2020/01/28 Q&A

ミシュランのマスコットはなぜ白い? ホントの名前はビバンダム? ミシュランマン?

●今はとてもあいらしい顔をしている

パンクしにくい空気入りタイヤをアピール

フランスに本拠地を置くタイヤメーカー、ミシュラン。世界で初めてラジアルタイヤを製品化、さらにはミシュランガイドを発行するなど、知らない人はいないであろう世界規模の企業だ。

そんなミシュランのマスコットは白い。ビバンダム、またはミシュランマンと呼ばれる。1898年4月に誕生、今年でじつに122歳にもなる。



始まりは、1894年にフランスのリヨンで行われた博覧会。入口の両側では、大きさの異なるタイヤが山のように積まれ、来場者を出迎えていた。それを見た創業者のミシュラン兄弟の弟エドワールが「腕をつけたら人間になるじゃないか」と兄のアンドレに言ったのがきっかけとのこと。


●右手にはクギやガラス入りのグラス、左手には葉巻

その後、アンドレは広告デザイナーのオ・ギャロと会った。タイヤのパンクが日常茶飯事だった当時、クギやガラスなどを入れたグラスを例のタイヤ男に持たせれば、「空気入りタイヤは障害物があってもそう簡単にはパンクしない」といったいいアピールになると考え、「ヌンク・エスト・ビバンダム(ラテン語で「いまこそ飲む干す時」という意味)というキャッチフレーズが付けられたという。

ビバンダム? ミシュランマン? ホントの名前は

そのとき名前はまだ決まっていなかったが、レースドライバーから「あっ、ビバンダムが来た!」と呼ばれたのを機に、ビバンダムと呼ばれるようになったそうな。そう、最初は「ビバンダム」と呼ばれていたのだ。

ちなみに、日本ミシュランタイヤの公式サイトをのぞくと、「ミシュランマン」と呼ばれている。なぜビバンダムではないのだろうか? 広報部に問い合わせてみた。

◇◇◇

ミシュランマンはもともと「ミシュランの製品やサービスの象徴」という位置づけです。フランス本国では長きにわたりその位置づけで親しまれていたために当初の名前「ビバンダム」で呼んでいますし、愛称である「ビブ」という名称でも呼ばれています。

ただそのほかの国では呼び名としてビバンダム(ビブ)ですと端的に弊社へのイメージや理解がしにくいため、現在では「ミシュランマン」とさせていただいております。

つまるところ呼び名としてはビバンダムでもミシュランマンでもどちらも正解です。そのため日本でもSNSはもちろんサーキット、各イベントで「あ、ミシュランマンだ!」と呼ばれることもありますし、古くからご存じの方は「ビバンダムと写真撮らせてください!」、また「Bib(ビブ)!」という呼び方や表記をされる方もいらっしゃいます。

◇◇◇

たしかにビバンダムという呼ばれ方の経緯を知らない人にとっては、ミシュランマンという呼び方のほうがミシュランという企業を強くイメージしやすいだろう。

なぜ白いのか? ミイラなの?
 
そういえば、なぜ彼は白いのだろうか? タイヤって黒いはずじゃ…。これも、古くからタイヤをご存じの方には言わずもがななネタではあるが、改めて。

今では黒いのが当たり前のタイヤだが、じつは当時はまだタイヤは黒くなかったのだ。タイヤが黒くなったのは1918年、今ではミシュラン傘下のBFグッドリッチが初めてタイヤの材料にカーボンブラックを採用したときから。カーボンブラックを採用し、タイヤは劇的に性能が向上した。

だったら、生ゴムの色(飴色)なのでは?と疑問が湧くが、確かに当時タイヤは飴色、でも彼は白色。



じつは、当時タイヤはまだまだ高級品。タイヤは1本1本白い紙に巻かれて売られていたのだ。その紙にくるまれたタイヤを重ねてできたのが彼。あの白は、タイヤの色ではなく、包み紙の色だったというわけだ(包帯ではないが、確かにミイラっぽくも見える)。

ちなみに、なぜ最初の彼はメガネをしているのだろう。日本ミシュランタイヤの公式サイトには、「最初にミシュランマンが登場したころ、車は上流階級の人しかもっていませんでした。そんな上流階級の人たちは、丸メガネを掛け、葉巻を吸い、ワインを飲んでいたので、当時のミシュランマンはこの姿を反映させたものだと言われています」とある。



最初はなんだか怖かった彼も、どんどん表情は柔らかく、そして笑顔に。時代とともに、彼も進化している。でも、今後タイヤの色がさまざまに変化したとしても、上記の歴史を踏まえれば彼の体はずっと白いままだろう。1本1本大事につくっているというその思いが、彼をとおして伝わってくるのである。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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