2021/06/04 モータースポーツ

課題は燃費、と思いきや?伸びしろが大きい…トヨタ水素エンジンの秘密【後編】

●豊田章男社長がチームオーナーのプライベートレーシングチームである「ROOKIE Racing)」に託された「ORC ROOKIE Corolla H2 concept」


課題は燃費…かと思われたが?


無論、課題はまだまだ多い。特に、やはり燃費だ。前回のテスト走行同様、今回も約12〜13周ごとに水素充填のためのピットストップを強いられていたから、まだまだガソリンエンジン車との差は大きいように見える。


●レースで使われた水素は、福島水素エネルギー研究フィールドで製造した再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」

「実際にはガソリンよりちょっと悪いくらいだと思うんです」

考えてみればライバルとなった市販車改造のレーシングカー、フィットやロードスターなどの燃費はおそらくリッター当たり4〜5kmといったところ。市販車のスペックの3〜4分の1といったところだ。今回の水素エンジン、おそらく水素充填も6〜7割り程度の十分なマージンをとっていたはずで、そう考えれば4〜5kgの水素で13周、60km弱を走っていることになる。となれば市販車では、すでに4〜5kgで240kmは走れるというわけで、悲観するほど悪くもないかなという気がしてくる。


●水素エンジンを搭載したカローラの室内

実際には、水素タンクの一層の高圧化、あるいは液体水素の使用なども幅広く議論されているのだという。液体水素は、気化潜熱が活用でき、しかもマイナス253℃ときわめて低温なだけに筒内冷却にも大いに効果を発揮するのだ。

その上で、さらにリーン燃焼を煮詰めていけば、燃費だってそこまで悪くないというものができるのではないだろうか。しかも、その水素はカーボンニュートラルで供給できる。ポジティブな要素が、いくつも並んでいる。

「一般的に、燃焼をリーンにしていくと水素はNOxが出なくなります。ですので触媒を暖める必要はありません。さらに、水素はカーボン(“C”)を含まないのでHCやCOは出ないですから。夢が膨らみますよね?」

NOxもCOもHCも出ないなら、触媒は要らない! 理論上、ストレートパイプでもよくなってしまうのだ。ますます気持ちのいいサウンド、歯切れいいレスポンスを楽しめる可能性、高いのである。

ドライバーWeb編集部

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