2020/05/28 コラム

左足ブレーキは「ペダル踏み間違い」の処方箋!|木下隆之の初耳・地獄耳|

■左足ブレーキって必要なの?

「ブレーキペダルは左足で踏むものなのですか?」

編集部の担当Kからこんな質問を受けた。

「なんでそう思った?」

「キノシタさんがディレクションしているレクサスのテレビCMにそんなシーンがあったから…」

僕の作品を観ているとは、出生な心掛けである。



※1分56秒のシーンに注目ください

確かにCMでは左足ブレーキのシーンを挟んでいる。クールであるばかりか、スポーツ性にも安全性にもメリットがあるからだ。


※上記動画のキャプチャー画像

「左足ブレーキシーンを映像に残したのは、世界でも僕が初めてだったはずだ。次に挑んだのがランボルギーニだったかなぁ」

「自慢ですか?」

「誰も褒めてくれないから、自分で自慢したのだ」

「でも僕は右足ブレーキで育ちました」

「そりゃ、君が昭和だからだ」

「キノシタさんよりはるかに若いですけど…」

というわけで、無知な担当Kに、左足ブレーキがいかに有効であるかを説明することにした。

■スポーツ走行だけではなく、公道でもメリットあり

「まずはスポーツ走行では圧倒的に有利である。スロッル全開からフルブレーキのまでの、足の載せ替えのタイムラグを減らすことができる。我々レーシングドライバーは、両方を同時に踏み込んで、オーバーラップの瞬間を意図的に作り出しているのだ」

「なるほど…。でもそれはレースに限った話ですよね」

「公道でもメリットがある」

「ボクでも?」

「例えば、段差を乗り越えて駐車する場面がある。だが段差を超えたら目の前は壁だ。つまり、アクセルペダルを強く踏まなきゃ超えられないのだが超えた直後の急停止しなければならない。こりゃもう、右足を載せ替えていたら間に合わないよね」

「狭い日本ではいいですね」

「アクセルの踏み間違い事故の防止にも役に立つぞ」

「…?」

「踏み間違いの事故の瞬間、ドライバーはブレーキペダルだと勘違いしてアクセルペダルを床まで踏んでいるのだ。突進しているからさらに足に力を込める。だからさらに勢いがついて壁を突き破る。でも、加速は右足、停止は左足と脳に叩き込んでおけばそんなミスは起こらない」

「高齢者にこれから習熟できますか?」

「確かにそれが気になる」

「せめて、AT限定免許者から教育したらどうだ? 最初から叩き込んじゃえばいい」

「僕でも間に合いますか?」

「知らん、君のことなど…」

〈文=木下隆之〉

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