2020/11/02 ニュース

既納ユーザーにも無償で!マツダのスカイアクティブXがついにアップデート。どう進化した?

ハードウェアには変更なし



多くの自動車メーカーが研究、開発を行うもなかなか実現に至らなかった圧縮着火のガソリンエンジンを、SPCCIと名付けられた新しい燃焼方式により、ついに市販化へと導いた“究極の内燃エンジン”スカイアクティブX。その初めてのアップデートは「SPIRIT1.1」と名付けられた。

じつは今回の変更点はソフトウェアの刷新のみで、ハードウェアは従来と変わっていない。それでもスペックは最高出力が従来の180ps/6000rpmから190ps/6000rpmへ、そして最大トルクが224Nm/3000rpmから240Nm/4500rpmにまで高められているのだが、主眼としたのは数値的な性能よりも、操る歓びの深化だというのが開発陣の弁である。



具体的には、予測と制御の技術を緻密化することで、瞬発力と自在感を向上させたものだという。予測とは、狙いの燃焼を実現する技術の緻密化。各気筒毎の混合気の状態を、より高い精度で予測することで、より効率的な燃焼を実現した。そして制御とは、アクセルペダルの踏み方からドライバーの意図を読み取り、それに即した緻密な出力コントロールを行うということだ。

発進がさらにスムーズに。加速が小気味よく!


そう言っても、ちょっとわかりにくいかもしれない。ここからは走りの印象を交えながら解説していこう。試乗したのはAT、MTの両方。いずれも現行型に乗った後、SPIRIT1.1に乗り換えてチェックを行った。

まずAT仕様は、発進がスムーズになった。従来はアクセルをじわっと踏み込んでいきタイヤが転がり出す辺りで、わずかながら脈動感があったのだが、それが解消されて“スッ”と走り出すようになったのだ。

これ、きっとATのせいなのかなと思っていたのだが、聞けば実際にはスーパーチャージャーのクラッチの断続の際にトルク変動が起きていたのだという。「SPIRIT1.1」は、そのトルクの波をMハイブリッドの電気モーターのトルクで打ち消すことで微低速域の扱いやすさを高めている。これだけで印象は非常にいい。



低中回転域全般でもピックアップは良好。そして加速して行ってシフトアップする際にも以前より変速時間が短く、スパッと次のギアに切り替わるようになり、加速に小気味よさが出た。

じつは従来は全般にまだトルクが十分ではなく、短い時間で変速しても次のギアでトルクが追いつかず加速感が衰えてしまうため、あえて変速時間を長めに取っていたのだそうだ。「SPIRIT1.1」はトルクが全体に厚みを増したので、躊躇わず次のギアに切り替えるようになった。シフトダウンのときも、同様だという。しかもスペックに表れているとおり、高回転側の伸びもよくなっているから、加速感は明らかに爽快さを増しているのである。

率直に言って、従来のスカイアクティブXはATとの組み合わせだとポジティヴな面が味わいにくい感が否めなかった。それなりにエンジンを回せる場面ならいいが、Dレンジで一般道を走っているときには、基本的にはどんどん高いギアへシフトアップしてしまうためエンジンは低中回転域を多用することになり、するとそこではあまり旨味が出てこないという印象だったのだ。

「SPIRIT1.1」は、まさにその低中回転域のピックアップ、反応の正確さが大いに進化しているのが一番のポイント。おかげでATで、しかもふだん使いのなかででも、スカイアクティブXの美点をしっかり味わえるようになったのである。

ドライバーの意思により忠実なレスポンスを


続いてはMTを試す。従来もスカイアクティブXの美点をフルに味わえたと感じていたMTも、走りはさらに気持ちよさを増していた。

まず発進が、これまでよりも滑らかになった。前述したとおりMハイブリッドがトルク変動を打ち消してくれるだけでなく、エンジン回転数が下がり過ぎたときのアシストまで行ってくれるようになったおかげだ。

そしてアクセルペダルをスッと速めに踏み込んだときの加速の立ち上がりも鋭くなった。基本的には発進直後は高応答エアサプライ、いわゆるスーパーチャージャーは動いていないのだが、アクセルの踏み込みの速さからドライバーが素早く前に行きたいんだなと判断すると、通常よりも早い段階から高応答エアサプライが働いて、速やかに力が湧き出すようになっているのである。

これが冒頭に示した制御の緻密化。実際にはAT仕様にも同様の制御が盛り込まれており、つまりドライバーの意思により忠実なレスポンスを実現している。

スカイアクティブXの旨味である中高回転域のアクセル操作に対する正確な反応は、これまでと同様。いや、トルクの厚みが増したことで、さらにコントロールの余地が拡大しているし、加速の伸びもいいから、ますます回したくなるエンジンになった。

この進化を既納ユーザーに無償で!


ワインディングロードを走っていて、コーナーが奥で深くなってきたとき。アクセルペダルをじわっと戻していくと、まさに意図した通りにノーズが内側に入っていく。そんな場面での一体感は何度味わっても堪らないものだ。その歓びがATでもMTでもしっかり堪能できるようになり、しかも気持ちいい範囲が広がった。ますます走りの楽しいパワーユニットに進化していたのだ。



このスカイアクティブX「SPIRIT1.1」は、2021年初頭の商品改良で市場投入される予定である。その際には新たにフロントフェンダーに「SKYACTIV X」の、そしてリアに「e SKYACTIV X」のマークがそれぞれ入れられることになる。

そして何と、マツダは既存のスカイアクティブX搭載車両のユーザーのために、この「SPIRIT1.1」を無償アップデートとして提供する予定だという! そこにあるのは、この新しい技術に注目し、率先して手に入れてくれた最初のユーザーへの感謝。そして、ユーザーと一緒にこの“究極の内燃エンジン”を育てていきたいという謙虚な思いなのである。

〈文=島下泰久〉

ドライバーWeb編集部

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