2020年2月20日、ついに10代目となる新型アコードが日本に上陸した。1976年誕生の初代以来、世界120を超える国と地域で累計2000万台を販売してきたホンダを代表するミドルサイズセダンが満を持しての登場だ。北米では2リットルターボとハイブリッドを用意するが、日本ではハイブリッドのみの設定となる。
北米での発売は2017年10月。それから2年以上経ってからの日本導入となるわけだが、これは最近のホンダにはよくあること。例えばシビックにしかり、CR-Vにしかり。海外での高評価を受けて、日本でも販売されるという流れが続いている。それらモデルの主要市場が海外にあるわけだから、当然のことではある。
ただ、海外での「高評価」、すなわち売れ行きが順調だったシビックやCR-Vと比較すると、アコードはそれほど順調だったわけではなさそう。2019年の北米での売れ行きを見てみよう。
■2019年 北米新車販売台数ランキング
1位:フォード Fシリーズ→89万6526台
2位:ラム(クライスラー)ピックアップ→63万3694台
3位:シボレー シルバラード→57万5600台
4位:トヨタ RAV4→44万8071台
5位:ホンダ CR-V→38万4168台
6位:日産 ローグ→35万447台
7位:シボレー エクイノックス→34万6048台
8位:トヨタ カムリ→33万6978台
9位:ホンダ シビック→32万5650台
10位:トヨタ カローラ→30万4850台
11位:ホンダ アコード→26万7567台
ピックアップトラックを含むライトデューティビークル全体の販売台数は前年比1.6%減となだからかな減少傾向ながら、総数としては1.7億台超え。デトロイト3のピックアップトラックがトップ3を占めている。
ピックアップに続き、2017年にベストセラーセダンのカムリを抜いたSUV勢がランキングにそのモデル名を連ねている。それらピックアップ&SUV勢に続くのが、やはりカムリ。セダン人気が落ち込むなか、アメリカ人好みの派手めなデザインが受けている…?
そんな最大のライバルであるカムリに、アコードは大きく水を開けられてしまった形だ。その理由を探ってみると、どうやら単純に「人気がない」というわけでもなさそう。米国ホンダ広報部にそのあたりの実情を聞いた。
2019年、アコードの販売台数が振るわなかったのは、カムリ vs ソナタ(ヒュンダイ)の値引き合戦(リース)が激化したのが原因らしいのだ。
価格の値下げでリセールバリューが下がれば、資産価値の低下に直結する。ホンダはそれを嫌い、あえて生産調整をしていたというのだ。北米ディーラーからは、「(アコード自体に不満はないので)販売促進のインセンティブ(奨励金)が欲しい」と要求されている状況とのこと。
V6エンジンをやめ、2Lターボにしたパワートレーンに不満があるのでは?と勘ぐったが、「V6の搭載をやめたことでフロントオーバーハングを切り詰めたFRライクなデザインも好評」とのこと。
また、ハイブリッド専用車「インサイト」の車格が大きくなったがゆえにアコードのハイブリッドモデルと食い合いをしているのでは?とも想像したが、「アコードは、ハイブリッドの割合も拡大しており、インサイトとの食い合いもない」という。
ちなみにカムリは、フルモデルチェンジから時間がたっており、リースの条件をよくしている。頭金2999ドルで、月額219ドル×36回とのプランを打ち出している(ヒュンダイは、フルモデルチェンジしたばかりのソナタを全く同じ条件…のみならず、頭金はさらに安い2699ドルにしている)。
リセールバリューを下げないよう配慮するホンダは、カムリとソナタの販売合戦には参加しないという立場を取っている。つまり、ピックアップやSUVなどに人気が集中するなか、販売台数のみを追うクルマではないということだ。
ちなみに新型アコード、クルマの出来はかなりよさそう。ハイブリッドは、いわゆる2モーター式でモーター駆動を幅広いシーンで味わえる。北米にある2リッターターボはシビック タイプRと同じエンジン(タービンは別)で、アコード市場最強の252馬力を発揮。組み合わされるトランスミッションは10速AT、そして6速MT。かなりスポーティなグレードだ。
(クルマ好きとしては、ぜひ後者の2リッターターボも日本に…)
ハンドリングのよさ、そして後席の広さなどセダン好きにはけっこう刺さりそうな新型アコード。日本での売れ行きがどうなるのか、注視していきたい。
〈文=ケニー中嶋〉
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