2020年1月15日より東京・六本木のAXISギャラリーにて「2020日本レース写真家協会報道写真展 COMPETITION」が開催されています。この写真展は、来年50周年を迎える日本唯一のモータースポーツ写真家協会 JRPA(日本レース写真家協会)が毎年催しているもので、会員が国内外で撮影したモータースポーツの写真を一堂に展示したものです。
期間中は、インディカーシリーズに参戦中の佐藤琢磨選手と長年佐藤選手を撮影してきたカメラマンとのトークショーや、脇阪寿一監督のWEB番組生配信などイベントも多く、18日には会員自らが自分の作品を解説する「ギャラリーイベント」が行われました。じつはこのイベントは開催毎に行われる人気企画で、この日も大勢の来場者が訪れました。
イベントはJRPA副会長の赤松孝カメラマンからスタート。赤松氏は二輪のレースを中心に活動しているカメラマンで、今回の作品は鈴鹿8耐での1コマ。夜間走行のシーンです。解説では夜の鈴鹿の撮影ポイントや技術的な説明、使用機材についてなど多岐にわたりましたが、解説後は来場者からの質問もありファンにとってモータースポーツの被写体としての人気の高さも伺えました。また世界を転戦しF1を500戦以上撮り続けている金子博カメラマンの解説時には、最近の規制が厳しいサーキットでの撮影環境をぼやく一幕もあり、会員各々が語る解説からは、現場に立つカメラマンそれぞの想いがにじみ出た本音トークも多くなかなか面白いものです。
MotoGPでのバレンティーノ・ロッシ選手の厳しい表情を捉えた木立治カメラマンの1枚には「ロッシ選手ってカメラマンに対しても厳しいナーバスな選手って聞いてますが、じつはこの写真ってカメラを向けている木立さんに怒っているのでは?」などと会員からの質問も飛び出しました。「その辺はこの世界で長く撮影しているとなんとかなるんです。そもそも怒っていたらこの位置には立てないですよ」と余裕の木立氏。こんな現場の空気感が感じられるやりとりもギャラリートークの人気の一因かもしれません。
また、この写真展のプリントを一手に引き受けている田中秀宣カメラマンにはプリント技術についての質問が集中。プリンターなどの話では、エプソンVSキヤノン、はたまた別のメーカー? 染料VS顔料、運用方法、時にはプリンタ開発時のメーカー裏話など微妙な話も飛び出しました。来場者からの質問の多さに、自分の作品をきちんとプリントしている人の多さも伺えました。
長年、佐藤琢磨選手を撮り続けている松本浩明カメラマンや、WRCを撮り続けている小林直樹カメラマンにも多くの質問がありました。時速300キロオーバーというもっとも速いスピードで走る上にナイトレースもあるインディカーならでは撮影の苦労話や、年間17回もアメリカと日本を往復する大変さを軽妙に語る松本氏はその語り口も人気で、そのフライトマイルのたまりっぷりと上手に使うノウハウについての本を書いたほうが儲かりそうと会場の笑いを誘います。ちなみに来場者からの「日本から観戦しに行くならどのレース?」という質問には、しばらく悩みながらアイオワのナイトレースをチョイス。今日本では見られないオーバルコースでの高速バトルを堪能しにアメリカへ旅するのも悪くないなと思わされてしまうのは、作品の素晴らしさに加えその軽妙な語り口ゆえでしょうか……。
10年ぶりに日本でも開催されるWRCを長年撮り続けている小林氏もラリーファンに人気の高いカメラマンです。サーキットレースが多い会場の作品の中では少数派のラリーですが、それゆえに現場でカメラマンがどういう撮影方法をとっているのかは多くの来場者だけでなく、じつは他の会員も興味津々。数ある質問のなかでもっとも頭を悩ましたのが来場者からの「もしパスが発給されず、一般客の立場だったらどう撮りますか?」というもの。しばらく考えたあと「たぶんストレスがたまります」と返答。小林さん、まだコースが発表されていない段階とは言えソレ答えになっていません(笑)。
ちなみに小林氏、このギャラリートークの翌日には開幕戦のモンテカルロに出発するそうです。2020年のWRCは全13戦。最終戦が今年10年ぶりに日本で開催されるWRC、Rally Japanです。
なお、この写真展は2020年1月26日まで開催され、25日には2回目のギャラリートークが行われます(参加会員は10名の予定)。会場には会員の渾身の作品のほか、MotoGPのチャンピオンマシンHONDA RC213V、マルク・マルケス選手のチャンピオン獲得スペシャルヘルメットや、山本尚貴選手がF1日本グランプリで使用したヘルメットなどの展示もあります。興味のある方は是非足を運んでみてください。
<文&写真=高橋 学>
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