2021/05/02 コラム

反則金稼ぎの一面も? 韓国が一般道の制限速度を50キロに引き下げ

●税収不足とは別に、韓国にはヤバイ事情がある

「きょうから都市部で制限速度引き下げ 一般道は50キロに=韓国」と2021年4月17日、ワウコリア(https://www.wowkorea.jp/news/korea/2021/0417/10295860.html)が報じた。以下はその一部だ。

◇◇◇引用始まり◇◇◇
 韓国で17日から都市部における自動車の制限速度が引き下げられ、一般道路では時速50キロに、生活道路では30キロになる。警察庁などが発表した。
  (中略)
 従来の都市部の一般道の制限速度は片側1車線の道路が時速60キロ、片側2車線以上は時速80キロだった。生活道の制限速度は子ども保護区域などが時速30キロ、それ以外は時速40キロ、50キロなどさまざまだった。
  (後略)
◇◇◇引用終わり◇◇◇

都市部の片側2車線の一般道路が制限80キロって、日本じゃ考えられない! もしかして、日本でいう自動車専用道路(たとえば首都高速とか)も「一般道路」に分類しているのかも。

そんなことより、思い出すのは2020年7月30日付けのデイリー新潮、「『文政権』で4倍へ…税収不足を交通違反の取り締まり金で埋めるセコさ」という記事だ。https://www.dailyshincho.jp/article/2020/07301700/?all=1

その記事によると、韓国の「反則金」収入は、2016年までは年間5000億ウォン(約440億円)台で推移していたのに、文在寅大統領が誕生した2017年は8000億ウォン台になり、その後も増え続けて「交通反則金1兆ウォン時代」に突入しそうな勢いだという。1兆ウォンは約880億円だ。それが2021年4月、現実化しはじめたってことかな。

交通違反のペナルティを重要な収入にしようとするのは日本も同じだ。日本は1968年7月、「反則金」の制度を誕生させた。ぶっちゃけ反則金は、ちゃちゃっと簡単に聴取できるペナルティだ。制度が誕生するや、警察は取り締まり件数を激増させた。1968年の反則金収入は、7月からだったので約71億円、翌1969年は約122億円。以降ぐんぐん増え、1975年には500億円を突破、1987年には、反則金を約1.5倍に値上げしたせいもあり1000億円を突破した。

2013年6月には駐車違反に限って「放置違反金」の制度が登場した。交通違反のペナルティとしては日本で始めて、取り締まりを行った都道府県にダイレクトに入ることになった。「小泉行政改革」で地方への補助金を大幅に減らした見返りとして、地方の財源とされたのだ。当時、財政難に苦しむ地方には「天恵」つまり天の恵みだと報道されたもんだ。だから、韓国の文政権が「税収不足を交通違反の取り締まり金で埋め」ようとするのは、日本人としては理解できる。

また、税収不足とは別に、韓国にはヤバイ事情がじつはある。以下は、日本の警察庁交通局作成「交通統計年報」から「各国の死者数の推移(人口10万人当たり・車両1万台当たり)」という表の一部だ。


●「交通統計年報」(警察庁交通局、2019年版)より。死者数は諸外国も日本も「30日以内死者数」。この年報は非売品であり私は警察庁でコピーさせてもらった

2018年の人口10万人当たり死者数は、日本は3.3人、韓国は7.3人。そこに挙げられた諸外国と比べ、韓国はかなり多い。車両1万台当たり死者数は、日本が0.46人、韓国は1.40人。やはり韓国はだいぶ多い。韓国は交通事故死者数が非常にヤバイのだ。なんとしても交通事故を、特に死者数を減らそうとするのは、当然だろう。

スピードが高いほど、危険を察知しにくく回避が遅れる。間に合わなくなる。かつ、事故った場合の致死率がぐんと高くなる。とにかくスピードを抑制しなければ! そう考えるのはよくわかる。ただ、低い制限速度にみんなが納得せず、違反者の多くを直ちに取り締まることができない、となればその法律は「ザル法」になる。日本の元内閣法制局長官、故・林修三氏は著書『法令作成の常識』(日本評論社)でこう述べている。

「ザル法が出現することくらい、一般の人々の遵法精神をそこなうものはない。違反者が確実に処罰されず、免れて恥なき者が続出するようでは、人々に、その法令のみならず、一般に法令を守る気がなくなってくるのは無理もない」

韓国、大丈夫か? って日本こそ大丈夫なのか。ちなみに、アメリカの10万人当たり、1万台当たり死者数をちらっと見てほしい。アメリカは相当なもんだ。韓国やアメリカのニュース番組では連日、悲惨な交通事故が報じられてるんだろうか。中国やロシアはどうなんだろう。そういうことも含め、身近な交通事故、交通違反、クルマやバイク、バスや電車の最新情報を専門に取り上げるバラエティ番組があったら、だいぶ視聴率をとれるんじゃないか。クイズ形式とかいいんじゃないか。余計なお世話? す、すみません~。

〈文=今井亮一〉                            
交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を発行。

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING