2020/03/23 カー用品

【オールシーズンタイヤはあり?】雪道性能を試してみた。グッドイヤー編

季節の変わり目の悩みといえば、タイヤ交換。冬用と夏用の交換作業は手間がかかるうえ、場合によっては交換コストも必要になる。保管するにも意外と場所を取る。そんな悩みを解決するのが、通年履き続けられるオールシーズンタイヤ。普通に走行できるし、突然の降雪時も走れる。でも、雪が積もったところで本当に安心して走れるのだろうか? 今回、グッドイヤーが行ったオールシーズンタイヤ試乗会で、同社のスタッドレスタイヤと比較試乗した。その実力はいかに!?


●グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズハイブリッド」と「アシュアランス オールウェザーレディー」の雪上性能を丸山 誠が試乗インプレッション


雪上での真価を試す!

日本市場にオールシーズンタイヤというジャンルを確立させたのは、グッドイヤーのベクター4シーズンズだったといっても過言ではない。オールシーズンタイヤはその名のとおり年間を通して使用できるタイヤで、ドライやウエット、積雪路面など多くの路面に対応するため、履き替えなしで走行可能なタイヤだ。じつは世界初のオールシーズンタイヤをリリースしたのもグッドイヤーだった。1977年のTIEMPO(ティエンポ)がそれで、以来オールシーズンタイヤの開発を続け、進化させてきた。


●グッドイヤー ベクター4シーズンズ

現在ベクター4シーズンズは同ハイブリッドに進化して、サイズラインアップを拡大。セダンやコンパクトカー用はもちろん、軽自動車用の13インチを5サイズも用意しているから多くの人が選びやすくなった。降雪地や寒冷地ではウインターシーズンはスタッドレスタイヤに履き替える人が多いためオールシーズンの需要は少ないが、年に数回雪が降る地域やスキーやスノーボードといったウインタースポーツに出かける非降雪地域のユーザーにオールシーズンはピッタリ。春になり新品タイヤに履き替えようと考えている人には、新たな選択肢になるわけだ。


●ベクター4シーズンズはV型のブロックパターンを採用

2シーズンの装着で感じた“利点”

筆者はベクター4シーズンズハイブリッドを2シーン以上愛車に装着し、雪道はもちろんアイスバーンも走り、夏も使い続けた経験での結論は、非常に便利なタイヤといえる。その理由は、なによりもタイヤの履き替えが不要であるということ。“オールシーズン”だから当たり前なのだが、交換時期を考えなくてすむことに加え、交換作業をしなくてもいいのは金銭的にも肉体的にもラク。季節の変わり目に急に寒冷地に取材に出かけることもあるが、サマータイヤだった場合は雪が降らないかとても心配だった。だが、ベクター4シーズンズに替えてからはそんな心配はなくなった。もちろん手間がかかる履き替え作業もない。


●ベクター4シーズンズハイブリッド

●試乗では同社のスタッドレスタイヤ「アイスナビ7」と乗り比べた

圧雪路を何度も走った経験からいうと、ベクターはスタッドレスに迫るグリップ性能を見せる。硬くしまった圧雪路でステアリングを左右に振ってもしっかりと雪をつかみ、横方向に流れることはほとんどない。今回試乗したようなテストコースで試すと圧雪路で切り出しのレスポンスがやや鈍いことがわかるが、これは限界走行に近い領域でのことだ。その特性を確認できれば一般道でも余裕をもって走れるから、スタッドレスタイヤとの差をほとんど感じることはない。


アイスバーンには注意が必要

ベクターだけでなく、オールシーズンタイヤ全般にいえることは、交差点近くや日陰のアイスバーンにはやはり注意しなければならないということ。アイスバーンは最新のスタッドレスタイヤでも苦手とする場面なので、オールシーズンタイヤを装着している場合はさらに気をつけて走ることが求められる。

とはいえ、交差点の近くでは、スタッドレスタイヤを装着した場合よりも早めのブレーキングを心がければいいし、日陰などのカーブでは凍った路面に備えて徐行する。路面状況を見極めてメリハリをつけてドライブすれば、オールシーズンタイヤでもスノードライブで困ることは少ないだろう。

ドライ路面でのしっかり感や音も許容内

いっぽう、ベクター4シーズンズは、夏の高速道路を走ってもトレッドのコンパウンドが軟らかくなり過ぎることがなく、速めのレーンチェンジでも腰砕けになることは少ない。サマータイヤと比べると操舵時のレスポンスやしっかり感は劣るが、スタッドレスタイヤで乾燥路を走るよりずっとしっかりしている。知らずに乗ればサマータイヤを履いていると思ってしまうかもしれない。それほどサマータイヤに近い特性を持っているのだ。

だが、ロードノイズというかパターンノイズは少し気になってしまう。新品時は30km/hくらいまでの低速域でスタッドレスタイヤのようなパターンノイズが少し耳につく。そして2シーズン使って摩耗が進行すると中速域までノイズが気になるようになった。これは雪を噛むため、そしてエッジ効果を高めるためにサイプ(細かい切れ込み)が多いため。スタッドレスタイヤも似た傾向にある。ただ、このノイズも履き替えなくてすむ、という利便性を考えれば、納得できる範囲だ。



●SUV向けのオールシーズンタイヤとして設定する「アシュアランス オールウェザーレディー」もスタッドレスタイヤと比較試乗

もうひとつのオールシーズン「ウェザーレディー」

今回の雪道試乗では新オールシーズンタイヤのアシュアランス ウェザーレディー(以下ウェザーレディー)も試した。SUV用のオールシーズンでトレッドパターンがベクター4シーズンズとは異なっている。ベクターはオールシーズンタイヤに多いV型のトレッドデザインだが、ウェザーレディーはスタッドレスタイヤに近いパターンを採用している。



●「オールウェザーレディー」のパターンデザインはスタッドレスタイヤと似たもの

スタッドレス並みの安心感

トヨタ RAV4に装着してテストコースを走るとベクター4シーズンズによく似た特性を示す。圧雪路ではブレーキングやトラクションがかかる際の縦方向のグリップは十分で、スタッドレスタイヤに迫る性能を発揮してくれた。車両重量が重くなりがちのSUVにとってブレーキング時のグリップの高さは安心感に結びつく。


●アシュアランス オールウェザーレディー

●SUV向けスタッドレスタイヤ「アイスナビ SUV」と乗り比べた

コーナリングではステアリング操作に対するノーズの動きは、半歩おいてからグッと踏ん張って曲がるという印象。コーナリング中にさらにステアリングを切り込んでも追従性がよく、グリップ力の高さを感じられた。ベクター4シーズンズだと、同様の動作での反応のよさはそれほど感じられなかったが、ウェザーレディーはコーナリング時のコントロール性が高いのだ。

切り増すような場面でもグリップ力が抜けず、そこからアクセルを踏むと徐々に横方向のグリップ力が低下するのがわかり扱いやすい。RAV4の走行モードを「スポーツ」にすると、アクセルオンでトラクションをかけながらリヤをスライドさせる積極的な走りができる。これはRAV4の走行特性が大きく影響しているが、しっかりとトラクションがかかるので雪道でのドライビングを楽しめる。


SUVユーザーでタイヤの履き替えを検討している人は、オールシーズンもショッピングリストの候補に入れたい。雪道だけでなく、キャンプ場の未舗装路や濡れた芝生でもオールシーズンタイヤは安心感が高いからだ。

〈文=丸山 誠 写真=山内潤也〉

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