2021/04/26 コラム

ステレオカメラ式オービス検証中!? 阪神高速の怪しい装置

●半固定式とは内部が違って見える

オービスガイド全国調査員(@8833jp)さんのツイート、そこにある画像を見た私はギョッとなった。以下の画像だ。


●2021年3月29日付け、オービスガイド全国調査員(@8833jp)さんのツイートより

見た感じ、半固定式(https://driver-web.jp/articles/detail/38832)とは違う。左右に少し離れて2つ、小さな開口部があるように見える。こっ、これは、もしや…!!

『ラジオライフ』(三才ブックス)の2014年6月号で私は、「スピード取り締まりの未来」として三脚に載せて使う「携行式オービス」の登場を予測した。そしてこう続けた。以下、当時の原稿を一部引用する。若干の補足等をして。

***引用始まり***
携行式オービスの測定方法は何か。現在、東京湾の水底トンネル(通称:海底トンネル)に、カメラの撮影画像を解析して速度を算出する装置が設置されている。管理事務所はいう。
「あれは速度オーバーを警告するために測定しています。取り締まりのためではない。ですから精度の検証はしていません」
 精度の検証をして携行式オービスに使うのか。
 それとはまた別に、交通警察官向けの専門誌『月刊交通』(東京法令出版)の2013年11月号に「ステレオカメラを使った新速度違反取締装置」なるものが出てくる。ステレオのスピーカーのように左右に配置したカメラで同時に撮影し、その奥行きの差から速度を解析する方法だ。こう書かれている。
「装置も設置も簡単で,従来のドップラー効果を利用する方式に比べ,無線資格も不要であり,レーダーを使わないため相手方は感知できない,精度が高い,画像が記録され証拠能力が高い等のメリットがあります」
 8月に特許を取ったという。特許庁で確認してみた。確かに「速度計測システム、速度計測方法及びプログラム」として特許公報に載っていた。
***引用終わり***

その特許は現在、「特許情報プラットフォーム」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)の検索窓に「速度計測方法及びプログラム」と入力して見られる。出願人は「公益財団法人日本交通管理技術協会」と、ほか2社だ。日本交通管理技術協会、略して管技協は、従来の固定式オービスを導入する際に精度試験を行ったとされる団体だ。2014年当時、新たな携行式オービスの測定方法は、デジタルカメラの撮影画像を解析するタイプになるんじゃないか、私はそう推測した。

その後、携行式オービスは可搬式オービスとして登場した。測定方法については、私の推測は外れた。可搬式は2社が競合する形であり、世界70カ国を相手にする世界的企業Sensys Gatso Groupは「トラッキングレーダー式」(以下、追跡レーダー式)、もう1社、日本のオービスの老舗である東京航空計器(TKK)は「スキャンレーザー式」(以下、レーザー式)だ。現在までに分かっているところでは、追跡レーダー式は超高性能だ。一方、レーザー式は残念ながらどうやら使い物にならないようだ。

さあ、そういうなかで、オービスガイド全国調査員(@8833jp)さんのツイート画像なのである。左右に少し離れて2つ、小さな開口部があるように見える。こっ、これは、もしや、ステレオカメラ式!? ついにレーザー式をあきらめ、ステレオカメラ式を採用すべく精度検証を始めたのかっ!?

現在、ネット上で「画像処理技術を応用した新速度違反取締装置」という文書が拾える。「平成23年度研究」とある。平成23年=2011年だ。「ステレオカメラ方式」は速度取り締まり装置として非常に優れているらしい。その文書は管技協のサイトに置かれている。同サイトには「研究会発表会の開催状況」(https://www.tmt.or.jp/research/index8.html)というのがある。「画像処理技術を応用した新速度違反取締装置の研究開発」についての発表が2012年、2013年、2014年と連続して行なわれている。相当本気だったと思われる。


●「画像処理技術を応用した新速度違反取締装置」(https://www.tmt.or.jp/research/pdf/sokudoihan.pdf)より。この検証では2つのカメラの相互間距離は1mだ

ただ、「実験結果」の画像からは、車両の側面から測定することがわかる。前出の特許公報にも「走行方向に略垂直の方向から撮像し」と出てくる。「略垂直」とはおおむね垂直という意味だ。側面から測定したのでは、違反車両のナンバープレートや運転者の顔はだいぶ先で撮影することになる。可搬式オービスには向かない。それゆえなのかどうか、2016年に突然、レーザー式が登場した。

しかしレーザー式はどうにも使い物にならず、困った警察庁は「おお、そうだ、ステレオカメラ式があったじゃないか」となった。で、可搬式オービスで使えるよう斜め前方から測定した場合の精度を、ツイート画像のあの装置で検証しているのではないか! どうです、マニアな私はすぐそんなふうに考え、ギョッとなってしまうのですよ(笑)。今後も調べていこう。

〈文=今井亮一〉                            
交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を発行。

ドライバーWeb編集部

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