミニサーキットとかで気軽にスポーツ走行を楽しめると思います。もう曲がる速度は完全にクラスを超えていますよ」と、その扱いやすい特性もRSの美点としてあげた。

1.6Lターボエンジンの発生する300馬力近いパワーを受け止める車体に、その半分にも満たない120馬力の組み合わせは想像以上にいい効果をもたらしているのだろう。

素性のよさは、タイヤ性能の引き出し方にまで及ぶようだ。「タイヤとの接地をクルマが上手に作ってくれます。だからタイヤの減り方も均等だし、タイヤの個性をそのまま再現できるというのも大きな特徴で、このクルマの強みでです」。

GRヤリスRS
●GRヤリスRSの持ち味は何と言ってもコーナーリング性能だ

なおCVTしか選べない「RS」の設定については、天野選手らしいコメントが聞けた。「じつはCVTの可能性を大きく感じています。MTは必ずギヤ比とコースの相性がでてきてしまいますが、CVTにはそれがありません。極端な話どこを走っても一緒。これは戦う上ですごい強みでもあります」とラリードライバー視点で語っている。一方、4WDターボモデルはMTのみの設定であることにも触れ、「AT限定免許でこの(ワイドフェンダーを備えた3ドアの)フォルムが好みの人はこのRSしかありません」とAT限定免許の人でも購入できる点を指摘した。

競技者以外の人にとって(もちろん競技者にとっても?)クルマのカタチは愛車選びのとても重要なファクターだ。GRヤリスは本丸の4WDターボモデルも、その性能を考えればコストパフォーマンスの高いモデルと言える。だが、その戦闘力よりグラマラスなフォルムのほうに魅力を感じる人にとっては、4WDターボのRZより約130万円も安いRSは十分魅力的なグレードと言えるだろう。

GRヤリスRS
●GRヤリスRS


■これからのニュースタンダード?

冒頭で触れたように、天野選手はこのカテゴリーでは圧倒的な戦績を残す最強のドライバーのひとりだ。しかし本人いわく「チャンピオンを長年獲っているとものすごく速いと思われがちですが、区間タイムなどを細かく計算していくとじつはその速度差はわずかなものなんです。もし違うとすれば、それは安定度と精神面です。別に運転がドカーンと速いわけじゃないんです」と言う。そんな天野選手が第5戦 ラリー丹後 2021より投入したニューマシンのGRヤリスRSは、より安定感のある挙動と、安心して攻められる精神的な余裕が得られる、今シーズンからの強力な武器となるに違いない。

一方で、強力なエンジンではないものの抜群のコーナリング性能を誇るマシンというものに、魅力を感じる自動車ファンも少なくないだろう。天野選手は最後にRSについて「漫画の世界とかでは、マシンのパワーで直線や上り区間が速い人よりも、ダウンヒルで速い人はカッコいい、みたいな話があるじゃないですか。GRヤリス"RS"って下りめちゃくちゃ速いですよ。もしかしたら二輪駆動で最速かも」とまとめてくれた。

GRヤリスRS
●デビュー戦で見事クラス2位でフィニッシュ!

WRCを念頭において登場したGRヤリスだが、NAの1.5LエンジンにCVTを組み合わせたFFの「RS」は決して上位モデルの廉価版などではない。その実態はかなりマニアックな存在でもあり、クルマの根源的魅力に満ちたスーパーウエポンなのかもしれない。

<文と写真=高橋 学>



ドライバーWeb編集部・青山

RELATED

RANKING