2020/10/19 ニュース

旧タカタ、シートベルトのデータを改ざんか。大規模リコールの可能性

ニュースを聞いて「まさか、またか」とつい言葉を発してしまった。

エアバッグのリコール問題で会社が倒産してしまった、あのタカタがまた大きな問題になっている。タカタはエアバッグの問題発覚後にジョイソン・セイフティ・システムズ(JSS)に買収され、いまでもシートベルトなどの製造を行っているのだが、そのベルトのテストデータに不正があったのではと報道されているのだ。クルマのパッシブセーフティの根幹であるシートベルトの強度や耐久性に問題があるとすれば、ユーザーにとって一大事。なにしろ旧タカタ製のシートベルトは幅広いメーカーで採用されているから、超大規模なリコールに発展する可能性がある。

現在問題となっているジョイソン・セイフティ・システムズは、アメリカのミシガン州アーバンヒルズに本社を置く、Ningbo Joyson Electronic Corporationの子会社で、安全部品の大手サプライヤーだ。この不正疑惑について同社はプレスリリースを発表している。

「Joyson Safety Systems(JSS)は、日本の彦根市のウェビング製造施設で、不正確さを報告するベルトウェビングテストデータの調査を行っています。報告の問題は、2018年4月にタカタから工場を買収するずっと前に発生しました。

JSSは現在、20年間にわたって、テストごとおよび製品ごとに利用可能な関連データを確認しています。これは、かなりの作業です。調査は進行中であり、JSSは原因を特定し、適切な是正措置を講じるために緊急に問題を明らかにすることに焦点を当てています。これまでのところ、JSSは、調査中の期間中に関連するフィールドの問題を特定していません。

JSS製品の安全性と品質は私たちの最優先事項です。JSSは、彦根で製造されたウェビングを含む組立製品を購入した可能性のあるOEM顧客に通知しました。JSSは関連する規制当局にも通知しています」

このプレスリリースから読み取れるのは、買収前のタカタの時代から不正が行われていた可能性があり、20年間分のシートベルトのテストデータを現在検証しているということ。OEM顧客は自動メーカーのことですでに問題を通知済みで、クルマを所管する国土交通省にも通知済みということだ。どのようなテストデータの不正があったのか現時点でははっきりしないが、基準を満たしていない製品がリリースされていたとなれば問題は大きい。

クルマを構成する部品点数は2万点とも3万点ともいわれ、ボルトやファスナーなどまで含めれば10万点ほどの膨大なパーツによって作り上げられている。そのためパーツ1つでも道路車両運送法や道路交通法などの基準などを満たしていなければリコールになる。安全にクルマを使い続けるためにリコールは必要不可欠な枠組みになっているのだ。リコールに発展する問題なのか判断できないが、エアバッグの欠陥からリコールまでの当時のタカタの対応を見ると、シートベルトも疑わしくなってしまうのは当然だろう。ただし、シートベルトとしての機能は自動車メーカーの衝突試験などで新品時での安全性は確認されているはずで、型式指定のための資料にもこうした試験結果が載っているから、すぐに衝突安全性を左右する問題ではないだろう。ただ耐久性についてのテストが改ざんされて保安基準に不適合となると、大規模なリコールに発展する可能性もある。

このようなリコールを見ると、三菱の燃費試験における不正行為が思い出される。2016年に発覚した三菱製の軽自動車の燃費不正によって、国交省が計測方法を各自動車メーカーに調査報告を求めたところスズキにも不正があったことがわかった。これによって道路運送車両法に基づく省令の一部改正にまで発展し、型式指定申請で不正行為を行ったメーカー等に対して不正行為の再発を防止するための措置が明確化された。今回の件は、衝突安全という「命」にかかわる事案だけに国交省はもちろん、各自動車メーカーも早急な対応が不可欠だ。

〈文=丸山 誠〉

ドライバーWeb編集部

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