2020/06/03 新車

ウワサは本当だった…サーキットで見せつけられた速すぎるRAV4 PHVの実力

■GRスープラの次に速い?

新型コロナウイルスの影響で、2カ月ぶりとなったニューモデル試乗の仕事がサーキット。しかも、いきなりRAV4 PHVが回ってきたから体に悪い。


●G

トヨタ公表の発進加速性能は、北米仕様の0→60mph(0→100㎞/h)が何と5.8秒! 今回の日本仕様でも0→100㎞/hが6.0秒!という高性能ぶりだ。4ドア車でトヨタブランド最速の呼び声さえある。


●フロア下の駆動用バッテリーで約100km、そのほか補機類などで約100km、RAV4 HVに対して約200km車重は重くなっている

床下に搭載の新開発リチウムイオンバッテリーは、プリウスPHVの2倍にあたる18.1kWhの大容量。プラグインハイブリッドシステム「THSⅡ Plug-in」は、RAV4 HVに対して2.5Lエンジンの動力性能をほぼそのままに、フロントモーターはこれも新開発でパワーが約1.5倍、トルクは約1.3倍に引き上げられた。E-FourのリヤモーターはHVと同じだが、これもバッテリーの大容量化によってスペックをフルに発揮するまでパワーアップされているのだ。システム最高出力はHVの218馬力を問題にしない306馬力。

■EV後続距離はWLTCモードで95km

環境性能も抜かりない。一充電のEV航続距離はプリウスPHVや三菱アウトランダーPHEVを大きく凌ぎ、ホンダ・クラリティPHEVに迫る95㎞。22.2㎞/LのWLTCモード燃費にしてもRAV4を上回る。プリウスPHVと同じヒートポンプオートエアコンには、燃費に貢献する電池冷却機能が新たに追加されている。


また、AC100V・最大1500Wの外部給電機能は標準装備。フル充電なら大容量バッテリーだけでも1500Wで7時間、エンジンも使えば満タンで3日間の給電が可能だ。アウトドアシーンや万一の災害時に電源車として威力を発揮する。


一方、コックピットのドライブモードスイッチには、プリウスHVのHV/EV切り換え&チャージモードに加えて、HV/EVを運転状況に応じて最適に切り換えるオートモードが追加された。


■圧倒的レスポンスが襲いかかってくる

とりあえずオートを選択してコースイン。アクセルを何気なく踏み込んだだけでも、加速Gで体がグ~ッとシートに押しつけられる。あ~やっぱりタダモノじゃないなと気を入れ直す。


ゼロヒャク6秒の速さは本物だ。エンジンの咆哮とともにトルク&パワーが一気に立ち上がるが、その圧倒的レスポンスと怒濤の力強さはまさにモーターのそれ。ドライブモードの“スポーツ”を選べばアクセルレスポンスがいっそう高まり、アクセルオフの回生減速も強くなる。広いサーキットとSUVのアイポイントの高さで、これだけ速い!と感じさせるのは、やはり加速Gの凄まじさによるものだ。


感心したのは、これだけの動力性能をシャシーがうまく受け止めている点。車重も大容量バッテリー搭載で少なからず増えているが、それによって重心高がHVより27㎜下がった効果も大きい。サスペンションは急制動こそノーズダイブが目立つが、サーキットスピードでもロールをジワリと抑える強かさ。バネ下の動きもよく、旋回中には内輪の接地性も十分確保される。

また、E-FourはHVと同じく最大で前20:後80のトルク配分を行うとのこと。後輪にその数字からイメージするほどの駆動力は感じられなかったが、確かにアンダーステアに手を焼くことはなく、コーナー立ち上がりでは早めのタイミングで積極的にアクセルを踏み込める。

ただし、タイヤの絶対的なグリップは動力性能に対して不足気味。19インチはオールシーズン、18インチはサマーで、いずれもRAV4と同じものだ。専用タイヤを設定しなかったのは、販売価格を少しでも抑えるため。ほぼアクセル全開の高速コーナーで速さにビビッて一瞬右足の力を抜くと、スーッとテールアウトしそうなスリリングな一面もあるにはある。それでも基本的にはかなりコントローラブルと言っていい。またサーキットでこれだけのハイペースで走ることができれば、公道のワインディングで不足を感じる場面はほとんどないかもしれない。

■急速充電には対応しない理由とは

コストダウンの狙いがわかりやすいポイントは、もう一つある。急速充電にはオプションでもあえて対応していないのだ。まぁPHVの充電は、家庭のお得な電力プランで行うのが基本。また、休日のサービスエリアなどで急速充電機の奪い合いになるEVオーナーに配慮したこともあるようだ。


価格は460万円くらいからスタートというセンが有力。350万円前後が売れ筋のプリウスPHVとはキャラクターが異なるが、RAV4 PHVはコスパの面でもかなり魅力的に感じられる。

圧倒的な動力性能の一番の目的は、電動車両を退屈だと思う主力市場の北米ユーザーに、理屈抜きで強烈なインパクトを与えることかもしれない。しかし、国内でもPHVの概念を塗りかえる可能性は十分にある。ほぼ390万円するRAV4 HVの最上級モデルが主力を占める販売状況や、アウトランダーPHEVもしっかり見据えた価格設定を考えれば、RAV4 PHVも売れると見たほうが間違いないのではないか。

人間、環境の時代でもパワーと楽しさにはやっぱり弱いのだ。

〈文=戸田治宏 写真=岡 拓〉

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