2020/04/20 コラム

最難関の被写体をレンズに収めろ!「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第4回〜エゾリス〜」

ドライバー3月号(2020年1月20日発売号)からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国を最新SUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第4回は、小さくてすばしっこく、撮影するには一番やっかいな動物のひとつ『エゾリス』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します


 

「エゾリス」について

帯広にはたくさんのエゾリスがいる。朝、公園に行けば、いつも元気に走りまわっている姿を見ることができる。

何度も訪れた町だが、エゾリスがこんなにいるとは知らなかった。ラリーで来ていたのでそこに目を配るほど余裕はなかったのだろう。早朝からラリーマシンのテスト、レッキ(事前試走)、ラリー本番、ゴールして疲れて爆睡、帰京というパターンが多かった。

白いエゾリスの情報が発端となって、じつは帯広市内にはたくさんのリスたちがいることを教えてくれた。

確かにアルビノ(先天性色素欠乏症)の個体は珍しくきれいだが、本来のエゾリスたちの姿も愛きょうがあって見ていて飽きない。




エゾリスは長い耳の房毛が特徴。角度によってはひとつにまとまるので、まるで頭のてっぺんから毛が生えているようにも見える。いわゆる不思議な髪型だ。伸びたベッカムヘアかな?(笑)

白いアルビノの動物は目立つだけに野生では生き残ることが難しいと聞く。しかし、話題になったことで白いエゾリスの周りには人がつねにいて、キツネとか捕食者が近づくタイミングが減っただろうから、白いリスにしてみれば騒がしいのは迷惑以上に運がよかったのかもしれない。

エゾリスの寿命は3〜4年と言われているが、白いリスにはできるだけ長く妖艶な姿を見せていてほしいものだ。






「撮影裏話&テクニック」


●ソニー α7Ⅲ + FE200-600mm F5.6-6.3G

 

先回りしてじっと動かずに待つ


小さくて動きまわるエゾリス。跳ねるように走るだけでなく、突然立ち止まり、直立不動。そして木に駆け登り、枝から枝へとジャンプ!

これをファインダーで捉え続けるのは至難の業。相手の動きを見て先回りしてカメラを構えないかぎり、写るのは後ろ姿ばかりである。

予測と違う方向に逃走(笑)というハズレはあるとはいえ、来そうな位置でじっと動かずにカメラを構える。これが意外と功を奏し、だいぶ前で写すことができた。

小さくて動きが不規則なので、ファインダーで追い続けることは難しい。オートフォーカス(AF)のフォーカスエリアのチョイスも悩むところだ。ワイドでは被写体の小ささで背景にAFが引っ張られることもある。フレキシブルスポットはLにしてもフォーカスエリア内で追い続けることは不可能。

そこでケースバイケースではあるが、フレキシブルスポットよりやや広めの中央を選んでエゾリスを追った。

枝を飛び移るシーンでもいい具合にフレームに入り、AFが効いてくれた。



 

[撮影データ]

機材:ソニー α7Ⅲ
レンズ:FE200-600mm F5.6-6.3G
撮影モード:マニュアル
シャッタースピード:1/500絞り:f8.0ISO:AUTO(500)
焦点距離:200mm


このシーンはソニー α7Ⅲ+FE200-600mm F5.6-6.3Gでの撮影。

軽くて取りまわしのいい組み合わせで、野生動物にはピッタリなのだが、相手がこう素早くては600mmで追うのは得策ではない。止まり物ならいいが、相手が小さいからといって望遠にこだわりすぎるとまず追い切れない。

じつはこの写真は、どこへどう動くかわからないエゾリスに合わせて200mmにズーミングして撮影。その後トリミングをしている。画面からはみ出すことを考えれば、広く撮って切り出すほうがよっぽど歩留まりはいい。たまにノートリミングにこだわる人がいるが、オイラ的には気にならない。その辺の話はまたそのうち。

しかし、逆さになったまま木から木へジャンプして移動していくなんてちょっとビックリ。驚きながらもファインダーに入れ込めたのは、欲張らずに画角を広めにしていた恩恵なのである。



「帯広という町」


写真=木内 隆(三菱自動車)


ドライバーにとってもラリーファンにとっても帯広は聖地である。日本で初めてWRCが開催された場所だからだ。

スタート地点のアーケードでの怒とうのような歓声は一生忘れることはない。日本人も集団心理が加わるとあんなに興奮して騒げるんだと初めて知った。怖いぐらいの騒ぎだった。

ラリー北海道やWRCジャパンに参戦、ゼロカーをドライブ、取材したりと幾度となく訪れた帯広。これからは動物探しに行くことになりそうだ。



「今回のSUV……三菱 eKクロス」

軽自動車の枠を超えたデザインと装備


eKクロスの撮影場所はWRCのスタートだった市内のアーケード。あのにぎわいがなくてちょっと寂しかったけど、感慨深く通り抜けた。






デリカD:5テイストのシャープなフロントマスクを与えられた軽自動車はどんなもんかな? という疑問があった。だが実車と対峙してみると、小さいクルマでもうまくまとまったデザインになるものだと妙に感心してしまった。

52馬力のNAエンジンはトルク特性がよく、ストップ・アンド・ゴーの多い市街地でストレスなく走れる。エンジンの静粛性も以前の三菱の軽とは異なり、快適性とともに向上している。

今や軽自動車だからという言い訳が利かなくなってきている安全装備も、自動ブレーキからアクティブクルーズコントロール、レーンキープ機能まで付いたマイパイロットがオプションで用意されて万全だ。

クルマを貸してくれた帯広三菱は、WRCジャパンのスタート前には地場のホストとして自動車メーカーばりにエントラントの面倒を見てくれ、大変お世話になっただけでなく、オイラがアフリカラリー選手権に参戦した際には大量のスペアパーツを特価で供給してくれたという恩があるディーラーなのだ。

今回もまた世話になってしまった(笑)。




帯広三菱自動車販売

http://www.coltmotor.com/


■帯広三菱 帯広本店

北海道帯広市大通南23丁目
TEL:0155-24-1115
営業時間:9:00〜17:30
定休日:火曜日、祝祭日


■主要諸元

三菱 eKクロス
G(CVT/4WD)
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1660mm
ホイールベース:2495mm
最低地上高:155mm
車両重量:910kg
エンジン:直3DOHC
総排気量:659cc
エンジン最高出力:38kW(52ps)/6400rpm
エンジン最大トルク:60Nm(6.1kgm)/3600rpm
モーター:交流同期電動機
モーター最高出力:2.0kW(2.7ps)/1200rpm
モーター最大トルク:40Nm(4.1kgm)/100rpm
燃料/タンク容量:レギュラー/27L
WLTCモード燃費:18.8km/L
タイヤサイズ:165/55R15



「地元グルメ」


何年のWRCジャパンだったか忘れたが、ラリー前の準備で昼飯を食う時間もなくサービスポイントで過ごしていたとき、カレーのテイクアウェイが届いた。

時間が惜しいだけで選んだカレーだったが、シチュエーションも加わり驚くほどおいしかった。それが帯広にあるカレーのチェーン店、インデアンのエビカレーだった。

もちろん店で食べてもおいしく、帯広に行くと毎回、楽しみにしている味なのである。




コロナ対策で外食しづらい今、このお持ち帰りカレーがオイラんちの近所にあったらなーとつくづく思うのである。



〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている

ドライバーWeb編集部

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