2020/11/16 コラム

ハイブリッドカーや電気自動車に義務化されている「車両接近通報装置」はホントに必要なのか?

車両接近通報装置って何?



2020年10月29日に一部改良された、三菱アウトランダーPHEVのニュースリリースに気になる一文があった。機能装備の説明で「車両接近通報装置の法規対応に伴い、車両接近通報OFFスイッチの廃止と、通報音の音量・音質を最適化させました」と書かれている。



「車両接近通報装置」とはEV走行ができるハイブリッドやPHEV、EVなどに装着が義務付けられている装置で、歩行者などに走行しているクルマが近くにいることを知らせる音を出す装置。EV走行時はモーターだけで走るためエンジン音がなくて静かであり、車両が近くにいても歩行者などが気づきにくいためスピーカーなどからあえて音を出しているわけだ。

この問題は、トヨタが1997年に発売した世界初の量産ハイブリッドのプリウスが誕生してまもなく一部で問題視された。このことが自動車関係者に広く認知されるようになったのは2代目プリウスが登場した2003年以降。初代はEV走行が少ないことと、まだ販売台数が少なかったためあまり問題にならなかったが、駆動モーターが強力になった2代目は条件がそろえば60km/hまでEV走行が可能。販売台数が劇的に増加したこともあり、安全性向上のために「あえて音を出す」ことが検討された。

トヨタは2009年、06年に実施した車両接近通報装置の調査結果を発表している。当時20プリウスの左側ヘッドライトの裏側に音を発生する装置を取り付け、車速が15km/hで音を停止。もちろんPレンジやDレンジなどでもブレーキを踏んで車速信号がゼロなら音を発しないようにされていた。音質は「チャイム音」とされ、小さく「ピロン、ピロン」というような接近音を発していいたように記憶している。車両前方2m、地上高1.2mで音量を計測すると46デシベルになるように設定。この数値は小さな声で話すレベルや住宅街の音量レベルだった。


●日産公式HPより

筆者は当時から20プリウス(車両接近通報装置非搭載)に乗っていた経験から、歩行者に気づかれにくいことは体験していた。だが問題になるとは考えていなかった。というのも、交通は歩行者優先。気づかなければ、ドライバーが待つべきだと考えたからだ。あるハイブリッドカーの開発エンジニアと、静かであることがメリットのクルマに車両接近通報装置のような音を出すような装置を付けるのはおかしいのでは?と議論したことがある。だが筆者はエンジニアの「ドライバーのなかには歩行者が気づくのを待てずに近くでホーンを鳴らす人もいる」という一言で納得した。ドライバーにマナーを守ることを呼びかけても、残念ながら守らない人がいるのも事実だからだ。

当時は日本自動車工業会と国土交通省がガイドラインを作ることで、ハイブリッドカーやEVに車両接近通報装置が付けられるようになった。こうした動きの背景には、視覚障がい者にクルマの接近を音で知らせることが重要ということもあった。その後、トヨタは10年8月、3代目プリウスに販売店で取り付け可能な「車両接近通報装置」を発売。これは当時のガイドラインに沿ったもので、EV走行時に約25km/hまで通報音を出すこととしていた。

車両接近通報装置は、世界基準となった



その後の世界中でハイブリッドカーが誕生し、EVの販売も増えたことで、日本と同様の問題に音を出すことが議論された。そこで日本のローカルルールとなっていた車両接近通報装置がベースになって、国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で国際基準が採択された。日本でも2016年に道路運送車両の保安基準が改正され、国際基準の車両接近通報装置が義務付けられた。じつはこれ、以前お伝えした「オートライト機能」の義務化と同時に改正されていた。

継続生産車は、20年10月8日から適用されることになり、今回のアウトランダーPHEVもこの基準に合わせたカタチ。以前はキャンセルボタンがあったが、新基準ではキャンセルボタンを付けることは許されず20km/hまででは音を出すことが必要となり、音量や周波数を変化させることも求められている。なぜ20km/以下かといえば、スピードが出るとタイヤなどから発生する走行音のほうが大きくなるためだ。

一部では車両接近通報の音がUFOを表現するときに使われる音に似ているなどといわれるが、各自動車メーカーは規定に沿って歩行者が気づきやすい音質を作っている。

〈文=丸山 誠〉

ドライバーWeb編集部

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