2018/01/14 コラム

まもなく半世紀 歴代モデル “試乗記” で見る スバル4WD「進化の軌跡」1

driver archive SPECIAL数ある自動車メーカーのなかでも “四駆” に強いこだわりを持っているのがスバル。その歴史は半世紀近くにさかのぼり、いまも水平対向エンジンと並ぶ同社のコア・テクノロジーである。林道から市街地、そしてサーキットまで。その進化の過程を、本誌試乗記で振り返ってみたい。 まとめ:編集部
1972 LEONE 4WD estate VAN初回は、1972(昭和47)年9月に発売された「レオーネ 4WD エステートバン」。ジープタイプではない量産4WDとして世界で初めて世に送り出された、スバル市販四駆の祖となるモデルだ。*:当時の試乗記はすべて本誌の記事を抜粋、一部再構成したものです

「悪路、坂道もなんのその」 1972(昭和47)年 11月5日号「たいへんなクルマが登場したものだ。野山を駆け巡り、困難とも思える道なき道を、いとも簡単に走破してしまう。ジープの荒々しい豪快さに、乗用車の実用性と乗りごこちをミックスした不思議なクルマ、それがレオーネ4WD(4ホイール・ドライブ)。このクルマは、レオーネ1400エステートバンをベースに作り上げられた。レオーネのFWD機構に、後輪駆動用のドライブシャフトを組み込んで、4輪駆動としたもの。前輪駆動から4輪駆動に切り換えるのは、セレクトレバーの前に付けられたドライブセレクターを4WDにシフトするだけでOK。レオーネ4WDの実力は、本当にすごいものだ。悪路、坂道の走破性は全くジープと変わらないほど。そのうえ、大きくとったロードクリアランスは、ハッ!と思うようなところも楽々と通過してしまう。タイヤは寒冷地仕様のBS・RD301 155SR13が装備され、どのような路面にも駆動力を十分に伝えてくれる。ボクたちヤングにとって残念なことは、実用性一本槍なことだ。この4WD装置が、レオーネ1400の乗用車にメーカーオプションとして付けられるようなことにはならないだろうか。そうすれば、三拍子魅力のそろったクルマの誕生ということになるだろうに…」(久留子 玲)

「G.P.Car」当時のカタログ〈左〉から。「平常走行ではFF車の走行安定性を発揮し、いったん荒地に踏み込めば4輪駆動車の本領であるみごとな踏破性を発揮します。これこそほんとうの意味でのG.P.Car(General Purpose Car『多用途車』)といえるでしょう」。〈右〉FF→4WDの切り換えは、シフトレバー前方のドライブセレクター操作で。シンクロ内蔵で、走行中でも操作可能だった。
●〈左〉標準装着タイヤは全天候ラジアルのブリヂストン・RD301。〈右〉リヤゲートに貼られた「4輪駆動」ステッカー。まだ一般的に「4WD」が認知されていない時代だった

これが起源1971 SUBARU ff-1 1300G VAN
●最高速度は4WD時130km/h、FF時135km/hを誇った
「冬期の送電線保守のためにジープタイプを使っているが、これに変わる4WDバンがあれば、1年中使えて居住性もよく経済的だ」そんな東北電力配電部からの提案を受けた宮城スバルが、中古の「スバル1000バン」をベースに「日産ブルーバード」のデフとドライブシャフトを使って4WDの試作車を製作。これが乗用4WD誕生の発端。その後、テストと改良を重ね、1971年3月に富士重工へ1台の試作車を持ち込んだ。さっそく富士重工は「ff-1・1300Gバン」をベースに開発に着手。同年8月までに4台の試作車を完成させ、うち1台を10月開催の東京モーターショーに展示。その後7台が増加試作され、うち5台を東北電力に、長野県飯山農協と白馬村役場に1台ずつ販売された。

■レオーネ 4WD エステートバン(4速MT) 全長:4040mm 全幅:1500mm 全高:1450mm 車両重量:905kg 水平対向4気筒OHV 1361cc 77馬力/10.5kgm(ともにグロス値)
発売当初、4WDエステートバンの販売台数は事業用などに月100台程度でしかなかったという。しかし、粘り強く販売活動を続けたことが、やがて大きな花を咲かせることになる。

セダンに続く

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