2020/04/26 コラム

交通取り締まりが劇的スムーズに!警察官は携帯端末「TAP」で何をやっているの?

あの携帯端末で何をやっている?

四角くて重そうなショルダーバッグを袈裟懸けにした警察官が、交差点の脇で“違反待ち”…そういうシーンを見たことがあるでしょ。あのバッグの中身は「TAP」(Traffic Advanced Portable System)だ。Advancedは高度な機能の、といった意味を持つ。どれほど高機能なのか、情報公開条例によりゲットした警視庁の契約書、仕様書を見てみよう。


●警官が持っているのがTAP

契約書のタイトルは「交通携帯端末システム用装置の借入れ」。リース契約で、期間は2015年12月1日から2020年11月30日まで。5年契約とは太っ腹である。


契約金額は、なんと月額3004万2360円(税込み。契約時の税率は8%)。充電器も含めて4700台なので、単純に割り算すると1台1カ月約6400円。TAPの運用開始がテレビニュースで報じられたとき「交通反則切符の発行などを迅速に行える」とされた。それっぽっちのためにけっこう金をかけるなぁ、と思って仕様書をよく見たら、あらびっくり、こいつはなかなかの優れものなんである!

IC免許証もナンバープレートもいけちゃう

まず、IC免許証をかざすと氏名や生年月日等のデータ(人定事項)を読み取る。「カメラ機能」(500万画素程度)によりナンバープレートの文字情報も読み取る。ほ~、便利なうえ、誤記がぐんと減るよ。

違反事項などを指またはスタイラスペン(タッチペン)で入力すると、青切符(交通反則切符)と反則金の納付書をその場でプリントアウトする。

反則金の額もTAPは自動的に算出する。納付期限(原則翌日から7日)は、休日を挟んだりするとややこしいのだが、それも自動算出。納付しない場合の交通反則通告センターへの出頭日まで自動算出して印字する。

また、クルマ、バイクはもちろん自転車も含め「登録情報の検索」ができる。盗難車両、何かの犯罪に使われたとして手配中の車両を見逃さないわけだ。

しかも、できるのは青切符の取り締まりだけじゃない。なんと駐禁取り締まりのための「確認標章」(黄色いステッカー)もプリントアウトできる。つまり、駐車監視員が持つ携帯端末とデジカメと携帯プリンター、あれと同じ役割を果たすのだ。

さらに、「交通事故取扱処理」もできるというから驚きだ。物損事故だけでなく人身事故にも使うのだろう、「自賠責保険番号等の入力」なんて項目まである。

ただし、いわゆる赤切符の作成はできないようだ。赤切符の違反は反則金で済まず、検察庁へ送致される。処罰には必ず裁判官が関与する。そういう手続きには不向きと、もしかして検察庁からダメ出しがあったのかも。

とはいえ赤切符より青切符のほうが圧倒的に多い。2018年のデータでいえば100枚中96枚が青切符だ。慣れない警察官が苦労して作成し、誤記もぽろぽろあったりする。TAPにより劇的にスムーズになるうえ、違反者や車両の電子的管理も同時にできるのである。すごいでしょ。えっへん、どんなもんじゃい。って私が威張ってどうする(笑)。

反則金の収入がダイレクトにTAPのリース料になるわけではないが、普通車の一時不停止(反則金7000円)を1件取り締まればお釣りがくる。1カ月約6400円は高くないかも。

もっとも多く配備されている署は?

さて、警視庁は4700台をどこへ何台振り分けるか、仕様書に載ってる。

警視庁本部交通執行課等 421台
第1~10交通機動隊   629台
高速道路交通警察隊    111台
各警察署(97署)    3539台

97署のなかで配備がいちばん多いのはどこだと思う? 渋谷署(58台)でも新宿署(52台)でもない。さてどこでしょう。テレビのクイズ番組のネタにしてほしい。答えは、じゃーん、東京23区から遠く離れた町田署(81台)なのである。同署のWebサイトによれば、管内に居住する人口は東京でいちばん多いそうだ。


さらに興味深いことがある。警察署の分は「地域」と「交通」に分かれている。地域とは地域課、つまり交番勤務の警察官だ。交通は交通課。でもって97署の合計は、地域課が2572台、交通課が967台。ほ~。

交番勤務は、日本の警察官の基本的な仕事だ。雑務が多い。私も、拾った現金を届けたり自分がパスモを落としたり、居酒屋の場所を尋ねたり、お世話になっている。そのうえ交番の警察官は、110番通報があれば直ちに現場へ臨場し、暴れる犯人と対峙しなければならない。

日々の仕事を忙しく頑張り、交通取り締まりの細かなことに慣れない地域課の警察官にとって、TAPはじつにAdvancedな「神アイテム」ではないか。仕様書を見る限りそう思える。

TAPがあれば警察官でなくても取り締まれそうだ。将来は駐禁取り締まり以外も民間委託する、そこを警察庁は視野に入れてたりしてね。

〈文=今井亮一〉

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