2020/10/27 コラム

むむ?光電管式の移動式オービスの目撃情報をマニアックに検討してみたら…

「レーザーもレーダーも出さない光電管式を目撃」の真偽


「最強の移動式オービス登場か?レーザーもレーダーも出さない光電管を用いた移動式オービス 光電管とカメラにより探知は不可能!」と2020年9月25日付けで有限会社パソヤがプレスリリースを発行した(https://www.atpress.ne.jp/news/227615)。記事中に「新たにレーザーもレーダーも出さない光電管を用いた移動式オービスが目撃されました」とある。


●パソヤのプレスリリースより

「光電管を用いた…」とは光電式の測定機をいうのだろう。「移動式オービス」については、ネット上では可搬式オービスがそう呼ばれることが多いようだ。スウェーデンを本社とする世界的企業、Sensys Gatso Group(以下、センシス)の可搬式が(固定式も)、超高性能なトラッキングレーダー式をあえて光電式に変更する理由はまったくないはず。一方、東京航空計器(以下、TKK)の可搬式、LSM-300の測定方法は本邦初のスキャンレーザー式(以下、レーザー式)だ。入札に関する文書やデータや報道等々からするに、どうもレーザー式は使い物にならないようだと私は見ている。そこでTKKは、LSM-300の測定方法を光電式に変更した? マジですか?


●警察庁の文書より。可搬式のうち左側がセンシスのMSSS(Mobile Speed Safety System)。右側がTKKのLSM-300だ。ネットでは可搬式を「移動式オービス」「移動オービス」と呼ぶことが多いようだ 

しかし、記事を何度読んでも、光電式の「目撃」に相当する部分がない。書き忘れたのだろうか。ひとつだけ気になるのは、「Aさん」が「380」という数字をはっきり覚えているという点だ。記事に言及はないが、この世界で「380」といえば日本無線の光電式測定機、JEM-380だ。ただ、「Aさん」が言う写真の角度はLSM-300のものではない。TKKの従来型の固定式オービス(ループコイル式)の角度かと思われる。ループコイル式をヤメて光電式に変更した、または変更しようとしている? うーん、それはちょっと考えられない。なぜなら、裁判所はループコイル式は絶対に信頼できると頭から信じ込んじゃってるからだ。


●日本無線の光電式車両走行速度測定装置、JEM-380の取扱説明書。中身は86ページもある

「Aさん」は呼び出されて取調べを受け、違反切符を渡されなかったという。もし青切符(首都高速では超過40km/h未満)だったら、違反者に交付しないのは違法だ。赤切符(同超過40km/h以上)なら不交付は違法じゃない。赤切符は、略式による罰金処理のための書面といえる。

そして、私が東京簡裁、地裁、高裁で速度違反の裁判を400件以上傍聴してきたところによれば、首都高速の速度違反で公判請求(正式な裁判への起訴)をされ、罰金刑ではなく懲役刑を求刑されるのは、すべて超過速度が80km/h以上だ。

「Aさん」は「自己紹介のような身辺供述書?も作成」されたという。それは身上調書かと思われる。身上調書は、いわゆる正式な裁判に「乙1号証」として必ず出てくる。以上からするに、「Aさん」の超過速度は80km/h以上で公判請求をされるのかなと、記事を素直に読めばそう推測できる。

問題は、「高速道路の上にある橋(公園)」からの物々しい動画撮影である。いったい何なのか。オービスに関係があるとすれば、こんな大胆な仮説が思いつく。すなわち、「Aさん」よりもっと前に別の運転者がそこの固定式オービスにより取り締まりを受けた。その運転者は測定値を否認し、自車のドライブレコーダーの録画を証拠に無罪を主張した。今どきドラレコは、いわゆるあおり運転の立証に欠かせない重要な証拠だ。速度違反でだけ無視はできない。なので警視庁か東京地検が、オービスの信頼性を立証するために物々しい動画撮影をした。そこにたまたま「Aさん」が遭遇した…。

いや、結局はよく分からない。私は以前、全国の運転者諸氏から交通取り締まりについて多数のご報告、ご相談をいただいていた。エクセルの表に入力したものだけで4200件ほどになる。痛感したのは、取り締まりや取り調べについて普通の人は、じつは重要なことを見落としていたり、何かを勘違いで思い込んでしまったり、それは普通によくあるってことだ。記事に載った「Aさん」の話だけをもとに何かを断定的に言うことはできない。

ちなみに、光電式の可搬式オービスが登場する可能性については、それはないだろうと私は考える。日本無線の光電式の場合でいうと、3m間隔で路側にレーザー光の送受光器を2つ、センターラインのところに小型反射器を2つ設置、2本の光路をつくる。1本目と2本目の光路を走行車両がさえぎる時間差から速度を計算する。光電式は設置に手間がかかる。


●JEM-380の取説より。このように2本の光路をつくり、走行車両が光路を順にさえぎる時間差から速度を計算する

そもそも可搬式は、駐車違反と同じく将来は速度違反の取り締まりも民間委託することを想定しているはず。駐車監視員ならぬ速度監視員に使わせるのである。そのためには、可搬式は設置も操作もシンプルでなければならない。光電式は向かない。

そんなことより、上記大胆な仮説がもしも当たりだったら大変だ! 刑事裁判か民事裁判か分からないが、オービスとドラレコとの対決、是非とも傍聴したい。というか、私がいちばん傍聴したいのはLSM-300の測定値を否認する裁判だ。北海道でも沖縄でも頑張って傍聴に行きますぞ。情報をお寄せいただきたい!

〈文=今井亮一〉
交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を発行。

ドライバーWeb編集部

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