2020/10/14 コラム

どんなクルマでも簡単に操る!? 運転代行に見たプロドライバーの本質|木下隆之の初耳・地獄耳|

飲酒運転は絶対に厳禁である。アルコールを1滴でも口にしたら、絶対に運転をしてはならない。たとえアルコールの分解酵素が多く、酒に酔わないとあらぬ自信があっても、飲酒運転をしてはならない。だけど、酒は好きである。酒宴も大好きである。という御仁も少なくないだろう。

かく言う僕も同様で、酒は浴びるほど、嗜む(笑)。酒宴の誘いは絶対に断らないタイプである。

一方で、ふだんから公共交通機関を使うことがない。東京から鈴鹿サーキットや菅生サーキットなどという、一般的には長距離とされている移動もクルマである。電車に乗ることは稀だ。路線バスを乗った記憶はもうない。東京近郊の移動は99%、クルマなのである。なのに酒宴を断ることがないのだから困ったものだ。つまり、酒と運転という水と油を同時に好んでいるのだ。だからこそ、代行運転の世話になることも少なくない。

代行業者は必ず、1台に2名でやってくる。そのうちの1人が依頼者である自分のマイカーに乗り込みステアリングを握る。助手席にはベロベロに酔った自分が座るわけだ。そしてもう1台の、随伴車と呼ばれるクルマが追走、僕を送り届けた後、また2人は随伴車で帰っていくというわけである。

そこでいつも感心するのは、代行の運転手はなかなかクルマの操作に長けていることだ。運転そのものはちょっと手荒なタイプが多いけれど、初見であるはずなのに、操作系を熟知しているようなのだ。

最近のクルマは、メーカーによってスタータースイッチやシフトレバーや、あるいはパーキングブレーキレバーなどがさまざま配置されている。レバーがないことも少なくなく、そればかりかドライバーシートに座っただけでスタンバイ完了のモデルもある。そんな操作系バラバラのクルマをひょいっと扱う様子には、感心してしまうのである。

ちなみに、マイカーを運転するドライバーは、「客を乗せる」ということで二種免許が必要だという。随伴車のドライバーは、普通免許を所持していれば特殊な資格は必要ない。バイト君でもいいのである。なるほど、な感じもする。

先日のこと。友人が所有する買ったばかりの輸入車で酒宴に行き、帰りに代行を呼ぶことになった。購入したのはハイテクバリバリの高級車であり、いかにも最新のモデルらしく、スタータースイッチはコンソールの厄介なところに組み込まれているし、シフト操作も複雑である。床からニョッキリ生えたシフトレバーを操作すれば発進するわけではない。まして、バックの操作などはちょっと頭を悩ませる。だというのに、代行のドライバーはスマートな身のこなしてドライビングポジションをアジャストすると、颯爽と走り出したのである。

「運転、慣れてますね」
「まあ、長いっすから」

ちょっと茶髪の、いかにもなチャラいドライバーは、ちょっと自慢気にそういった。お笑い芸人のEXITをイメージしてもらえば当たらずとも遠からず。

「どんなクルマでも乗れるんですか?」
「まあ、結構乗ってっすから」
「フェラーリとかも?」
「それはないっすね」
「ポルシェとかは?」
「それもないっすね」
「高級車は乗らない」
「乗らないっすね」

襟元の後毛を気にしながら、かったるそうに答える。

「それにしては、操作に慣れてますね」
「そっすか? たいがいどこかにスイッチ、ありますから。アクセルの位置、変わんないし・・・」
「操作に戸惑うことはあるの?」
「ないっすね。クルマなんて、誰でも運転できるように作られてるっすから。じゃないとヤバイっしょ」

なんか茶髪のお兄ちゃんに、プロドライバーの本質を見たような気がした(笑)

〈文=木下隆之〉

ドライバーWeb編集部

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