2020/04/11 コラム

ナンバープレートの基準が厳しくなる? クルマの顔は大丈夫か!?

明確な基準がついに明確化された

2021年4月1日からクルマのデザインが変わるというのは、本当か?

ウソか本当かといえば、本当だ。すでに平成28年2月に国土交通省から「ナンバープレート(自動車登録番号標、車両番号標等)をカバー等で被覆することの禁止のほか、一定の位置・方法において表示しなければならないことを内容とする道路運送車両法及び自動車検査独立行政法人法の一部を改正する法律」が発表されている。じつはすでに4年も前の2016(平成28)年4月から施行されている。

これまでナンバープレートの表示方法は、条例などで規制したり道路交通法で規定していた。だが、それまでの道路運送車両法では、ナンバープレートは見やすいように表示しなければならないこととされているだけで、明確な規定はなかった。そこで法令を整備することによって2016年4月1日以降は、ナンバープレートについての基準が明確化され、ナンバーを透明なプラスチックなどでカバーすることや法規に関係ないシールなどを貼り付けることも禁止された。さらに大型ダンプによく見られる汚れた状態や、アメリカンバイクが行っているような縦位置に回転させたり、折り返すことなどが明確に禁止された。これらは道交法ではすでに禁止されているが、道路運送車両法も明確な基準にすることで、車検(継続検査)時にその解釈をめぐってトラブルになることがなくなるわけだ。

ではクルマのデザインがこれで変わることはないと思うかもしれないが、この法律には経過措置が取られていて2021年4月以降に初めて登録を受ける自動車などのナンバープレートについて規定どおりにしなければならないとされている。一定範囲の上下の向きや左右の角度も明確化される。当然自動車メーカーはこれらの規制を織り込み済みだから、継続販売されているクルマが2021年の4月にフロントマスクのデザインを変更しなければ事実上販売できなくなるというモデルはないだろう。


図を見ていただけばわかるが、フロントの左右の向きは最大10度まで傾けられる。軽自動車によく見られるオフセットされたナンバーをフロントバンパーにそった角度にすることは難くなる。もしかすると一部の輸入車は規制に合わせて、ナンバープレートの取り付けステーなどを加工しなければならなくなるかもしれない。

“キャラクターもの”は難しくなる?

もっとも影響を受けそうなのはディーラーオプションやアクセサリーパーツを製造しているメーカーなどだ。というのはディーラーオプションに多いナンバーのフレームや取り付けボルトも、明確な基準が示されているからだ。大きなサイズのキャラクターがフレームやボルトに付いていた場合、車検が受けられなくなる可能性がある。フレームやボルトを購入するときには注意が必要になってくるわけだ。

今回のナンバーの件は、クルマのデザインに大きな影響を与えないだろうが、過去には自動車メーカーや架装メーカーが頭を悩ませたこともあった。直近では2009(平成21)年に通達が出されたクルマの外装に関する新たな保安基準。歩行者保護などを主目的にした突起物に対する規制だ。

クルマの保安基準は欧州(ECE)と協調していて相互認証によって基準や規制が統一化されつつある。過去には日本では認められていなかったバックフォグランプも、相互認証によって日本での装備が認められた経緯がある。以前問題なったのは、葬式などで遺体を搬送する宮型の霊柩車だった。日本独自のクルマだけに新基準に引っかかることが見落とされていたのだ。このときは国土交通省の自動車交通局技術安全部長名で通達が出され、当面の措置として霊柩車については新外装基準を適用しないこととし、従来どおりの扱いにするとされた。じつはタクシーのルーフに載せられている行灯(あんどん)も、この規制に引っかかるものがあり、同様の経過措置が取られた。あれから時間が経過して霊柩車は、ベース車をワゴン化するスマートなタイプが主流になったが、地方では宮型も根強い需要があるようで現在も製造されている。

クルマのデザインは法律や規制をクリアしてデザインされているが、それがグローバルモデルとなるとさらに難しいことが容易に想像できる。デザイナーはカッコよさや使い勝手を追求しながら、各地の規制をクリアできるようにデザインをしているわけだ。

〈文=丸山 誠〉

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