2020/12/15 コラム

新型ノートの完成度がスゴすぎて、キックスが心配になった|木下隆之の初耳・地獄耳|

「新型ノート、素晴らしい完成度でしたね」
編集担当のKが興奮を隠しきれない。2020年の末に販売が開始される新型ノートの、事前試乗会でのことだ。

確かに新型ノートの完成度は驚くほど高い。基本的な性能はe-POWERに依存しており、あっと驚くような革新的技術が発表されたわけではないのに、丁寧な作り込みが細部まで浸透しており、僕らを虜にした。軽量化だとかパワーアップだとか、ユーザーを幻惑させる数値も控えめだ。むしろ、ドアの開閉音だとか、情報提供音などが改良されている。



「情報提供音ってなんッスか?」
「ウインカーの音や速度警告音など、さまざまなチャイムやブザーのことだ。そんなことも知らないのか?」
「初めて聞きました」
「僕もだ!」

走りも洗練されていた。e-POWERの特徴だったエンジンカー感覚が薄れている。エンジンが安易にかからないような特性になった。エンジン音は巧みに遮断されている。「脱EV感覚」からの脱出である。

「脱・脱EV感覚ッスね」
「ややこしいこと言うな」
「すぐにキレすぎッスよ」
「その口ぶりが不愉快だからキレるのだ」

デザインも素晴らしい。コストの制限がある価格帯の車特有のチープ感が薄い。近未来感覚も備わっている。そのデザインから、日産が生まれかわろうとしていることがわかるのだ。



「日産も公言してますよね。これが新しい日産のデザインですって」
「ノートもアリアも同様のテイストだったな」
「かっこいいッスよね」
「ああ、確かにかっこいい。だが、俺は心配もしてしまうのだ」
「心配ッスか?」
「そうだ、キックスの存在が心配でならないのだ」
「ノートとキックスが、どう関係するんッスか?」


●日産キックス

「ノートのデザインは整っている。アリアのデザインも素晴らしい。それは日産の自信満々の口ぶりからも理解できる。オンライン発表会の画面の中でも、星野朝子副社長が寸劇していたしな。これからの日産電動車の新しいデザインだってね。でもね、とするとキックスはどうなっちゃうの?って気がするわけよ。キックスだってまだデビュー直後だ。e-POWERだからノートと同じ電動車だ。旬のモデルでもある。これからもっともっと売れていかなきゃならんモデルである。だと言うのに、ノートとアリアの顔のことばかり褒めてしまったら、キックスの立場がないって話なのだよ。キックスが一気に古臭く見えなきゃいいけどねって。『母さん、俺も可愛がってよ』って足元にすがっている…みたいな感じね」
「なるほどッスね」

「担当部署ごとの主張なのかもしれないな。メーカーとしてのブランディングじゃなくて、それぞれの開発担当者が産み育てたモデルを宣伝したいって思いが強すぎるのかもしれない」
「木下さんがブランディングすればいいんッスよ」
「私ならその文言は修正するけどね」
「修正してあげてくださいよ」
「わたしはその立場にはない」
「じゃ、キックスも応援してあげるとか…」
「それならできる。だからドライバー誌の原稿でも褒めておる」
「でも、ノートはもっと絶賛してますよ」
「…(汗)」

〈文=木下隆之 写真=澤田和久〉

ドライバーWeb編集部

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