「オロイド」という幾何学オブジェ(知りませんでした)が造形のヒントの一つになったというスタイリングは、写真で見るよりグッとシャープで、エレガントで、たくましい。
鮮やかな一文字発光で左右をつなぐテールランプは、最近のポルシェも連想させる。だが、
「前のハリアーからこういったデザインにしていますので(笑)」(MS製品企画ZD主査 小島利章さん)
なるほど、確かにハリアーは間もなく先代になる3代目が、ガーニッシュではあるが2013年12月のデビュー時からそのイメージを採り入れている。世界で自他ともに認める高級クロスオーバーSUVの草分け。開発陣の熱量はメカコンポーネンツを共用するRAV4にヒケをとらない。
4月13日に新型が正式にお披露目されて話題の一つになったのは、トレードマークの「鷹」からトヨタブランドに変わったフロントのバッジ。2代目ヴェンザとして導入されることになった北米向けとの共通化、トヨタ販売店の統合などが理由だ。
が、車内に乗り込むと、フロントドアのトリムに型押しされた鷹が!
「鷹のマークはハリアーのお客様にたいへん人気がありまして」(同)
夜間に足元を照らすドアミラー内蔵のウェルカムランプにも鷹が現れるというから、ハリアーファンはひと安心だ。
頭上には、日本車初の調光パノラマルーフ。ガラスの調光機能によって車内は障子のようなやわらかい光に包まれる。日本発のSUVにふさわしい演出。サプライヤーはメルセデス・ベンツのマジックスカイコントロールと違うようで、ガラスの透明⇔不透明を切り換える調光の速さはメルセデスを超えた!
車両パッケージはRAV4と基本的に同じ。3代目ハリアーと比較するとホイールベースは30㎜長くなったが、後席ニールームの余裕は拳半分ほど少なくなっている。RAV4より前席優先のクーペライクなキャラクターを考えれば、問題はないはずだ。RAV4と同じだった全高は30㎜低くなったが、後席の頭上高は調光パノラマルーフでも身長175㎝の筆者が不足を感じることはない。
パワーユニット、ドライブトレーン、シャシーといった走りの素材もRAV4と共通。ハリアーはほとんど味付けのみで違いが演出されている。パワートレーンは3代目で微々たる販売台数だったという2Lターボに代え、従来E-Fourのみだった2.5L・HVでFFも選べるようになった。
袖ケ浦フォレストレースウェイのプロトタイプ試乗では、その2.5L・HVの2車、2Lガソリンは3代目で一番人気だったというFFを試した。
サスペンションはRAV4より若干しなやかな印象。3代目のどちらかといえばソフトな乗り心地のセッティングは、あれはあれで味わいがあったが、フワフワしたロールは姿を消している。タイヤの接地性も限界までしっかり保たれ、サーキット走行も存分に楽しめる仕上がりだ。タイヤは、RAV4アドベンチャーの19インチはオールシーズンだが、新型ハリアーは全車サマーの設定。
RAV4より増えた車重に対しても、システム出力222馬力(FFは218馬力)を発揮する2.5L・HVの迫力と速さは相変わらず。ハンドリングはFFも十分スポーティだが、アクセルオンで駆け抜ける中高速コーナーやタイトコーナーの立ち上がりは、後輪の駆動力をしっかり感じられるE-Fourのほうがさらにリニアで、バランスもいい。
一方、2Lガソリンは低回転域のトルクがRAV4でも力強いとは言えないが、フラットなサーキットでは171馬力を絞り出す高回転型の特性が生きる。ダイレクトシフトCVTのMT的発進性、加速とエンジン回転がシンクロするステップ変速制御も、気持ちよさをうまく助長している。
走り味でRAV4との違いがもっとも明確だったのは、手応えを増した電動パワーステアリングの操舵力だ。RAV4のほうがスッキリ軽くスポーティな印象だが、公道で普通にゆったり乗るには新型ハリアーの落ち着いた操舵感がいいかもしれない。
期待が一つかなわなかったのは、RAV4のHVで気になるエンジンの振動・ノイズが、新型ハリアーでも解消されていない点。ノイズは遮音材などである程度抑え込めたが、振動はまだうまく対策できていないという。
荷室デッキボード背面の露骨な吸音材を見てわかるように、車両全体にはノイズ対策が入念に施され、3代目はもちろんRAV4に対しても大幅な静粛性向上が図られている。乗り心地もカローラから導入されたロール&ピッチを抑える減衰力最適化などと相まって、高級SUVにふさわしい上質さに仕上がっているだろう。
価格はまだ未公開。発売は6月中旬のようだ(17日?)。価格はほぼ据え置きとのウワサもあり、本当ならフルモデルチェンジの内容に照らすと実質的な値下げと言っていい。
日本で生まれ育った孤高の鷹。高級SUVの魅力を格段に高めて、新型ハリアーが間もなく地上に舞い降りる。狙った獲物は逃さない。
〈文=戸田治宏 写真=岡 拓〉
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