2021/06/03 コラム

割のいい仕事は激減。コロナ禍であらためて感じる依頼主との力関係…トラックドライバーが本音を語る

●減ったものもあれば、増えたものものある!?


コロナ禍の1年を経た、物流のお仕事は?



感染者が増減を繰り返し、未だ出口の見えない新型コロナ問題だが、この状況下を過ごしてトラックドライバーは今、どんな状況(待遇)の中にいるのか。

(1)フリー便業務は、選択肢も物量も減ったまま
前述したイベント関連業務の減少のほか、海外輸出入関係の物量もコロナ禍以前ほどには戻っていない。よって、運送業界全体での輸送量は少し減った状態のまま停滞しており、何より依頼業務の選択肢も減っている印象だ。それを裏付けるのが、コロナ禍に入って以降の運賃と業務内容の変化だ。

(2)2回戦仕事の減少
「2回戦仕事」とは、1日の業務で2回の輸送業務を行うことを言う。例えば、朝出発で昼前に1件の輸送業務を終え、昼以降にまた別の荷物を積み夕方ないし夜などに届けること。先の午前分が1回戦、午後のもう1便が2回戦というわけだ。当然、2回分の運賃が稼げるから、誰もがこういう仕事のパターンを希望する。また実際、新型コロナ感染拡大以前には2回戦仕事が結構あったが、今やこういうパターンが激減。1便で終了の「1回戦上がり」が増えた。当然輸送業務の拘束時間は減ったのだが、ほぼ歩合級のトラックドライバーにとって、この変化は経済的に痛手。副業を本気で考えないと厳しい。

(3)運賃は、コロナ禍前の1割減? 
言うまでもなく、輸送業務の選択肢は全体的に減っているから、魅力的(輸送の手間が少なく面倒でない)な内容の仕事も、満足の行く運賃の仕事も、少なくなった。数の減った輸送業務に、多くの運送会社が手を上げるのだから当然だが、それに乗じて依頼先も強気。運賃は安く、業務内容はなるべくハードに、だ。例えば、以前は2万6000円程度の運賃だったなら、2万3000〜4000円のレベルに落ちている実感がある。

もしくは、運賃が以前と同額ならば、輸送量が増やされている印象だ。筆者の時折請け負う配送便のよくある例だが、以前は積み地で3〜4カ所分の荷物を配送して完了だったものが、2便分になっていたりする。前述した1便目の配送を完了した後、積み地に戻ってまた3〜4カ所の配送を行うというものだ。しかし、2便分をこなしても以前の1便分とほぼ同額ないし、上乗せがあった場合でも運賃1〜2割増しくらいにしかならない。割に合わない気持ちを拭えないものの、以前よりも少ない仕事の中から取り合うのだから、こうなるのは当然だ。ちなみに、東京五輪前後で運送業界は景気上昇を期待していたはずだが、「そんなもん、どこにある?」というのが実感である。

トラックドライバーは底辺の仕事、なんて悪口を言われることは多々あるが、こうしてコロナ不況下での依頼主との力関係を実感すると、「確かにそうだよな」と思わずにはいられない。しかし、トラックドライバーがこの世からいなくなったら、スーパーでも買い物も、工場での生産も、どうするつもりなのだろう? 運転手同士は互いに「今は我慢のしどきだ」なんて言い合っているが、さてこの先にどんな景気が待っているのかは、どうにも読めない。

文=坂 和浩

ドライバーWeb編集部

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