2020/07/31 コラム

「高速120キロ」は1台800万円の超高性能・可搬式オービスの活躍と「速度違反金」導入の前振りか!?

高速道路の最高速度を引き上げると…?


警察庁の発表をテレビ・新聞が一斉に報じた。例えば以下は7月23日付けNHKニュース(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200723/k10012529391000.html )の一部だ。


一部区間で時速120キロ 高速道路 最高速度を引き上げへ

高速道路の最高速度が、一定の条件を満たした区間では現在の時速100キロから120キロに引き上げられることになりました。高速道路の最高速度の基準が変わるのは初めてで、警察は、事故を防ぐため取締りについても強化することにしています。



これ、多くの運転者諸氏は歓迎ムードかもしれない。だが、交通違反・取り締まりを40年近く取材・研究してきた私はまったく別のことを思う。

「クルマの性能は格段によくなった。設計速度が120キロ以上の道路もある。制限速度を上げるべし」とは昔から言われていた。しかし警察庁は「クルマの性能等がどんなによくなっても、運転するのは人間です。人間の能力には限界があります。かつ、速度が上がれば上がるほど事故時の被害が大きくなります」と拒み続けてきた。なのにびっくり、2016年3月、見直しを進めると発表。そして今回の発表に至るのである。これは何を意味するのか。

ものすごく大胆に端折って説明するとだね、警察庁は、表立っては2013年から「可搬式オービス」の導入へ向け動きだした。当初は、スウェーデンを本社とする世界的企業の可搬式オービス、センシス(Sensys Gatso Group)のMSSS(脅威の高性能)でいくはずだった。だが、警察庁のなかに、日本のオービスの老舗企業(東京航空計器、その可搬式はLSM-300)を推す一派がいた。各都道府県警は、その一派の指示を受けたのか顔色を見た(忖度した)のか、おかしな入札条件にしたり随意契約にしたり、ほとんど老舗企業の可搬式ばかりを購入した。外国企業は弾き出されるのか、可哀想に、日本人として恥ずかしいぞ、私はそう思った。

ところが、嗚呼、なんてこった、老舗企業の可搬式はほとんど使い物にならなかったんだね。そのためずるずると年月が過ぎた。高齢化は進み、軽自動車がやたら売れ、2013年に約205万件だった速度取り締まりは2019年には約114万件へと落ち込んだ。取り締まり件数1位の座を一時不停止(約133万件)にゆずってしまった。自動運転の時代も迫っている。やばい!

ついに始まるか海外製オービスの本格導入


警察庁の主流派(?)はしびれをきらし、頭にきたのだろう。そう思えることが2020年、立て続けに起こった(申し訳ない、長くなるので具体的には省略)。そうして4月12日、朝日新聞が「神出鬼没の可搬式オービス 速度違反どこでも取り締まり(https://www.asahi.com/articles/ASN4B421GN49UTIL05Q.html)と大きく報じた。以下はその記事の一部だ。


今年度は未配備の山形、茨城、新潟、鳥取、山口、徳島、高知、鹿児島、沖縄の9県警に計10台を置く。すでに配備実績がある北海道や埼玉、千葉、岐阜、三重、大阪、兵庫、福岡、佐賀など18都道府県警にも計33台を追加する。費用は1台800万円ほどだ。


2019年度末(2020年3月31日)までにやっと60台だったのに、2020年度の1年間で一気に43台を購入させるというのである。「1台800万円ほど」とある。各地の入札調書や契約書を見てきたところからすると、それは外国企業の可搬式だ。つまり、老舗企業推しの一派は排除し、外国企業の超高性能な可搬式で警察庁は行きますぞ!という宣言なのだこれは。たぶん今年中に、警察庁は言いだすのではないか。

「可搬式オービスの速度抑止効果には著しいものがあります。ただ、現場では測定と撮影を行うだけ。後日違反者を出頭させて取り締まるため、警察官の負担は大きいうえ、新型コロナウイルスの感染も懸念されます。そこで、駐車取り締まりにおいて定着している方法、すなわち違反車両の持ち主の責任を問う制度を、速度取り締まりにも導入したいと考えております。放置違反金ならぬ『速度違反金』の納付書を送付し、金融機関やコンビニで納付していただく形です。迅速に責任を問い、かつ感染防止に資する、そのような制度の導入を…」

警察庁が言わなくても、テレビのコメンテーターが同趣旨を言うだろう。そういうなかでの「高速120キロ」なのである。アメとムチの、これはアメに相当するか。放置違反金は、反則金や罰金と違い、取り締まりを行った都道府県の収入になる。新型コロナで財政が厳しいおり、速度違反のペナルティも都道府県の収入になるのはありがたいだろう。とまぁそんなことが、私のような交通違反マニアの脳内を駆け巡るのですよ。速度違反金がどんなふうに実現していくか、こう言っちゃなんだがわくわくする!

〈文=今井亮一〉

RECOMMENDEDおすすめの記事