2020/12/12 コラム

BMWのキドニーグリル…ドイツ語だとなんと呼ぶ?|木下隆之の初耳・地獄耳|

BMWが発表した新型4シリーズが話題をさらっている。というのも、伝統のキドニーグリルが、巨大になったのである。クルマを見てまず視線が吸い寄せられるのはそこ。フロントグリルを形成するメッシュの網が、垂直になった。面積を大幅に増やして誕生したのだ。



「最近のBMW、グリルが肥大化していますよね」
担当のKは、ちょっと眉をしかめてそう言った。
「BMWのデザイントレンドだね」

「ところで、キドニーの意味ってなんすか? レクサスのスピンドルは『糸巻き』だし、アウディのワンモーションはまさに『一つの口』っすよね」
「キドニーとは英語で『腎臓』を意味するのだよ。向かい合わせになった2つの大きなグリルの形が、人体の腎臓に似ているからそうなったと言われている。確か1933年のM303を見た人がそう言ったとされているのだ」
「なるほど腎臓っすか。たしかに似てなくもないっす」

「ただ僕はこう思うんだ。なぜ『肺』にしなかったのだと。肺という臓器も形は似ている」
「たしかに、っすよね。肺のほうがメジャーだし」
「それも一理ある。五臓六腑の臓は『心臓』『肝臓』『脾臓』『肺』『腎臓』である。そのなかでも主役は心臓であろう。こいつが止まったら終わりだからな。その次にスターなのは肺じゃないか? 腎臓はさらに控えめのような気がする」

「脾臓は地味ですよね。こいつなにやってるんっすか?」
「こいつ呼ばわりは脾臓に対して失礼だろ。血液を循環させてくれている重要な臓器なのに」
「胃袋の方がメジャーっすよね」
「胃は五臓じゃなくて六腑の一つである」
「まっ、どっちでもいっすけど・・」
「君はいつもそうやって投げやりになる。閑話休題、時を戻そう」
「ペコパっすか?」

「しかも、だ。肺の持つ空気から酸素を取り込むという機能が、空気を大きく取り入れるラジエターの機能と似ている。イメージしやすいと思わないか? 腎臓は、血液を循環させて老廃物を排出する機能がある。ここからオシッコが生成される。吸い込む肺じゃなくて、吐き出す腎臓ってのが不自然に思うのだよ。どうだ?」
「なるほどっすね」

「というか、なんで臓器なんっすかね」
「たしかにその疑問は受け付けよう。僕だったら『バタフライ』と命名しただろう。二枚羽という形が似ているし、大きく羽ばたく姿がBMWのイメージと重なる。何よりも美しい。だというのに、腎臓って」

「ちなみに、ドイツ本国でもキドニーグリルって呼ばれてるんっすか? キドニーって英語っすねよ。ドイツ語で呼ぶのが筋ではないかとかように考えるわけです」
「口調がおかしい」
「ドイツ語じゃダメっすか?」

「その点は、BMW Team Studieのチームメイト、ヨルグ・ミュラーに聞いてみた。彼はドイツ人だからな。するとねやっぱりな答えだった。ドイツでは腎臓のことをNiere(ニーレ)と呼ぶ。だから「ニーレグリル」とのことだ」

「なるほどっすね。じゃこれから『ニーレグリル』って呼ぶことにしまっすね。博学ぶれるじゃないっすか」
「だったら僕は、バタフライグリルと呼ぶことにする。そのほうが美しいからな」

〈文=木下隆之〉

ドライバーWeb編集部

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