2020/07/21 コラム

自身のドラレコが「あおり運転」を裏付けた…初の「あおり運転厳罰化」適用、どんな運転で罰金はいくらになる!?

自身のドライブレコーダーで証拠を作った



●東京都千代田区霞が関にある裁判所合同庁舎。この巨大な庁舎の中に東京簡裁の刑事係も入っている。正面側には、警察庁や警視庁がある。反対側には弁護士会館、東京家裁、東京地検、法務省などが並んでいる



2020年6月30日、妨害運転(いわゆる、あおり運転)の厳罰化がスタートした。まさにその6月30日、ばりばり妨害運転をやらかして検挙された運転者がいるそうで、全国報道された。以下は7月16日付け読売新聞の記事の一部だ。

クラクション2分間鳴らし、前に割り込む…「あおり運転罪」初適用


車間距離を極端に詰めて運転したなどとして、警視庁は16日、東京都江戸川区のトラック運転手の男(42)を道路交通法違反(あおり運転)容疑で東京地検に書類送検した。6月30日施行の改正道路交通法で創設された「あおり運転(妨害運転)罪」が適用されるのは全国で初めて。


発表によると、男は6月30日午後5時半頃、江戸川区南葛西の環状7号で乗用車を運転中、都内の男性会社員(24)が運転する前方の軽乗用車との車間距離を約4.5メートルまで詰め、約1.3キロにわたって運転。約2分間、クラクションを鳴らし続けた上、車を軽乗用車の前に割り込ませて通行を妨害した疑い。


調べに対し、男は「後ろから来た軽乗用車に車間距離を詰められ、カッとなった」と容疑を認めている。男は車を止めた後、路上で男性をどなりつけるなどしており、目撃者が110番した。駆けつけた警察官が事情を聞き、ドライブレコーダーなどからあおり運転を裏付けたという。


別の報道によれば、「あおり運転を裏付けた」ドライブレコーダーはトラック自身のものだそうだ。自分で証拠をつくりながら妨害運転をしたわけだ。カッとなったら止まらない、典型的なケースかと思われる。この「トラック運転手の男(42)」の処罰はどうなるのか。


厳罰化に関する記事」で解説したように、妨害運転の罰則は2つに分かれる。報道を見る限り本件は、酒酔い運転と同じ「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」ではなく、無免許や酒気帯びと同じ「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」のほうに当たるだろうと思われる。

無免許も酒気帯びも、シンプルな初犯なら罰金30万円が相場のようだ。ただ、無免許の場合、公訴事実(処罰の対象)は1件だけだがじつは通勤や仕事で毎日運転していた、といったケースは罰金50万円とされることがある。酒気帯びの場合、単に飲酒検問で発覚したのではなく物損事故を起こしたようなケースは「飲酒運転の危険性を顕在化させた」として罰金を飛び越し、執行猶予付き懲役刑とされることがある。そうしたことに加え、事件数で8700件ほどの裁判を傍聴してきた経験からすると、本件は3050万円の罰金刑に処されるのではないか、との推認は論理則・経験則等に照らして合理的といわなければならない。 ←高裁刑事の判決にしょっちゅう出てくる決まり文句(笑)。

罰金は通常、略式の裁判手続きで処理される。法廷を開かず、書面で略式命令(罰金の支払い命令)を出す形だ。傍聴人が傍聴することはできない。しかしっ、30~50万円は普通の生活者にとって大金だ。まさかそんな高額の罰金刑になるとは思わず「略式命令には不服だ」と自ら正式裁判を請求するかもしれない。そういうケースはときどきある。もしそうなれば、本件は東京簡裁(簡易裁判所)の法廷へ出てくる。東京簡裁で行われる裁判は、ほとんどが「窃盗」だ。「道路交通違反」は滅多にない。探して狙って傍聴することは可能だ。

とまあ、私のような交通違反マニアで裁判傍聴マニアは、上掲報道を見ながら直ちにそこまで考えてしまうのである。傍聴できたら詳細レポートをしよう!


〈文=今井亮一〉

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