2020/10/27 カー用品

【さっそく試した!】まさかのグランエース用サスチューニング。極太ロッドを専用開発したTEINのもくろみとは?|エンデュラプロ プラス|

ちょうど1年前の今ごろ話題になっていたのが、東京モーターショー2019に出展されたトヨタのフルサイズワゴン「グランエース」。海外では「グランビア」としてひと足先にデビューしていたが、国内でのターゲットは高級ホテルの送迎車やエグゼクティブ向けのショーファードリブン、ハイヤーなど。東京2020オリンピックの大会関係者の送迎車にも使われる予定で、コロナ禍で延期されなければ都内のあちこちで見かけたはずなのだが……。
 

グランエースンデュラプロ_プラス

アル/ヴェルよりも大きく重いグランエース用サスを開発

コンセプト的に重なる部分の多いアルファード/ヴェルファイアと車両サイズを比較すると、全長+355mm、全幅+120mm、全高+55mmとふた回り以上大きく、車重も6人乗りのプレミアムで2740kgと超ヘビー級(アルファードはもっとも重い2.5Lハイブリッド4WDのエグゼクティブラウンジ7人乗りで2240kg)。取りまわしやランニングコスト、駐車場の確保も含めてパーソナルユースには不向きだが、テインからグランエース用のショックアブソーバー「エンデュラプロ プラス」がリリースされた。さすがは国産車向けのサスペンションを漏れなくラインアップする同社らしい。

グランエースンデュラプロ プラス フロント

グランエースンデュラプロ プラス リヤ用
 

世界戦略製品を積極投入する理由

エンデュラプロ/エンデュラプロ プラスのコンセプトは「プレミアムリプレイスメント」。純正品よりもワンランク上の乗り味と操縦安定性を目指したテインの世界戦略製品という位置付けで、グローバル市場での純正アップグレード/エンハンスメント(改良・強化)ニーズに応える製品だ。インフラが整っていない新興国の劣悪な路面コンディションでは、ショックアブソーバーはタイヤと同じ「消耗品」であり、ショックとタイヤの交換サイクルが同じという地域もある。そこで、エンデュラプロシリーズは純正ショック比約2倍のロングライフを目指して開発された。
 
具体的には、純正より太いシェルケースを採用し、オイル容量を増やして耐久性を向上させるとともに、長期に渡って安定した減衰力性能を発揮する……のだが、グランエース向けには新規にプラットフォームを立ち上げた。


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グランエースンデュラプロ プラス 純正との比較

乗用車ではあり得ない!?
直径30mmのピストンロッドを新開発

というのも、グランエースの純正ショックアブソーバーに使われているピストンロッドはφ28mmと太く(テインの従来のプラットフォームだと、ストラット式のピストンロッド径はφ22~25mmが多い)、純正以上の強度を持たせるためにはより太いピストンロッドと、それに合わせた関連部品(シェルケースやベースバルブなど)を新規に起こす必要があったのだ。
 
グランエース用エンデュラプロ プラスに採用されたピストンロッドは、テイン最大のφ30mm。わざわざコストを費やしてプラットフォームを立ち上げた理由は、次期型ハイエースなどトヨタから今後発売されるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)の商用車や、重量級のSUVなどにグランエースの足まわりが使われると想定しているから。ノウハウの蓄積も兼ねた先行開発の意味合いが強い。
 
 

ゆるふわ感や突き上げ感の改善し、イヤミのない乗り心地に

グランエースのサス形式は、フロントがストラット式なのに対し、リヤは古式ゆかしい(!?) リジッドアクスル式。海外仕様の板ばねからコイルばねに改められ、周波数感応式の減衰力可変ショックを組み合わせているが、コンフォート性能を意識し過ぎたのか、低速でのふわついた動きや、高耐荷重の貨物用LTタイヤ特有の“アタリの硬さ”が気になる。速度を上げていくと直進安定性が心許ない。
 
テインではこうした純正サスのキャラクターを踏まえて、エンデュラプロ プラスのテストでは乗車人数や積載量を変えながら、さまざまなシチュエーションを想定してセッティングを煮詰めた。特に重視したのが後席の乗り心地で、6~4人乗車+人数分の荷物をラゲッジスペースに積み込んだ状態でベストな乗り心地が得られるという。
 
グランエースンデュラプロ プラス 2列目


2列目以降の乗り心地が格段によくなる

試乗時は筆者を含めた大人3人乗車+撮影機材を積載。運転席と2列目、3列目にそれぞれ座ってみたが、リヤタイヤの真上にシートがあり条件的にはもっとも厳しいと思われる3列目でも、段差を乗り越えた際の突き上げやピッチングが抑え込まれ、コーナリングでも左右に体が揺さぶられることがなかった。

グランエースンデュラプロ プラス 3列目
 
強い衝撃を独自のバルブ機構で熱エネルギーに変換することで吸収し、フルバンプ時は減衰力を高めて挙動を落ち着かせるH.B.S.(ハイドロ・バンプ・ストッパー)の効果も大きいようだ。これでLTタイヤからミニバン用のコンフォートタイヤに履き替えたら、よりしなやかな乗り味になるはずだ。

グランエースンデュラプロ プラス 高速道路走行 


高速走行時のふらつきも抑えるセッティング

高速走行では横風が強く吹きつける、重心の高いグランエースには不利な条件。このような刻々と変化する走行条件に合わせてセッティングを変えられるのが、16段の伸/縮同時減衰力調整機構だ。試乗車両には車内からショックの減衰力調整を遠隔操作できる「EDFCアクティブプロ」を装着しており、減衰力をハード方向に振ってみると、ふらついた動きがなくなり、直進安定性が高まった。
 

EDFC アクティブ プロ

EDFCを同時装着する価値アリ

せっかくの減衰力調整機構を“宝の持ち腐れ”にしないためにも、EDFCアクティブプロはセットで装着したい。任意の減衰力に設定できるのはもちろん、前後G、横G、速度に応じて4輪それぞれの減衰力をフルオートで調整してくれるので、走行シーンに合わせた乗り心地とハンドリングが得られる。
 
エンデュラプロ プラスは車高調整機構を持たない純正形状のショックアブソーバーで、スプリングとアッパーマウントは純正品をそのまま使うので価格もリーズナブル。グランエース用はフロント3万800円、リヤ1万7600円(各1本)なので、「車高は純正のままで、乗り心地やハンドリングのみを改善したい」という人にうってつけ。純正ショックがヘタってきたタイミングで交換するのもオススメだ。
 
グランエース エンデュラプロ プラス
 

[グランエース用エンデュラプロ プラス製品概要]

■スペック
・複筒式構造の純正形状ショックアブソーバー
・H.B.S.(ハイドロバンプストッパー)を搭載
・アッパーマウントは純正を使用
・3年または6万kmの製品保証
・16段伸/縮同時減衰力調整機構
 
■スプリング
・純正スプリングを使用
 
■基準車高
・純正車高同等
 
■車高調整範囲
・車高調整不可
 
■価格(1本)
・フロント:3万800円
・リヤ:1万7600円
・1台分合計:9万6800円

■発売
・2020年10月下旬
 
■EDFCアクティブプロ ( )内は価格
・コントローラーキット(5万7200円)
・モーターキット(1万7050円)
・【オプション】GPSキット:EDK07-P8022(7260円)
 
 

[デモカーデータ]

■トヨタ グランエース プレミアム(2.8L・FR、型式:GDH303W)
■足まわり:TEIN「EnduraPro PLUS」
■ホイール:ENKEI「WPS GranV」17×7J インセット45
■タイヤ:純正装着品(DUNLOP デュラビスR660A 235/60R17 109/107T LT)
 
 
 
 
〈文=湯目由明 写真=岡 拓〉

ドライバーWeb編集部

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