2020/09/10 コラム

レースを盛り上げる特効薬は性能調整!? BoPって何だ|木下隆之の初耳・地獄耳|

レースを盛り上げる特効薬「BoP」


「レースが盛り上がっていますね。毎戦、激しいバトルになっています」
レース門外漢の担当Kが、久しぶりにレースの話題を上げてきた。
「何か聞きたいことでも…」
「いや、最近のレースって、いつも都合よく接近戦になりますよね。ヤラセでもやってんですか?」
担当Kは、全く失礼な男である。この木下隆之を前に、よくぞ憎まれ口を叩けるものだと呆れるのである。

「それはBoPが正しく機能しているからだ。特にスーパーGT300クラスは、BoPの支配下にあると言っていい」
「BoPって?」
「バランス・オブ・パフォーマンスの略だ」
「バランス・オブ・パフォーマンス?」
「そう、日本語に訳すと『性能調整』となる」
「性能調整? 性能が調整されちゃうんですか?」
「そう、性能が調整されちゃうのだ」

仮にも出版社で編集を担当していながら、そのボキャブラリー乏しい言い回しには呆れるものだ。

なぜBoPが必要なのか



GT3とは、FIA国際自動車連盟が定める車両カテゴリーである。どこまでの改造が許されどこまでが禁止されているといった厳格な規則書に則して、世界のメーカーが開発したマシンのことである。そのマシンを世界のレーシングチームが購入し、各国の選手権を戦っている。日本ではスーパー耐久のST-Xクラス、スーパーGT300クラスの多くがGT3規定のマシンで戦っている。

「でも、それだけ多くのマシンが走るのに、実力が揃っているのは不思議ですよね」
「そう、そこがBoPのマジックなのだ」
「マジック?」

BoPはバランス・オブ・パフォーマンスだから、FIAが世界のレースを観察し、速さが拮抗するように性能調整をする。例えば、速いマシンが現れるとブースト圧を下げるように指示したり、ウエイトを積むように仕向けるのだ。性能で劣るマシンは可愛そうなので救済される。結果として性能が横並びになる。毎戦のように激しいバトルになるのはそれが理由だ。

「じゃあ、わざと負け続けていたら、いつか救済されて速くなるってことっすね」
「あり得なくもないけれど、性能確認は厳格だから、最高速やコーナリング性能をデジタルに監視しているから不正はしづらいよね」
「遅いドライバーを乗せ続けていて、救済されたらいきなり速いドライバーにスイッチするとか?」
「それなら勝てる可能性があるかもね」
「なのに、なんでみんなやらないんですか?」
「…。」
「ずっと負け続けていた方が有利じゃないですか…」
「そんなことして、楽しいの?」
「確かに…」

〈文=木下隆之〉

ドライバーWeb編集部

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