2021/05/06 新車

4WDじゃなきゃスバルじゃない? インプレッサ初のSTIスポーツ、FFモデルに乗ってみたら

写真=山内潤也


気負わずに走りを楽しめる



そして、このSTIチューンの伏線となったのが、2019年10月に行われたインプレッサのマイナーチェンジだ。

前期型の2.0i-Sアイサイトはアドバンスポーツの強力なグリップ力ばかりが目立ったが、スバルグローバルプラットフォーム(SGP)のポテンシャルを引き出すべくサスペンションを改良。4輪をフレキシブルに接地させ、旋回姿勢のリニアリティが一体感につながるしなやかさを身につけた。



null
●ブラック基調のシックな内装には、随所にブラックラスト塗装パーツを採用して上質さを演出。各所に配したレッドアクセントで刺激が感じられるスポーティな装いとした。タコメーターの「STI」ロゴも“走り”のムードを高める

チューニングは料理にも例えられる。素材がよければほんのわずかな調味料で旨みを引き出せるように、SGPを核とした基本性能の向上があったからこそ、ダンパーチューンだけでここまでのシャシーに仕上げることができたのだ。

筆者がステアリングを握ったのはFFだが、こうした美点はAEDと変わりないはず。雪道などでAWDの走破性が不可欠というのでなければ、22万円の価格差以外にもFFにはFFのよさがある。

車重はAWDより50kg軽量。だいたい大人1人分に当たる軽さは、走る・曲がる・止まるの基本性能、それから燃費において有利に働く。

とはいえユーザーのなかには、「スバルはやっぱりAWDじゃなきゃ」という声も根強いらしい。

スバルはWRCにおけるレガシィやインプレッサWRXの活躍でファンを拡大。FFがイメージと結びつかないのも無理はない。ただ、スバリストには釈迦に説法だが、スバルの歴史をひもとけば、水平対向エンジンはもともとFF採用のために開発されたのだ。

ドライの舗装路で両車の違いをもっとも感じとれるのは、やはりワインディングだろう。

FFはフロントの動きが軽く、コーナーのターンインではクイックに向きを変える。2.0i-SアイサイトでAWDとFFの両方に乗った印象を合わせれば、ハンドリングは回頭性の鋭い切れ味がFFの真骨頂だ。

一方、アクセルオンで立ち上がるターンアウトでは、トレース性でレールに乗ったようなAWDのほうが上まわるに違いない。どちらがいい悪いではなく、それぞれに持ち味がある。

ただ、全域で振動なく吹き上がる2Lボクサーの動力性能は、FFでも十分に引き出せる。ハイグリップタイヤと相まって、駆動力のロスはほとんど感じられない。公道で走りを楽しむかぎり、大半のシーンで存在感を発揮するのはAWDの安定感よりFFの軽快さではないだろうか。


●2L水平対向4気筒エンジンは113kW(154馬力)/196Nm(20.0kgm)を発揮。FF車はAWD車に比べ50kg軽量。身のこなしも軽快

価格はFF、AWDともに、これも2.0i-Sアイサイトの22万円高。STIチューンのSFRDによって実現したクラストップレベルの上質でスポーティな走り、それを内外装の雰囲気でも演出する専用装備を考えれば、リーズナブルな設定だ。STIのアンダースポイラーでエアロチューンする楽しみも残されている。

見極めたツボにを打ち、全身のバランスを整えるようなSTIチューン。インプレッサSTIスポーツはその神髄を気負わず堪能できる、エントリーモデルにふさわしい出来栄えだ。スバリストでなくても実力を知っておく価値は十二分にある。




●黒基調に、ライトグレーやレッドのアクセントカラーを配したシート。ホールド性が高くスポーティな走りを支える。荷室容量は385Lで、6:4分割可倒の後席背もたれにより、日常の買い物からアクティビティを楽しむシーンまでフレキシブルに対応する


●視界性能にこだわり、全方位で死角を低減する0次安全はスバル車共通。加えて、独自の安全運転支援システム「アイサイト」を含む予防安全技術の搭載で安心・安全運転や走る楽しさを全方位でサポートする


■STIスポーツ(FF・7速CVT)主要諸元 【寸法mm・重量kg】全長×全幅×全高:4475×1775×1480 ホイールベース:2670 トレッド:前1540/後1545 車両重量:1350 【エンジン・性能】型式:FB20 種類:水平対向4DOHC ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 総排気量:1995㏄ 最高出力:113kW(154ps)/6000rpm 最大トルク:196Nm(20.0kgm)/4000rpm 使用燃料・タンク容量:レギュラー・50ℓ WLTCモード燃費:13.0km/L 最小回転半径:5.3m 乗車定員:5人 【諸装置】サスペンション:前ストラット/後ダブルウイッシュボーン ブレーキ:前後Vディスク タイヤ:前後225/40R18 【メーカー希望小売価格】270万6000円

〈文=戸田治宏〉

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING