2020/05/15 コラム

BMWロゴの由来は「プロペラに青い空と白い雲」ではなかった…|木下隆之の初耳・地獄耳|

■当たり前だと思っていたのに…

「BMWのエンブレムなんですけど、いわれをご存知ですか?」


●BMWロゴの変遷。(上の列左から)1917年、1933年、1954年(下の列左から)1974年、1979年、2007年

編集担当のKがそういって僕を試した。


仮にも我輩は、BMW Team StudieのエースとしてBMW・M4 GT4をチャンピオンに導いてきた。BMWのことで知らないことがあるわけがない。不躾な質問だと尻を蹴って飛ばすこともできたが、ここは大人になって真面目に答えてやることにした。パワハラの文字が頭をよぎったからだ。


●2020年からWebサイトなどコミュニケーションに使われる新しいBMWのブランドロゴ

「BMWはもともと航空機エンジンメーカーが発祥だったからだ。プロペラが高速回転するイメージに、青い空と白い雲を図柄としてデザインされたのである」

「やっぱりそうですよね」

「どうだ、納得したか…」

担当のKはぐうの音も出ない…、はずだった。

だが白々しく反論してきたのである。

「じつはそうじゃないらしいんですよ」

「そんな馬鹿な話があるものか…」

■正式に否定された「プロペラに青い空と白い雲」説

と言うわけで、早速BMWジャパンに問い合わせてみたら…。

「じつはですねぇ。『プロペラに青い空と白い雲説』ではないんですよ。BMWグループのクラシック部門ディレクターであるフレッド・ジェイコブスが証言しているのです」

「彼がなんと?」

「BMWのエンブレムが制作されたのは、1917年の10月5日です。創業直後です。BMWの前身であるラップ社のロゴの円を受け継いだものなのです。外周の円が2本の金色のラインで縁取られ、その中にBMWの文字を配したのです」


●BMWの前身は「ラップ発動機製作所(1913-1917)」。それは1917年10月から使われ始めた最初のBMWロゴにも見て取れる。ブラックの外周円に社名が入るデザインは、ラップ社の伝統を受け継いだものだった

「では、プロペラに青い空と白い雲ではないと?」

「そうなんです。ラッブ社のデザインがモチーフです」

「それは聞き捨てならない」

「BMWの広告には、飛行機の高速で回転するプロペラに、うっすらとBMWのロゴが浮かび上がるイラストが掲載されているのをご存知ですね」


●1929年に作られたポスター

「メッチャ有名なポスターです」

「ですが、あの広告用ポスターは、BMWが高性能な航空機エンジン開発メーカーだったことを宣伝するために製作されたものなんですよ」。

「だから「プロペラに青い空と白い雲説」が正しいと僕らは教えられてきた」

「ところが、あのポスターを製作したのが1929年です。エンブレムができてから12年も時が過ぎてからのことなんです」

「広告が後だと?」

「そうなんです」


●1942年、BMWは自らプロペラを会社のシンボルに結び付ける。「Flugmotoren-Nachrichten(航空機エンジンニュース)」という自社の出版物に、BMWロゴが回転するプロペラであることを裏付ける記事を掲載する。記事には、プロペラとBMWロゴが重ねられた航空機の画像が添えられていた

「いまさら言われても困りますね」

「すみません」

「みんなにウンチク自慢しちゃったし」

「たしかに、われわれは長い間そう語り継がれていることを正す努力をしてきませんでしたからね」

ぐうの音も出なかったのは僕だ。BMWグループのクラシック部門ディレクターがそう語るのだから、それ以上の反論の手段を持たなかった。

■BMWロゴを覚えるためのウンチクが!

「でしたら、もう一つウンチクを授けると言うことで許してもらえませんか?」

「と言うと…?」

「BMWのロゴは左上が青で、右上が白になっているのはご存知ですか?」


「覚えてないけれどわかるよ。いま見ているから…」

「覚えやすい方法があるんです」

「手ぶらで帰るわけにはいかないからね」

「青はドイツ語で「Blau」、白はドイツ語で「Weiss」と言います」

「英語ならば「Blue」と「White」だな」

「いや、BMWはドイツのメーカですからドイツ語で「Blau」と「Weissです」

「それでそれで…?」

「BMWのBの下が青を意味する「Blau」であり、Wの下が白を意味する「Weiss」なのである」

「なるほど…」

「これでウンチクを語ってください」

「それはありがたい」

「これでお許しくださいね」

「その代わり、誰にも公表しないでいただきたい。僕が言いふらすまでは…」

〈BMWロゴの由来と歴史についての詳細はこちらより〉

〈文=木下隆之〉

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