とある日の朝、愛車のエンジンを掛けようとしたマッドドッグ三好ことラリードライバー三好秀昌。
「カチッ」。あれ? セルが回らない。バッテリー上がりだ!
そんな緊急事態に三好が考えた奇策とは?
バッテリー上がりは突然に
driver誌の試乗取材の前日、連載企画の動物を探しがてら移動し、取材場所の近くで1泊するのもGoToキャンペーンの時期だからいいな!と思い計画を立てた。
そしてクルマに乗り込みキーを回す。
「カチッ、チッ、チッ」
いやーな音がしましたよ~。これはバッテリーがお亡くなりになってアウトの予感。さてどうしよう?
仕方がない、仲間を呼んでブースターケーブルを繋いで掛けてもらうか!と思ったが、それではその場しのぎすぎる。野生動物を探すのは山の中であって、そこでまたエンジンが掛からなかったら野宿を強いられてしまう。ではどーする。
一番いいのは充電してみることだけど、時間はかかるし、バッテリーがダメだったら充電さえできない。
それでもひとまず100Vのバッテリーチャージャーを繋いでみるとすぐにエンジンは掛かったが、最初につないだときに表示された電圧が10Vぐらいしかなかった。もうバッテリーがダメなのだろう。
ちなみにこのバッテリーチャージャーはバッテリーに負担を掛けずにノンビリと2Aぐらいで充電することもできるし、15Aかけて一気に急速充電もできる優れもの。
というわけでエンジンが掛かってしまえば、走り続けられそう。オルタネーターなどの発電系のトラブルではなさそうだ。じゃあ、自転車でカー用品屋さんにバッテリーを買いに行くか、と思ったが、ウチのシトロエンDS4はバッテリーがエンジンルームの奥に押し込まれていて、交換するのに時間がかかりそう。
では買ったバッテリーとブースターケーブルを積んで移動していけば、いつでもエンジンは掛けられる。
よしそれだ!と思ったが、カー用品店はバッテリーの交換工賃は安いが、バッテリーは割高なのだ。一因は最上級レベルのバッテリーを扱っているということもある。
インターネットで探すと、安いグレードのバッテリーは確かに安い。半分から1/3の価格だ。
今から頼んでも、すぐに手に入るわけではない。それではアウトだ。さてどーする。
まずバッテリーチャージャーでエンジンを掛けた後に、バッテリーチャージャーと100V用の延長コード、ブースターケーブルをクルマに積み込んだ。
そしてオイラはカー用品店に向かった。そこで探したのはジャンプスターターと呼ばれるモバイルバッテリーのような簡易バッテリー。これは約1万円だった。
ジャンプスターターは本当に使えるのか?
こんなもので用は足りるのかと、やや不安はあったが、まずは試してみる。ダメだとしても、カー用品店にはブースターケーブルを繋いで助けてもらえそうなクルマがたくさんいる。
しかし、だ。カー用品店ではなぜか一瞬、セルが回ってエンジンは掛かってしまった。なのでジャンプスターターを試せないまま移動開始。
ジャンプスターターを箱から出してみた。充電状態を見ると75%ぐらい。シガーソケットで充電しながら移動を続ける。山の中の撮影場所に着いても、エンジンを掛けたままにしてしばらくジャンプスターターを充電した。
さすがに躊躇なくエンジンを切る勇気がなくてしばらく自問自答。
えーい!切っちゃえ!
どーしてもダメだったらJAFがあるじゃないか!!
エンジンを止めた、でもやっぱり不安なのでもう一度セルを回してみた、するとエンジンは掛かる!
うーん、エンジンが温まってるから、一瞬セルが回ると掛かる。少しバッテリーも充電されたのか?
いくらか気持ちが大きくなったので、撮影準備をして山に入る。
でも、お目当ての動物は今日も見つからず、そこいらに生えてるキノコを撮影し、ほとんどキノコカメラマン状態で3時間後にクルマに戻った。
さてさて、ドキドキだ~。キーを回す。
カチッ、、、、、、、、、、、
再びお亡くなりになってました。さー、ここから心臓バクバクの大実験。ドキドキが止まらない!
説明書を読みながら、ジャンプスターターをセットアップした。
「セルを3秒以上回すな」
「2回以上行うな」
という注意書き。失敗したら地獄へ行けそうなステッカーが目に入る。
そしてバッテリーにジャンプスターターを繋いで…キーを回す!
「キュルル、ブッワーン!」
無事エンジンが掛かった~。
ということで予定どおり、翌日の取材場所に近くまで移動完了。
翌朝はそこそこ冷え込みそうなので念のため、泊まったホテルでは駐車場に一番近い、コンセントがある場所にパーキング。
そして翌朝。
気温11度。寒い、冷えてる。
さてどーだろ?
バッテリーはカラカラでセルはうんともすんとも言わない。
そこでジャンプスターター再び登場。
セットアップ!
「キュルルル、ブッワーン!」
警告の2秒以内にエンジン始動した。
ジャンプスターターのバッテリーの表示を見ると、1回使ってもまだ75%ぐらい残量がある。まだまだ行けそうだし、この後は取材場所に向かうので、そこならエンジンを掛ける方法はいくらでもあるから安心だ。で、取材も無事に終えて家に帰ってこれた。オイラの作戦勝ちだ!!
落ち着いたので、バッテリー交換
そして翌日。「ピンポーン」。宅急便でバッテリーが届いた!
しかし外は小雨。さてどーする。天気予報を見ると、台風が近づいて来てるから明日、明後日とどんどん雨はひどくなる。明後日なんて豪雨と書いてある。やるなら今しかない!
カッパを着て、いざバッテリー交換敢行。プラス端子って工具なしで小さなレバーを押し上げると外れちゃうんでビックリ。
そしてエアークリーナーを半分外さないとバッテリーは引っ張り出せないのだが、これが知恵の輪。樹脂パーツは爪やクリップで挟まっているだけなのでどこがどうなっているかわかりづらいのだ。
強引に引っ張って欠けたら終わり。懐中電灯を照らして構造をよく見ながら慎重に進める。
そして装着完了。
キーオン!セルを回してエンジン一発始動!!
やったぜ。
後からバッテリーの説明書を見てたらベントプラグが云々書いてある。あれ?確認してなかったな。バッテリーの奥の方は見えないぞ。うーん、晴れてからゆっくりチェックすることにしよう。
説明書は最初に読みましょう!!
というオチまであったバッテリー上がり顛末記。
〈文と写真=三好秀昌〉