2020/12/22 コラム

日本最大級の自動車博物館がなぜ石川に!? 展示車はどうやって集めたの? 今こそ訪れたい日本自動車博物館の魅力とは

●日本自動車博物館(石川)の副館長・高川秀昭氏


大手メーカー博物館との違いとは?


トヨタ

石川県での取材後、日本自動車博物館と大手メーカー直系の博物館がどう違うのか、改めて確認しようと考え、まずはトヨタ博物館(愛知県長久手市)に行ってみた。





久しぶりの訪問だったが、トヨタ初の生産型乗用車「トヨダAA型」(1936年)から始まる同社の歴史と、世界の自動車産業史がうまく織り交ぜてあり、室内空間を広々使い、ゆったりと閲覧できる。また、クルマ文化資料館には、トヨタが独自に世界各地から収集した約20万点の文化資料から約4000点が、静かな空間にギュッと凝縮されている。



企画展「30年前の未来のクルマ」(2020年6月2日~10月11日)では、幻となったスーパーモデル「4500GT」(1989年)や、現在も人気車である「RAV4」のコンセプトモデル「RAV FOUR」など、在りし日の東京モーターショーで見たクルマたちに再開できた。2021年に着工する未来都市「ウーブンシティ」(静岡県裾野市)をきっかけに、過去を振り返ることで未来を考えようというのが、この企画の狙いだ。

一方、トヨタの自動車史に触れるなら、名古屋駅近くにあるトヨタ産業技術記念館がお勧めだ。トヨタの原点である織機の歴史を実物大の大型機器を見ながら体験できる。「トヨダAA型」生産ラインを再現した展示や、現在のトヨタ生産方式についても詳しく紹介されている大規模な博物館である。

このほか、トヨタ本社(愛知県豊田市)に隣接する、トヨタ会館では最新技術の紹介と稼働中の工場見学ができる。さらにいえば、東京お台場のメガウェブは新車が勢揃いした博物館にような存在である。

日産

日産には、次期Z(Z35)のほぼ量産の姿と言われている、「フェアレディZプロトタイプ」の実車確認のため、「ニッサン パビリオン」(2020年8月1日~10月23日、Zプロト展示:9月16日~10月4日)に出かけた。同時期、日産本社ギャラリーの一角には、Zの歴史を振り返るため、初代S30やZ33の先行検討車の姿があった。



日産座間事業所(神奈川県座間市)には、ニッサンヘリテージコレクションとして約400台を所有し、そのうち約300台が常時展示されている。博物館というより、まるで実車を販売しているような独特の雰囲気がある。日米欧で活躍したレーシングカーの展示数が多いのが特徴。また、日産には、社員やOBがボランティアで修復するプロジェクトがあり、これまで電気自動車「たま」や横浜こどもの国で走行していた子ども向け車「ダットサン・ベビィ」などを手掛けた。

ホンダ

ホンダの場合、ツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡)の開業に合わせて設置した、ホンダコレクションホールに四輪、二輪、汎用器、そしてF1まで約300の展示がある。



青山本社1階のウェルカムプラザは、東京2020に対応して1月に新装オープン。落語の寄席を開催したり、筆者の参加した新型「フィット」の商品性を体感する「ここちよさ展」を行うなど、博物館的な発想とはひと味違うアプローチをしている。

その他、筆者は2019年に各メーカーの博物館を巡っている。

マツダ

マツダは、本社宇品工場内のツアーの中に博物館の見学が含まれている。一般来場者とは別に、マツダ関係者の案内で博物館内をじっくり巡ったが、展示パネルや展示品のひとつひとつにマツダとしての拘りを強く感じた。その上で、筆者は常々、マツダ役員らに広島駅周辺にマツダ博物館を新設するべきと提言している。



スズキ

スズキは浜松本社に隣接する、スズキ歴史館がある。トヨタと同じく織機産業を基盤としてた創業時からの歩みに加えて、商品企画から製造までの工程をパネルと大型模型化している。展示車も充実しており、とてもアットホームな雰囲気がするスズキらしい施設である。

こうして、日系自動車メーカー直系の博物館の実情を考えると、石川県の日本自動車博物館で、クラウン、マークⅡ、Z、スカイラインなどのシリーズ全車や、ホンダ・マツダ・スズキの全般まで幅広く常設展示されている光景は、日本自動車産業界にとって貴重な存在であることが改めてわかった。

ドライバーWeb編集部

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