2020/03/17 新車

【ニューカー試乗記】BMW X7 1000万円超のラグジュアリーSUVの実力とは?

日本ではちょっと大きすぎ?

ついにBMWのSUV(BMWではSAV=スポーツ アクティビティ ビークル)は、これまでのX5、X6を上まわるボディサイズのX7を登場させた。


全長5165mm、全幅2000mm、全高1835mmという堂々したサイズで、クルマが動くと山が移動するように感じるほど大きい。ライバルは登場したばかりのアウディQ8とメルセデス・ベンツGLSといっていいだろう。Q8の全長は4995mm、全幅1995mm、全高1705mmと少しだけ小さく、メルセデス・ベンツGLSは全長5140mm、全幅1980mm、全高1850mmと、X7とほぼ互角のサイズ感だ。まあ、このサイズになると日本の道路と駐車場事情ではちょっと扱いづらいサイズともいえる。これらのクルマに共通するのは、アメリカ市場を強く意識したモデルで、主戦場は北米地区だ。日本導入は、SUVのイメージリーダーとしての役割もある。


X7のフロントフェイスを見ると、やはり最新のキドニー・グリルが付けられている。新たなファミリーフェイスとなったグリルは、縦に長くなったため違和感があるというユーザーもいるようだが、これによってSUVらしい押し出し感と存在感を高めていることも事実だ。エンジンがかかったXドライブ35dデザイン・ピュア・エクセレンスに近づくとディーゼルであることがわかるが、その車外騒音はよく抑えられていて耳障りではない。


意外にソフトな乗り心地

がっしりとした操作感のドアを閉めると、エンジン音を含め車外の音がピタリと遮音される。この静粛性はプレミアムモデルならではの感覚で、社会の喧騒から離れプライベート空間でリラックスできる瞬間だ。BMWに共通するスイッチ式のシフトレバーでDをセレクトして走り出すと、ボディがクルーザーのように少し揺れる。BMWのモデルとしては意外にサスペンションがソフトなのは、4輪アダプティブ・エア・サスペンションを標準化しているためだ。カメラによって進行方向の路面状況をセンシングしてサスペンションだけでなく、ダンパーの減衰力やロール制御行うエグゼクティブ・ドライブ・プロによって、快適な乗り心地と操縦安定性を両立させている。


特に走り出しはソフトでゆったりとした揺れを感じるほど、緩い制御にしているようだ。だが、一般道や高速道路ではボディをフラットに保ち大型車ならではのどっしりと安定した操縦感覚がある。路面状況は各ホイールのセンサ—でも感知し、40mm車高を自動調整するため、高速域のレーンチェンジはスムーズかつ安定している。試乗車は22インチのホイールを装着していたため低速域の荒れた路面では、タイヤがブルッとする振動がやや残っていたが、全体的によくしつけられたエア・サスペンションだ。


ディーゼルとは思えないほど静か

直6ディーゼルの吹け上がり感も35dの魅力のポイント。アクセルを軽く踏み込むだけで2.5トン近いボディを軽々と加速させ、その加速感は極めてスムーズだ。エンジン回転の上昇のスムーズさはガソリンエンジンと勘違いするほどで、アクセルを途中で踏み直してもディーゼルらしいノイズはまったく聞こえてこない。スポーツモードを選んで加速するとゼブラゾーンのかなり手前の4300回転でアップシフトされる。最高出力が4000回転だからこれがもっとも速いタイミングのはずだが、レッドゾーンが6500回転から始まるのを見るとちょっともったいない気もしてしまう。また、最近のBMWに共通する液晶メーターのタコメーターのデザインが、反時計回りなのはいまだに馴染めない。



X7の特徴は3列シートを装備している点だ。2列目席はゴージャスなセパレートタイプで、3列目席へのアクセスもいい。アメリカでは子供の送り迎えにミニバンではなく、こうした大型のSUVを使うことが多いようで、ミニバンの代替え車として人気が高まっている。6人乗りモデルでは、2列目が2席の独立したコンフォート・シートとなり、広々と贅沢な空間を実現している。


今回は高速道路で渋滞に遭遇しなかったためハンズオフを試すことはできなかったが、こうした最新の運転支援システムによってロングドライブでも安全かつ快適な走りが楽しめる。

<文=丸山 誠 写真=山本佳吾>


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