2020/09/23 新車

スバル水平対向エンジンは燃費が悪い?いや今度こそ! 新型レヴォーグの「CB18」はリーンバーン採用で熱効率40%を実現

EJ20でリーンバーンに挑戦してきたが…



新型レヴォーグに搭載される完全新開発のCB18型エンジンは、世界トップレベルと言っていい熱効率40%を実現している。その達成技術の一つがリーンバーン(希薄燃焼)だ。

スバルのリーンバーン。若いスバルファンにもピンとくる人は少ないかもしれない。しかし、平成のはじめを知るクルマ好きならご存じのように、レガシィにリーンバーンエンジンがラインアップされていた時代があった。


●スバルのリーンバーン・エンジンのスペックを比較

「酒気帯び」と「酒酔い」運転の違いとは?

初搭載は1996年6月。2代目レガシィ ツーリングワゴンの大幅改良で、EJ20&18型エンジンは「BOXER MASTER-4」に進化を遂げた。話題をさらったのは、MTで2L初の280馬力を達成した2ステージツインターボ、さらにフロントが倒立式のビルシュタイン製ダンパーを備えたGT-B。その陰に隠れてしまったが、標準グレードTX-Sの4WDにはこれも新開発のリーンバーン仕様が追加されていたのだ。


●2代目レガシィ ツーリングワゴン(GT-B)


●2代目レガシィ ツーリングワゴン(TX-S)

その96年は、三菱がガソリン直噴「GDI」を量産車で世界初搭載し、トヨタが同じく「D-4」をリリース。ともに成層燃焼による超リーンバーンを実現し、自動車業界はリーンバーンに対する気運が再び高まっている時期だった。

レガシィのリーンバーンはEJ20のOHC(1カム4バルブ)がベース。まだ連続可変バルブタイミングもガソリン直噴も採用していない時代で、空燃比を自在にコントロールすることはできなかった。それでもベースエンジンに対して、10・15モード燃費は10%アップの13.6㎞/Lを実現。最高出力は10馬力低い125馬力だが、最大トルクの低下は0.5kgmに抑えて必要十分なドライバビリティを確保した。ただし、トルクピークは4400回転と高めで、ミッションも5速MTのみの設定だった。

98年6月に3代目へフルモデルチェンジされると、EJ20はまたもや「PHASE Ⅱ」へと刷新。トルクや燃費の改善が図られ、OHCには吸気系にタンブルストレートポートが採用された。ツーリングワゴンTXのOHCエンジンはリーンバーンに統一。新設計ヘッドの採用などと相まって、動力性能は137馬力・19.0kgmと大幅な増強が実現された。4速ATの設定もトピック。また、新方式のNOx吸蔵触媒採用によってリーンバーンの領域が拡大し、実用燃費の向上も図られた。先代に対して車重は5速MT車比で80㎏増えたものの、10・15モード燃費は先代と同じ13.6㎞/Lが確保されていた。


●3代目レガシィ ツーリングワゴン(250T-B)


●3代目レガシィ ツーリングワゴン(TX)

その後、排ガス規制の強化などによって、リーンバーンエンジンは各メーカーから姿を消すことになる。

3L・NA並のトルクをわずか1600回転から発生させる「CB18」



新型レヴォーグのCB18で採用のリーンバーンは、基本的には従来技術の延長線上にあるものだ。とはいえ、現在は吸排気の連続可変バルブタイミング、直噴、電子制御スロットルといった技術の採用、またECUや各センサー類の高性能化によって、点火時期に加えて空気の採り入れ方や燃料の噴射まで緻密かつ広範囲にコントロールできるようになった。



空燃比は最大でλ=2、つまり理論空燃比(ストイキ)14.7の2倍。燃焼状態は走行に応じて切り換わり、2000回転少々までの低負荷領域ではλ=1.3~2のリーンバーンが可能だ。

ターボチャージャーの採用も、今どきのリーンバーンならではの特徴。主眼は排気量の縮小によって省燃費化するダウンサイジングコンセプトにあるが、リーンバーンに重要なエアサプライ機能の役割にも適している。λ=2の場合、ストイキ(λ=1)の2倍の空気量をシリンダーに押し込む必要があるのだ。また、大量の空気をスムーズに取り込むため、吸気ポートはTGV(タンブルジェネレーションバルブ)の廃止を前提に新設計されている。

ノッキングで不利なターボエンジン、しかもレギュラーガソリンでありながら、圧縮比は10.4とNAのEJ20リーンバーンを上まわる。燃費は10・15モードより10%ほど低下するとされたJC08モードで16.6~16.6㎞/L。実勢に近い現行のWLTCモードで、およそ20年前と同じ13.6~13.7㎞/Lを確保している。

動力性能は3LガソリンNA並みの30.6kgmを、わずか1600回転から発揮。まさにすべての面でEJ20リーンバーンとは隔世の感がある。

開発担当者が今後の課題に挙げたのは、点火系。リーンバーンはいかにして薄い混合気に火をつけ安定的に燃焼させるかがポイントで、例えば点火系の技術でブレークスルーがあれば、さらに進化する余地があるという。ただし、水平対向エンジンは点火コイルがただでさえ専用の小型タイプ。点火を強化するにも、さらに大型のものはスペース上難しいとか。

またもや立ちはだかるボクサーの横幅問題。しかし、スバルはEJ、さらに遡れば第1世代のEA型エンジンから、時代の移り変わりとともに直面していたいくつもの難問を、独自の技術力と飽くなき執念で乗り越えてきたのだ。

〈文=戸田治宏〉

ドライバーWeb編集部

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