2020/06/18 コラム

なぜRAV4 PHVはそんなに速いの?|木下隆之の初耳・地獄耳|

■財布に優しいだけのPHVとはワケが違う

「RAV4にPHVが加わりましたね」

このコラムの担当編集者Kから、原稿の依頼がやってきた。自宅待機が命じられているようで、携帯電話での催促である。


●RAV4 PHV。価格は469万円〜。写真は最上級のブラックトーンで、539万円

「ああ、すでに乗ってきておる」

「PHVだから財布に優しいんでしょうね」

「それはもちろんだが、環境性能だけのPHVじゃない。あれは走りためのPHVなのだ」

「…どういうことっすか?」

トヨタのRAV4は、2019年に7代目デビューでスタイルを変えている。これまでのようなアーバンSUVという立ち位置よりもオフロード志向にシフトしている。道なきみちを突き進むイメージを強くしている。

「キャッチフレーズが過激でしたよね」

「”好きにまみれろ”だった」

しかも、キャンパーやスキーヤーと共に、未舗装路を飛ばすシーンが描かれている。そのRAV4に加わったPHVも、コンセプトは変わらない。というよりむしろ、その性能をより研ぎ澄ませているのだ。


●駆動用バッテリーはフロア下に敷き詰めた。補機類も含めてRAV4より約200kg重いが、低重心化も実現している

「でも、PHVってつまりプラグインハイブリッドっスよね。だったらバッテリーに充電すれば、ガソリンを1滴も使わずに走れるってのがウリっすよね」

「たしかに満充電だったら95kmも電気モーターだけで走れる」

「95kmも走れるのだったら、通勤通学はEVモードだけですみますね」


●RAV4 PHVは普通充電のみに対応。満タンまでは、AC200V/16Aで5時間30分、AC100V/6Aで約27時間かかる

「ガソリンスタンドなんてまず行かなくなる」

「ほら、経済的なだけのPHVッスね」

とはいうものの、RAV4のPHVは、大容量のバッテリーを搭載している。システム最高出力は306psもある。実際にEVモードで加速したら、速度が140km/hを超えた。それほどの電気出力なのである。

■加速力はスポーツカーも顔負け!

「それがホントだとすると、すごいッスね。ホントだったら…」


●試乗の舞台は袖ヶ浦フォレストレースウェイ。サーキットをガンガン攻められるポテンシャルを持つ

「まだ疑っているな?」

「はい…」

「スタートして速度が100km/hに達するのは6.0秒と発表されているのだぞ」

「それって速いンスか?」

「ちなみに、とある3リットルのスポーツカーも6.0秒だ」

「スポーツカーと同等ッスか?」

「決して軽くないボディを6.0秒で加速させるのだ」

「 それがホントだっら、すごいッスね。ホントだったら…」

「まだ疑っているな?」

「はい…」

「キミは自動車Webサイトの編集者なのに、電気モーターの底力を知らんのだな?」

「バッテリーって、携帯電話のバッテリーのイメージしかないッスから」

■電気モーターでなぜ速くなる?

電気モーターはスタートダッシュで強烈なのだ。最初の1回転から最大パワーを発揮するという特性があるからだ。一方、低回転低負荷域を苦手とするけれど、高回転を得意とする。回転系の針が高まってくると、モリモリとパワーが炸裂しはじめるのがその証拠だ。


ちなみに、新型RAV4 PHVのキャッチフレーズは“わがままに突き抜けろ”だ。

「つまり、モーターとエンジンのいいとこ取りしたのがRAV4のPHVなのである」

「 それがホントだっら、すごいッスね。ホントだったら…」

「まだ疑っているな?」

「いえ、もう疑っていません」

「キミのガラケーとは世界が違うのだよ」

「ツ・・ツ・・・ツ・・・」

電話が切れやがった。

「だからガラケー編集者とは付き合い切れない!」

〈文=木下隆之〉

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