2020/12/02 ニュース

え!スカイラインの名付け親は桜井眞一郎氏ではない!?  命名にまつわる意外な秘密

ゴルフボール説を日産が公式に認めた!



2020年12月2日、日産は一般社団法人日本ネーミング協会が主催する「日本ネーミング大賞2020」で、「SKYLINE(スカイライン)」が優秀賞を受賞したと発表した。

注目すべきは、その発表リリースのなかで車名の由来について記したくだりである。

『車名の「スカイライン」は、「山並みと青空を区切る稜線」に由来しています。初代モデルの誕生当時、それまでの主力商品であった「プリンス・セダン」に代わる新型乗用車のネーミングとして決定されました。当時の富士精密工業の会長であり、ブリヂストンの創業者としても知られる石橋正二郎会長は、同社製品のゴルフボール「ブルースカイ」、「スカイウェイ」などと共通性のある「空」に因んだ言葉を指向し、社内に存在した命名案の中から、清冽なイメージを持つ「スカイライン」が選ばれたと伝えられています。』

驚いたのは、筆者(ドライバー編集部・吉川)がかつて書いた『車名博物館PART1(八重洲出版)』で紹介した“ゴルフボール説”がオフィシャルに認められて(?)内容に盛り込まれたことである。

スカイラインとブリヂストンのゴルフボールとの不思議なつながり

さらなる注目点は、一般に流布している桜井眞一郎氏による命名説にまったく触れていない点である。

手元にある1973年7月発行のスカイライン(ケンメリ)の総合カタログでは、以下のように紹介している。

『「スカイライン」の命名は設計者自身 スカイライン。この名は、いまや知らぬ人とてなく、日本の自動車史を飾る栄光のネーミングである。そもそも、この車名は、スカイラインの生みの親であり、育ての親として有名な「桜井真一郎」が志賀高原にスキーツアーにでかけ、北アルプスの真白な山なみと青空に感動。それをイメージして、命名したのだそうだ。』

これを見ると桜井氏による命名のはずだが、今回の発表リリースでは“経営陣による命名”になっている。これ以前に発行された自動車ガイドブック1960年版を見ると、『「スカイライン」とは本来、山、建物などの空に映った輪郭を意味する言葉ですが、この言葉から来るスマートな語感と、昭和32年4月に発表した画期的なプリンス新型乗用車のボデーとベルトラインの流れる様な線とを結びつけて命名した訳で、特別な由来はありません』と書かれていて、桜井氏説はどこにも登場しないのである。

この背景として、3代目スカイライン(ハコスカ)の途中から「愛のスカイライン」の広告キャンペーンが始まった。そのなかでスカイライン設計チームのリーダーを務めていた桜井氏にフォーカスを当てて、血の通ったクルマとしてスカイラインをアピールしていた。おそらくであるが、命名の由来もこうしたキャンペーンの一環として桜井氏によるものとされたのではないだろうか?

名開発者として桜井氏が果たした役割は非常に大きいが、スカイラインの車名については「プリンス経営陣命名説」のほうが有力だろう。


●1957年4月にデビューした初代プリンス・スカイライン。アメリカンスタイルで流れるようなボディラインが特徴的


●3代目スカイライン(ハコスカ)の途中から「愛のスカイライン」のキャンペーンが始まる。1971年9月発行の総合カタログにも桜井氏が登場している


●4代目スカイライン(ケンメリ)は72年9月に登場。この世代から桜井氏命名説が生まれる


●スカイライン(2代目途中から7代目まで)の開発責任者を務めた桜井眞一郎氏(1929〜2011年)。日本自動車殿堂にも選ばれている

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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