2020/09/23 コラム

特別天然記念物を接写!「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第9回〜オオサンショウウオ」

ドライバー3月号(2020年1月20日発売号)からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国を最新SUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第9回は、その独特な外見と大柄な体躯(たいく)が強烈な存在感を醸し出す国の特別天然記念物『オオサンショウウオ』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。

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目の前に現れた“川の主”に思わず腰を抜かす

本誌の原稿に書いたように、ほんの軽い気持ちで様子を見に行ったらビンゴ!というたぐいまれなる大慶(←“大きな喜び”って意味ね)。まあこんな大げさな言葉を使いたいほど驚き、うれしかったわけ。


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暗くなって数時間、山の中での野良猫の相手にも飽き、あてもなく増水した川の中を懐中電灯で照らす、という行為にも嫌気がさし、現実逃避的に「オイラがオオサンショウウオだったら、こんな流れの日は川の流れに逆らうのは疲れるから、広くて浅い穏やかなところの岩陰に入ってノンビリするよな~」などと半分ヤケクソの感情移入しているときに岩陰を見たら小魚がいた。
何でもいいからシャッターを切ってストレス発散、と小魚を写していて、ふと左のほうをライトで照らして腰が抜けた!

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オオサンショウウオがその小魚たちを狙って隠れてた。
生まれて初めて見るこやつには、形とデカさで度肝を抜かれる。70~80cmサイズの両生類は言い知れぬ不気味さを醸し出し、畏敬の念すら感じる。

いわゆる“川の主”ですな。川の中ではオイラより偉いわけです。腰を抜かしてる場合じゃなくて、降臨に感謝である。
国の特別天然記念物で、巨大なのは1mを超えるらしい。今回見たのも70cmぐらいだと思うのだが、川の中で出くわす生き物としては強烈な存在感!!

両生類なので肺呼吸と皮膚呼吸をするらしく、じーっと見てると50分ぐらいごとに浮上してきて思いっきり深呼吸らしきものをする。泡の出方は鼻ちょうちんにしか見えないけどね。
 
不思議なのは前足の指は4本なのに、後ろ足の指は5本。
まあ人間が勝手に不思議だと思ってるだけで、オオサンショウウオにしてみればよけいなお世話で、ほっといてくれってなもんだろう。

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よく見ると小さな目玉が横のほうに付いていて、じつにとぼけたようなかわいい顔をしている。

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しかし、目の前に来た生き物を図体からは想像もできないスピードで一気にかみつき、食ってしまうというスゴさもある。
このとぼけた顔にだまされて目の前に手を出すのは危険なのだ。

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しかしまあ、夜の川で目の前にこの造形が突然浮き上がってきたら正体不明で驚きますね。




「撮影裏話&テクニック」

水中ではコンデジ、水上では一眼レフ

ずーっと水中にいると思っていたので、コンパクトデジタルカメラ用ウオータープルーフケースを手に入れ、準備だけはしていた。Canon PowerShot G7 X MarkⅡはコンデジながらRAWデータで撮影ができるので、ライトやストロボで色温度がグチャグチャになった写真も後から修正しやすいのが便利だ。


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[撮影データ]

機材:Canon PowerShot G7 X MarkⅡ
防水ケース:ウオータープルーフケース WP-DC55
レンズ:8.8-36.8mm F1.8-2.8
ストロボ:内蔵ストロボ+水中ライト
撮影モード:プログラムオート
シャッタースピード:1/60秒
絞り:F8
ISO:640
露出補正:-1EV
 
そして時々、息継ぎしに浮かんでくることを発見したので、水上に出たときはSONY α9で撮影した。

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[撮影データ]

機材:SONY α9
レンズ:FE24-105mm F4 G OSS
ストロボ:ストロボ+ライト
撮影モード:マニュアル
シャッタースピード:1/125秒
絞り:F8
ISO:オート(3200)
露出補正:-1.3EV




「今回のSUV……レクサス NX300h」

プレミアムカーがどういうものかを実感させてくれる1台


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夜間の撮影ではホテルは無駄になるからいらないが、仮眠ぐらいしなけりゃやってられない。なので、プレミアムブランドのレクサスには似つかわしくない半車中泊と相成った。
リヤシートを倒してキャンプマットを敷けば十分快適。ハイブリットは燃費だけでなく、オプションのAC100V電源から1500Wの電気も使えるから、カメラや懐中電灯の充電にも役立つ。
始動からスタートまで、静かなEV走行は深夜の撮影にはうってつけだった。

インパネまわりは飛行機のコックピットを意識したようなタイトで凝ったデザインだが、スイッチや表示が小さくて慣れるのにやや時間がかかるかな。
シートはしっかりとした座面で腰も背中も包み込んでくれるフィット感がすばらしく、長距離移動でも快適だった。
後輪の駆動がモーターのE-Four(電気式4WDシステム)でプロペラシャフトがない分、リヤシートの足元のフロアがフラットで大きな荷物も置きやすい。

走りはモーターアシストがパワフルで、イメージ的にはスーパーチャージャーエンジンみたいなトルク感でストレスなく加速する。
乗り心地はスピードレンジが低い市街地では突き上げもなく、穏やかで好感が持てる。高速道路などでスピードレンジが上がると、道路の大きな継ぎ目ではちょっと硬さが出てくるが、うねりに対して穏やかに追従してくれる。

地味にスゴいと思ったのはワイパーの動く範囲。ドライバーサイドはフロントウインドーサイズに思いっきりぴったりの可動範囲で、雨の中、気持ちよく視界をクリアにしてくれる。たぶんプレミアムカーの熟成というのは、こういうところにジワジワと染み出てくるものだとオイラは強く思った。
レクサスは正常進化していると実感。

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■主要諸元

レクサス NX300h バージョンL
(電気式6速CVT/4WD)
全長×全幅×全高:4640mm×1845mm×1645mm
ホイールベース:2660mm
最低地上高:170mm
車両重量:1850kg
エンジン:直4DOHC
総排気量:2493cc
エンジン最高出力:112kW(152ps)/5700rpm
エンジン最大トルク:206Nm(21.0kgm)/4400~4800rpm
モーター最高出力:前105kW(143ps)/後50kW(68ps)
モーター最大トルク:前270Nm(27.5kgm)/後139Nm(14.2kgm)
燃料/タンク容量:レギュラー/56L
WLTCモード燃費:15.8km/L
タイヤサイズ:225/60R18
価格:612万7000円



瀬戸市と瀬戸物


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子供のころ、陶器を“セトモノ”と呼んでいたことを思い出した。それが“瀬戸物”で、この愛知県瀬戸市で生まれたものだとはまったく知らなかった。
何でも1200年代に瀬戸で陶器に合ういい土が見つかったのが始まりらしい。
そんなこんなの瀬戸物の歴史や展示物がたくさんあるのが「瀬戸蔵ミュージアム」。

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個人的には昔の尾張瀬戸駅を再現した建物と実物の電車があって楽しかった。この鉄道関連の展示がかなり詳細でマニアックなのだ。

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そして、本物のオオサンショウウオは持って帰れないので、ショップで瀬戸焼のかわいらしいオオサンショウウオを手に入れた。

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そういえば、瀬戸市って将棋の藤井聡太2冠の故郷なんだね。
 

瀬戸蔵ミュージアム

住所:愛知県瀬戸市蔵所町1-1
TEL:0561-97-1190
http://www.seto-cul.jp/setogura-museum/
開館時間:9:00〜17:00(最終入館16:30)
休館日:1月1~4日、12月28~31日、月1回程度臨時休館あり
入場料:一般520円、高校・大学生・65歳以上310円 ※中学生以下、障害者手帳所持者、妊婦は無料。20人以上は団体割引あり
駐車場:有料駐車場あり(1時間無料。以後、60分ごとに100円)



ご当地グルメ

「瀬戸焼きそば」

今にして思うと、“瀬戸焼”と“瀬戸焼きそば”って語呂合わせ?とか思うんだけど、昭和30年代から瀬戸市の深川神社あたりで食べられていたものらしい。

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瀬戸焼きそばには定義があり、蒸し麺、醤油ベース味付け、具材は豚肉とキャベツのみということらしい。
オイラが食べている間にもお持ち帰りのお客さんがひっきりなしにやってきていて、地元のお昼ごはんとして愛されているのがすごくよくわかる大盛況ぶり!





〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている
 
 
〈ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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