2020/09/11 コラム

ミニに対抗すべく開発されたRR駆動の「インプ」といえば?【東京オリンピック1964年特集Vol.22】

前回オリンピック開催年、1964年を振り返る連載22回目は、driver1964年8月号に掲載した「ヒルマン インプ」に関してだ。

※該当記事はページ最下部



いすゞは乗用車メーカーとして日産に続くポジションだった


56年前のdriver誌1964(昭和39)年8月号から最後に採り上げるのは、「いすゞとの提携を噂される ヒルマン インプ」。


●ヒルマン インプ

英誌「モーター」からの転載で、オリジナルのロードテストに国内自動車業界の動向などを加えた内容となっている。クレジットはdriver誌の創生期にニューモデルの紹介・試乗で健筆を振るった渋谷三郎氏。拙欄「モンテカルロラリー」(連載第1回)でも触れたように、driver誌はモーター誌と記事についての特別契約を結んでいた。

当時、いすゞ自動車は乗用車メーカーとしてもトヨタ、日産に続くポジションにあった。

1954(昭和28)年に英ルーツ・グループと提携し、傘下のヒルマン ミンクスをノックダウン生産。その国産化を通じて乗用車開発のノウハウを習得し、中型セダンのベレル(連載第4回)、ヒルマン ミンクスの実質的な後継車となるベレット(連載第12回)を世に送りだした。


●いすゞ ヒルマン ミンクス(2代目)

いすゞはルーツとの契約を一度延長。その満了を翌65(昭和40)年2月に控えていた。先進国メーカーと提携した当初の目的は達成されており、契約が更改される可能性は極めて低かった。

しかし、欧州では前年の63年にミンクスより1クラス下のニューモデル、インプが登場。乗用車ラインアップを強化したいいすゞと、東洋の市場に進出したいルーツの思惑が一致したら…。そんな業界内の推測から、両社の再契約説が取り沙汰されるようになったようだ。

その背景には、目前に迫った自動車の輸入自由化もあった。特に欧米から乗用車の輸入自由化については、国産車の競争力の低さが懸念されていたのだ。

ミニに対抗すべく、「RR駆動」だったインプ


インプは、BMC(ブリティッシュ モーター コーポレーション)のミニに対抗すべく開発された。



駆動レイアウトもその表れか、ミニの革新的なFFとは対極のRR。リヤエンジンは量産イギリス車で初の採用だった。875㏄の直4OHCで、手がけたのはF1で隆盛を極めたコベントリークライマックス。


●フロントフード下にエンジンはない

記事は8ページにおよぶ詳細なものだ。インプがロードテストで弱点として挙げられたのは、後席におけるエンジン・冷却ファンのノイズと、粗い路面でのロードノイズ。それ以外はおおむね高評価で、ミニのように大胆な新機構はないものの、「ルーツ・グループ近来の快作」(文中より、以下同)と評されている。



「インプの語義は“茶目小僧”だという。ミンクス――“おテンバ娘”のあとをうけたこの茶目小僧が何をしでかすか。モーター誌テスト記事から読み取っていただきたい」


●ヒルマン インプ

そういえば、いすゞの車名も59(昭和34)年にデビューしたエルフは「妖精」。その後もベレル(五十鈴のベルとエル[ローマ数字の50]の造語)、ベレット(小さなベレル)、ジェミニ(双子:誕生のきっかけとなったGMとの提携関係を指す)と洒落ていたのは、これもヒルマン ミンクスに倣ったものかもしれない。


●初代いすゞ エルフ

結局、いすゞはルーツとの関係を継続せず、“いすゞ ヒルマン インプ”が誕生することもなかった。また、通商産業省(現・経済産業省)は国産メーカーに競争力の強化をうながし、乗用車の輸入自由化を延期。実施されたのは翌65年10月のことだった。戦後復興のため政府の主導で始まった国産メーカーによるノックダウン生産の時代は、終わりを告げようとしていた。

東京モーターショーに「NSU」がやってくる


さて、このインプの8ページ中ではもう一台、世界中が注目する欧州車の動向が囲み的な扱いで報じられている。



バンケルエンジン、つまりロータリーエンジンを搭載した世界初の量産車、NSUスパイダー。その生産が6月上旬から始まったことを伝えるものだ。10月の東京モーターショーに出展されることも告知されている。

バンケルロータリーは、ドイツのフェリクス・バンケルが発明。同じくドイツの2輪・4輪メーカーだったNSUとバンケル社の共同研究によって開発に成功した。レシプロエンジンとは構造がまったく異なる「夢のエンジン」に、世界中の自動車メーカーも注目。こぞってNSU・バンケルとのライセンス契約に乗り出す。マツダもそのうちの一社だった。

〈文=戸田治宏〉










ドライバーWeb編集部

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