2020/09/02 コラム

ヘッドライトはもう消せない? OFFポジションが廃止される理由 |オートライト義務化|

●2020年6月に登場したタフトのウインカーレバーに付いたスイッチを見ると、ヘッドライトの「OFF」ポジションがなくなっている

「OFF」にできなくなるヘッドライト



最近のクルマから、あるものがなくなっていることにお気づきだろうか。

自動車誕生の黎明期から装備されていたものが、今になって消えつつある。ここまでのヒントで、それが何かわかった方はクルマの最新装備に詳しく、クルマ関連の法規にもかなり敏感な方だろう。


●タフトのイグニッションをオンにすると、勝手にスモールランプが点灯する

答えは、ヘッドライトの「OFF」ポジションだ。えー、ヘッドライトを消せないならバッテリーがあがってしまうと思った方もいるかもしれないが、これはあくまでイグニッションオンのとき。エンジン(パワー)オフにするともちろんヘッドライトは消える。この「OFF」ポジション廃止は、昼間でもライトオンを推奨するようになったのがきっかけ。国際連合の「車両等の型式認定相互承認協定」によって「前照灯の自動点灯(オートライト)機能に係る基準の新設」が行われた。オートライトは日本でも普及しつつあるが、「OFF」ポジションがあって、それを選択してしまうとオートライトが機能しない。だから「OFF」ポジションを廃止して、強制的にオートライトにするわけだ。安全性向上のために「OFF」ポジションが消滅しつつある。

最近の国産車の例では、2020年8月20日に一部改良されたeKクロスとeKワゴン。新型車だけでなく、改良などで廃止されるようになりつつある。輸入車の多くはすでに「OFF」ポジョンを廃止しているクルマが多く、明るい時間帯にドライブしていてもライトが点灯しているクルマが多くなったのを実感している方も多いだろう。


●eKクロス/eKワゴンは、一部改良時にヘッドライトの「OFF」ポジションを廃止した

となると、「機械式の立体駐車場だと、前方に鏡があるから反射してまぶしくなってしまうのでは?」と疑問に思うかもしれない。確かに駐車場のなかには、クルマの位置を運転者に確認にさせる目的で前方に鏡が設置されているところもあるため、ヘッドライトが点灯すると鏡に反射して幻惑されてしまう。そういった場合は、スモールランプのポジションにすればいい。完全オフにはできないが、眩しくないからスムーズに駐車できるだろう。


●弊社の機械式立体駐車場。「OFF」ポジションが廃止されたクルマで停めようとすると、鏡にヘッドライトが反射してしまって、「ああスモールにするの忘れた」という事態に陥る。ちなみに写真のロードスターは編集部車。「OFF」ポジションあり

もともと北欧やカナダなど北極に近いエリアは、昔から日中でもヘッドライトを点灯していた。自然環境が厳しいエリアでは日照時間や天候によって視認性が低下するため、他車から見て目立つように被視認性を高めるためにヘッドライトを点灯していたわけだ。安全性が高まるということでヨーロッパに普及し、今では海外の多くの国で昼間の走行時に点灯する専用の「デイタイムランニングライト(DRL)」が設定され、標準化されつつある。

だが日本の保安基準ではこういった従来DRLは認められず。国産車の輸出仕様は標準装備だが、国内用では輝度を低下させて「その他の灯火」として使っていたモデルもあった。でも今ではDRLを保安基準で「昼間走行灯」と呼び認可されている。今回のオートライトの「OFF」ポジション廃止と同時に昼間走行灯に関する基準も改正され、取り付け位置や取り付け方法などに関係する基準が明確化された。

オートライトと昼間走行灯の新基準が乗用車(定員10人以下)に適用されるのは、新型車が2020年4月から。継続生産車は21年10月からになっている。

〈文=丸山 誠〉

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