2020/10/14 ニュース

メリットあるの?ゴールド免許所持者の免許更新オンライン講習。免許証とマイナンバーカード一体化で何が起きる?

免許行政は警察のドル箱



菅政権が誕生して約1カ月。新内閣の一丁目一番地の政策のひとつがデジタル化による縦割り行政の打破だ。携帯電話料金の引き下げに続いて飛び出してきた政策のひとつが、運転免許証のデジタル化だった。

9月末にマスコミが一斉に報道したのが「ゴールド免許所持者の免許更新オンライン講習」というもの。交通違反などがないゴールド免許を有する運転者の特典として免許更新での負担を軽減してあげましょうという、いかにもいいように聞こえる行政改革だが、これは警察庁が政権に追い込まれて苦渋の決断をしたのではないだろうか。免許行政は警察のドル箱であって、警察権力を幅広く維持するために必要不可欠の権益といえる。

ご存じのように警察(各都道府県の公安委員会)は、免許更新業務などを免許センターに委託している。警察署でも更新ができるが、更新業務の一部は全日本交通安全協会などが関係していて、この各都道府県の交通安全協会は警察の重要な天下り組織。免許更新の業務が縮小されるとなると天下りできる人数が減少してしまうわけだ。ここで警察庁が「オンライン講習」を打ち出すことで菅政権のデジタル化推進の嵐をしのごうと考えたはずだ。最小限の権益縮小で、おいしい免許行政の権益を守ろうと考えたわけだ。

だが、このオンライン講習も中身を見るとドライバーの負担軽減、行政改革にはまったくなっていない。オンライン化は講習だけで、免許更新自体はそのまま。結局免許センターや警察署に足を運ぶことになる。メリットは、ゴールド免許の人の更新時の待ち時間が短縮できるぐらいか。更新料の引き下げや、講習時の交通教本の「セット販売」も、きっと見直されることはないだろう。オンラインで講習を受けても、全日本交通安全協会の重要な収益源である交通教本は買わされるはずだ。

運転免許証とマイナンバーカードが一体化で何が起きる?

この原稿を書いていると衝撃的なニュースが飛び込んできた。TBS系列のJNNニュースの独自取材で、「運転免許証システム統一、全国での発行・更新が可能に」というものだ。JNNの報道によると、2020年から運転免許証の管理システムを順次全国一元化すると同時に、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を進めるという。これまでもマイナンバーカードと運転免許証の一体化はウワサになっていたが、警察庁や警察庁関係の議員の強力な反対で雲散霧消したと思っていた。

このような報道が流れたのは、警察庁がコールド免許のオンライン講習だけでは権益を守り切れないと判断したのだろう。ここで注意したいのは霞が関の官僚は、改革となると身を切るどころか焼け太りすることをつねに狙っていること。マイナンバーカードと一体というところが今回のポイントで、現在マイナンバーカードは各自治体の役所のみで発行されている。一体化することで、この発行業務を警察や免許センターでも行えるようにするらしいのだ。

まだ報道されただけで警察庁がこの案を飲むか定かではないが、首を縦に振る可能性は十分にある。菅政権のデジタル化に寄り添う姿勢を見せつつ、権益を拡大しようという霞が関らしいマジックだ。行革担当の河野大臣やデジタル化を推進する平井大臣も、こうした流れを加速させるだろう。すでに、このキーマン2人と小此木国家公安委員長が会談して、運転免許証とマイナンバーの一体化について方針を確認するらしい。

モータージャーナリストとしては、菅内閣にこの運転免許行政の大改革に合わせて免許更新料の廃止と交通安全協会などが発行する講習本のセット販売の廃止、70歳の高齢ドライバーになるまで免許更新不要を訴えたい。高齢ドライバーには一定のチェックが必要だが、それまでは更新は必要ない。現在の道路交通法でも体に不調があるときは運転できないと定められているからだ。

今後も運転免許証の改革に関係する動きから目が離せない。警察庁最大クラスの権益である運転免許行政が、本当にドライバーのために改革されれば菅内閣の行革のひとつが成功したことになる。だが、心配なのは内閣官房副長官の杉田和博氏の存在。事務方トップで官僚出身、しかも警察庁出身。警察庁が焼け太りして、そのつけを運転免許所有者に回すのだけはやめてもらいたい。

※地番表示が霞が関、霞ヶ関は駅などの表示のため霞が関に統一しました。

〈文=丸山 誠〉

ドライバーWeb編集部

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