2020/03/03 Q&A

1馬力ってほんとに「馬1頭分」? 600馬力のGT-Rと馬600頭が引っ張りあったらどっちが勝つのか

●馬600頭とGT-Rが勝負したら

「馬力」はクルマやバイクのエンジンパワーを表す単位として使われていますが、「馬の力」と書くから「1馬力=馬1頭のパワー」と考えている人が多いのではないだろうか?

じつは筆者もそう思っていたひとりなのだが…。


●日産GT-Rニスモ

例えば国産最強の日産GT-R(ニスモ)は600馬力。つまり、GT-Rと馬600頭が左右から引っ張り合う勝負をしたら、どちらが勝つのだろうか? いやいやどう考えても馬が勝つに決まっている。600頭もの馬に、どうやってちゃんと引っ張らせるかという方法論は置いておいて…。

「1馬力」は人間ひとりでも発揮できる!?



実際のところ、馬1頭が発生する力を馬力に換算すると、どのぐらいになるのだろうか。

馬力とは仕事率を表す単位で、その定義は「75kgの物体を毎秒1メートル動かす仕事率」となっている。このぐらいの仕事ならば、力に自信のある成人男性が気合を入れて「えい!」と頑張れば、瞬間的には「1馬力」を発生させることもできるだろう。



また、一言に馬といってもさまざまな種類があるのはご存知のとおり。なかでも競走馬として活躍する「トップアスリート」ことサラブレッドの体重は450〜500kg程度。この巨体がレース中、平均速度50〜60km/hで駆け抜け、トップスピードは70km/h以上に達するらしい。

450kgのサラブレッドがスタートから数秒間、毎秒3メートルずつ加速していく時に発生している馬力について、計算を単純化してみると「450kg/75kg×毎秒3m」=「18馬力」になる。

GT-Rニスモと馬が引っ張り合いをしたならば、瞬間的な一発勝負であれば(どちらも「最高出力」をいきなり発揮すれば、と言ってもいいかもしれません)、馬600頭どころか、サラブレッドなら33頭でいい勝負になる計算。600頭はちょっと想像つかない数字ですが、33頭ならなんとか? 本当にやったとしたら、すごい絵面である(動物愛護の観点から当ウエブサイトでオススメしません)。

ただ、競走馬がレース中に「継続的に発生している馬力」は2〜3馬力とされている。GT-Rと綱引きのような1分間ぐらいの長期戦を行うとすると、馬は200頭以上必要になってくる…。GT-Rって凄い! もっとも、馬の体重などを考慮すれば勝ち目はないだろう。

仏馬力に英馬力…国によって定義が違う


ちなみに、この「馬力」という単位はなかなか曲者。国によって馬力の定義が異なるからだ。

馬力には、日本やドイツなどを中心に使われている仏馬力こと「ps」(※)と、アメリカやイギリスで使われている英馬力こと「hp」(Horse Power)、「bhp」(brake horse power)があって、厳密には1psと1hpのパワーが異なる(1ps=0.986hp)。
※メートル法の発祥がフランスであることから「仏馬力」と呼ばれるが、表記のpsはドイツ語の馬の力「Pferdestarke」(「a」の文字にはウムラウトが付く)の略に由来します。英馬力は考え方自体は仏馬力を参考とするが、ポンド・フィートを算出の基準にしているため差異が発生する。


●GT-Rニスモのエンジンは3.8LV6ツインターボエンジン。出力は441kW(600ps)/6800rpmを発揮

そのため、そうしたバラつきのある単位ではなく、もっと国際的に共通した単位で表そうということで、日本では1999年、仕事率を表す単位として「ワット」(W)の使用を義務付ける「計量法」が施行された。バイクやクルマの出力は大きく、キロワット(kW)が単位になっている。(1ps=0.7355kW)。

とはいえ、エンジン出力のキロワット表記に対し、まだまだ多くの人にとってピンとこない実情も(「馬力」表示の歴史は長かったので)。300馬力のエンジンを「最高出力220キロワット」といわれても、ちょっとイメージがわかない。

計量法でもエンジンなどの内燃機関、蒸気機関、タービンなどに限り、暫定的に馬力での表示を認めています。カタログなどにもキロワットと共に、カッコ書きなどで馬力が示されているケースがほとんどである。

〈まとめ=ドライバーWeb編集部 ※原案=紺野陽平〉

ドライバーWeb編集部

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