2020/07/01 コラム

ダンロップのビューロVE304の広告は「理想のタイヤかもしれない」…なぜそんなに控えめなキャッチコピーなの?|木下隆之の初耳・地獄耳|

■素晴らしいタイヤなのに…

「ダンロップの新タイヤ、もう履いたんッスか?」

「ああ、すでに性能を確認しているよ」

「どうでした?」


ダンロップが今一番力を入れているサマータイヤが「ビューロVE304」である。驚くほどの静粛性が特徴だ。トレッド面の溝を複雑に組み合わせることによって、パターンノイズを抑えている。直線グループは波型であり、ピッチ配列をバラバラにすることで音圧を下げてもいる。ロードノイズは29%下がっているというから素晴らしい。静かさ自慢のタイヤなのだ。

実際に走らせた印象も感動的だった。路面を叩く音が抑えられているばかりか、周囲の雑音を吸着して包み込むような感覚なのだ。神社の境内のような、シーンと静まり返った不思議な感覚に陥った。

「それは凄いッスね」

「久しぶりのヒット作だと思うよ」

「でも、不思議なんですよ…」 

編集担当のKが怪訝な表情をした。

「何がだ?」

「ビューロの広告が、控えめなんッスよね」

■キャッチコピーが控えめすぎる?

キャッチコピーは「理想※のタイヤかもしれない」である。「最上級※の静粛性」と続く。「最高レベルの※ウエット性能が長続きする」と結ばれている。静粛性に優れ、ウエット性能も高く、それをダンロップは理想的のタイヤだと考えたわけだ。


●ダンロップのHPより

「このどこが変なのだ?」

「※印だらけなんッスよ」

「たしかに、注意書きが多い」

そもそも、もっともユーザーを突き刺さねばならぬキャッチコピーからして「かもしれない」と控えめだ。「理想」に※印が刻印されている。辿ってみると「※当社商品中」との注意書きが記されている。「最上級」にも「最高レベル」にも、「※当社商品中」で逃げを打っている。

「なんスか、アレ」

「誰が理想のタイヤと決めたのだ、と他メーカーから突っ込まれないためのクレーム対策であろう。世間のクレーマー対策でもある。お客様相談室に、文句つけてくる奴がいるっていうしな」

「主観なんッスから、注意書きなんていらないッスのにね」

たしかにそう思う。一番速いであったり、一番軽いというならば事実誤認を指摘される可能性はある。だが、ダンロップが理想だっていうんだから、貫き通してもよかった。

「だったら、「※個人の感想です」のほうがウケたのに」

「「※許可を得てテストしています」なんてね」

僕もCM制作に携わっているから、クレーマーに過敏になる気持ちはわからなくはない。大企業になればなるほどコンプライアンスには慎重になるのだ。とはいうものの、せっかく考えた文言に「※」を入れなければならなくなったコピーライターのガッカリを想像すると悲しくなる。いっそのこと、別のコピーに差し替えたほうがよかった。

■「技術の日産」…?

「だったら【技術の日産】もクレーム対象なんスか?」


●日産のHPより

「問題ないっしょ」

「【やっちゃえ日産】は?」

「それも問題ない」

「【そうだ 京都、行こう】に、「※強制するものではありません」だなんて入れちゃったみたいッス」

「実際のタイヤは素晴らしいのにね」

「ホントウっスか?」

「静粛性が特に素晴らしかった」

「それは※個人の感想ですよね」

「キミに、このタイヤのよさがわからないだけだ?」

〈文=木下隆之〉

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