2021/06/04 モータースポーツ

課題は燃費、と思いきや?伸びしろが大きい…トヨタ水素エンジンの秘密【後編】

●豊田章男社長がチームオーナーのプライベートレーシングチームである「ROOKIE Racing)」に託された「ORC ROOKIE Corolla H2 concept」


高回転域では異常燃焼との戦い…これからの進化に期待!



とは言え、話はそう単純ではない。水素エンジンは高負荷域が強いが、そこに高回転という要素が加わると異常燃焼との戦いとなってくる。低負荷域で使うならば燃料電池のほうが圧倒的に有利というから、おそらく将来的な水素の内燃エンジンでの使い方は、さほど高回転ではないが高負荷という領域を多用する用途になるだろうか。例えば都市間移動の大型トラック用エンジンなんて、ぴったりと言えるかもしれない。



いやしかし、せっかく内燃エンジンに多くのファンが抱いた、カーボンニュートラルの時代でもエンジンの音と吹け上がりを楽しめるという夢に対しては、それだけではちょっと寂しい。モータースポーツでの使用についても同様。困難を克服して、ゼヒ高回転域で水素エンジンの甲高いサウンド、今後も聞かせてほしい。そう言うと小川氏は、こう答えてくれた。

「いや、個人的にはそうですね。やるからには!」

決して得意な領域ではないからこそ、あえてレースという高回転高負荷域を多用するフィールドで“自虐的なところですよ”というくらい鍛えることに、大きな意味がある。あるいはモリゾウ選手はそこまで見越して、水素エンジンのレース参戦を決めたのだろうか?

いずれにせよ、まだまだ多くの可能性を秘めた水素エンジン。今後もスーパー耐久への参戦が継続されるならば、瞬く間に進化していくに違いない。いや、進化だけではなく、より水素の使用に特化したエンジンになったり、あるいは液体水素のようなチャレンジがあったりと、変化や発展も見られるかもしれないという期待も高まる。今後もこのクルマ好きにとっては目の離せない技術、追いかけていくつもりだ。

〈文=島下泰久 写真=難波賢二〉

ドライバーWeb編集部

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