2020/10/12 コラム

池袋踏み間違い暴走事故、似た裁判ではどんな判決が?

飯塚被告人の主張が通る可能はゼロだろう



「元院長が無罪主張 母子死亡の池袋暴走事故―過失運転致死傷・東京地裁」と10月8日付け時事通信。旧通産省工業技術院の飯塚幸三・元院長(当時87歳)運転のトヨタ プリウスが暴走、青信号の横断歩道を自転車で横断中の母娘を死亡させ、他の通行人ら9人に重軽傷を負わせたという重大事故の、第1回公判が東京地裁であったのだ。全メディアが大報道した。



私は傍聴に行かなかった。”コロナ・ディスタンス”で傍聴席数は3分の1ほどに制限されている。司法記者クラブが、横並びの要点報道しかしないのに10数席を取る。被害者、遺族の方々の特別傍聴席もだいぶあるだろう。残りが傍聴券抽選となり、例によってメディアに雇われた“並び屋さん”が押し寄せるはず。私が傍聴できる可能性は非常に小さい。そのうえ、当日は雑誌原稿の締め切りで切羽詰まっていた。なので裁判所へ行かなかった。申し訳ない。

時事通信によれば飯塚幸三被告人(※)は被害者、遺族に詫びたものの、罪状認否で「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶している。車に何らかの異常が生じ、暴走した」と過失を否認。弁護人は無罪を主張したという。私は傍聴はしなかったが、裁判傍聴マニアでもあり事件数で8800件ほど傍聴してきた立場から、少し述べさせてもらいたい。 ※民事裁判は「原告vs被告」、刑事裁判は「検察官vs被告人」だ。

飯塚被告人の主張が通る可能性はゼロだと私は思う。ゼロでも、被告人がそのように主張するなら、法律手続きにのせて争うのが弁護人の仕事といえる。説得して否認を引っ込めさせたら、あとで大問題になりかねない。「この被告人、悪あがきしているだけじゃないか。なのに何期日もかけて証人を何人も呼び、結局は有罪。裁判って馬鹿ばかしいなぁ」と思うことはよくある。しかし、犯罪傾向のある人は何でも自分に都合よくねじ曲げて考えがちだ。「ねじ曲げは通らない。悪あがきは無駄だ」と思い知らせてやることも必要なのかもしれない。

弁護人はともかく、本件被告人の周囲にこうアドバイスする者がいなかったのかなと私は思う。すなわち、「これこれの理由で、あなたがアクセルを踏み間違えたとしか考えられません。どう争っても無罪はムリ、遺族らの気持ちをさらに傷つけ、国中から憎まれ、あなたの晩節を最悪にするだけです。争えば100万、200万円の弁護士費用がかかります。争わず、そのお金を寄付しましょうよ」と。アドバイスする者がいなかったか、いたけれども被告人は高齢ゆえの頑なさで耳を貸さなかったか、あるいはもしかして本当にプリウスが勝手に暴走したのか…。

踏み間違い事故の裁判を私は過去に何件か傍聴してきた。うち1件、高齢女性を被告人とする裁判を『driver』本誌で以前レポートした。今回、少し加筆などしてここに再掲しよう。

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING